第086話 気迫だけを持って
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審判は続行させるか悩んでいる。
余りに酷い怪我なら本人の意思とは関係なく、止めなければならないからな。
しかし、俺はこの通り元気だ。
これ以上、膝を付けていると勘違いされるので立ち上がる。
「おっと!ここで一年生の佐倉が立ち上がった!かなりタフな様だぞ!ラフプレイがない様に気ををつけて再開してくれ!」
再会の合図が聞こえれば、ずっと棒立ちのままではいけない。
相手は先程の中断で少しだけ動揺が生まれている。
付け入る隙があるとするならそこしかないだろう。
転がった棒を持たずに、距離を詰める。
相手も反応はするが、生身で詰めて来ていることは予想外だった様だ。
殴り掛かるモーションを見せると、ガッツリと逃げる準備をする。
なるべく咄嗟に反撃してしまわぬ為にしているのかも知れないな。
「貴方はもう俺の術中だ。」
偶々、こうなっているだけなのに格好を付けて狙ってやっている様に見せる。
ハッタリも良いところだが、相手の考えを鈍らせるには十分効果がある。
「これで終わりだぁああー!!!」
迫力だけを出させて、警戒させる。
その警戒した隙に棒を拾い、足を目掛けて一突き。
警戒した状態だったので、力が入ってしまい避ける動作がままならない。
「そこまで!」
審判が終了の合図を告げる。
と言う事は、俺達は勝ったのか。
まさか、本当に上手くいくなんて思いもしなかった。
あの時、反則を取らせれば簡単に勝つ事が出来た。
しかし、自分達の手で掴み取った今の方が何倍も気分が良い。
「ナイスファイト。」
「そっちこそな。時間作ってくれたおかげだ。」
二人でグータッチをして、勝利を祝う。
次の試合までは時間が有りそうなので、自販機で飲み物を買うことに。
動くと喉が渇くからな。
こんな暑い中だと熱中症になる確率だって高い。
そこのケアは、自分自身で行うしかないからな。
自販機はそこそこに人がいた。
列に並んで大人しく順番を待つ事に。
しかし、何分待てども順番が回ってこない。
並んでいる生徒も前の方を覗き込んで何が起こっているのか確認しようとしている。
ようやく確認出来た先にいたのは、普通の生徒。
ただ、袋やカゴを持たされて、大量の飲み物を買わされている。
所謂、パシリというやつだ。
これだけの量を一人でパシらせるとか人の心はないのか。
「おーい、早くしろよ。」
「後ろ詰まってんだろがよ。」
遂にはガヤまで飛び始めた。
パシられてる生徒は何度も何度も謝り続けている。
彼だって自分から進んでこんなことをしている訳ではないだろうに。
仕方無い、動くか。
せっかく並んでいた列だったが、困ってる奴がいるのに放っておく訳にもいかない。
飲み物はいつだって飲むタイミングはあるけれど、彼を助けられるのはこの一瞬だけだ。
それに彼はこんなにも攻められているのを見ていて、何もしないでいる自分に腹が立つだろうからな。
「そんなに買ったら、持つの大変だろ。」
「・・・えっ?」
何が起こっているのかも分からない様だ。
いきなり手を差し伸べるのは、不器用だっただろうか。
もっと自然に助け船を出せる方法があったかも知れないが、俺には全く思い付かなかった。
「良いから、貸してくれ。運ぶから。」
「あ、えっ、はい。」
一番軽そうな袋を渡された。
ここに来ても自分の負担よりも俺の負担を考えるのかよ。
多分彼は部活内で先輩からいじめられている。
そうでなければ、一人でこの量を買う様に指示はされないはずだからな。
本人もそんなことは分かっているのだと思う。
なのに、それでも自分の事は二の次なのかよ。
強引にもう一つの袋も持つ。
合計で二十本くらいは入っていそうなのでかなりの重量がある。
やっぱり、一人で運ぶのは不可能だったな。
「あの、ありがとうございます。」
「礼なんかより、部活辞めたらどうだ?」
最も簡単な解決策を提示する。
学年の違う先輩と関わることなんて、部活を辞めればほとんどない。
しかし、それをしないのにはそれなりの理由があると思って良いだろう。
俺はその理由が聞いて見たかった。
たったそれだけの興味本位。
「辞められたら苦労しないですよ。」
「それなりの理由があるってことか?」
「僕の友達も同じ部活に入っていて、僕が辞めたら次の標的はその子になるって言われたんです。」
「事情を話して二人で辞めるとか。」
「それは無理です!」
そんな事は出来ないらしく、全力で声を上げて否定された。
「すみません、大きな声を出してしまって。でも、あの子は卓球部の中でもかなりの腕前なんです。それを僕が理由で潰す訳には。」
イジメている奴は、人間の心理を良く理解している。
相手がどういったタイプの人間なのか理解し、逃げ道を塞ぎじわじわと弱らせるのが得意な様だ。
実際に悩み苦しんでいる生徒が目の前にいるのがその証拠。
「困ったら誰かを頼れよ。誰でも良い、俺でも大人でも。」
「なんで、君は会ったばかりの僕に優しくするんですか?」
「それはなー・・・。」
言葉に詰まる。
理由なんて聞かれても何も思い付かないのだから。
俺の心がイジメを許さなかった。
なんて言えば聞こえは良いかも知れないが、実際は保身に近い感情だ。
あの場で見過ごせば、後で寝付きが悪いと思っただけ。
「理由はない。無くても人は助けられるだろ。」
「助けてくれたのは感謝しています。だけど、君のように誰もが強く生きていける訳じゃないですよ。」
「俺は自分の事強いなんて思ってないけど、弱いと思うなら弱い奴なりの戦い方があるだろ。戦う前から諦める奴は弱者にすらなれねーよ。」
強めの言葉を使ってしまった。
もしかしたら傷付けたかも知れない。
だけど、許せなかった。
他人はどうだ、自分はこうだって言い訳並べて今の状況が解決するのかよ。
結局、行動に起こせるのは自分次第なのだから。
「ここまでで結構です。本当にありがとうございました。」
空気は最悪になり、助けたはずが気まずい最後を迎えてしまった。
別にこれでも良いけどな。
見返りは求めていない。
勝手な自己満足を押し付けただけなのだから、こうなることだってあるだろう。
名前も知らない彼が向かう先には、明らかに態度の悪い三年生らしき人物が待っていた。
恐らくアイツらがイジメていると思ってまず間違いない。
たった少しの出会いだが、出来れば彼が踏み出す事を祈るばかりだ。
みんなの下に戻る時、ちょっと体温が高くなり始めたのは、暑い夏の日差しのせいなのか。
「アンタ、飲み物買いに行ったんじゃないの?」
「あっ、・・・忘れてた。」
まぁ良いか。
俺の喉の渇きなんて我慢出来る。
そんな事より困ってる奴を助けたという結果が残ってるじゃないか。
「そらそろ始まるか?準備運動だけしとくか。」
「今度は一瞬で決着を付けよう。」
「勿論、最初からそのつもりだ。」
ここでアナウンスが流れる。
トーナメント一回戦は終わり、二回戦が始まるようだな。
残っている部活は恐らく強者揃い。
一瞬たりとも気が抜けなくなった。
「続いては、恋愛支援部と鉄道研究部の対決となります。両者、前へ。」
意外にも次の相手は文化部。
一回戦を勝てるだけでも十分実力者だ。
油断は出来ない。
覚悟を決めた俺はアナウンスに従って、一歩前へ出た。
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