第007話 どうやら俺の友達は良い奴
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いつもより早い時間から俺は学校へ向かっていた。
正確には学校へ向かう為の電車に乗ろうとしている。
家から学校までの距離は電車を全く必要としない。
それでもわざわざ電車に乗るのは今仲と岡田の動向を探る為。
実際に昨日の話が本当だったのか確かめるのだ。
「遅いな古東の奴。」
「悪いな待たせちゃって。」
その言葉と共に登場した古東。
時間的にはギリギリセーフと言ったところか。
「なんか変装するとイメージがガラッと変わるな古東。」
「それはこっちのセリフだっての。」
糸井先輩の注告があったように、決して本人達にバレてしまうようなことがあってはならないのだ。
しかし、電車内という狭い空間で監視をしていれば見つかる可能性は高い。
だから、変装しようという結論に。
俺はストレートパーマを当てて眼鏡を掛けている。
チャームポイントを二つも潰しているのだから気付かれることもないはず。
問題は古東だ。
金髪のショートではなく、茶髪のロングのウィッグを被っている。
それにいつものスカジャンも封印して、校則に全く違反しない着こなし。
これで容姿も整っているのだから、ほとんどの男性の視線を集めてしまう。
「そんなことより今仲と岡田は見つかったか?」
「あぁ、この隣の列の先頭で電車を待っている。今のところは会話をする様子が見られないけど、岡田から嫌悪感も感じられない。」
「公共の場だから下手に大声出せないとかじゃねーの。」
「とりあえず話は電車に乗り込んでからか。」
予定時刻から一切ズレることなく電車が到着する。
乗車する人は少なくないが、頑張れば座る席も確保できるレベルだ。
まずは、相談者の二人がどの位置を取るのか。
そこから話は始まってくる。
まずは今仲を見つけた。
並んでいた列から入って直ぐの席に座っている。
重要なのは岡田がどこにいるか。
昨日、部長からメールで送られてきた顔写真を思い出しながら探す。
「多分いたぞ。今仲の隣だ。」
俺にしか聞こえない声で伝えてくれる。
でも、距離が近すぎるだろ。
他の男と違って女性の免疫力が高い俺じゃなかったら危なかったな。
「ちょっと、見るのアタシじゃないだろ。」
「二人でキョロキョロすると怪しいからあえてそうしているんだ。他意はない、いや本当に。」
疑いの目で俺を見てくる古東。
この空気が耐えられなくなった俺は、逃げるようにして目を逸らした。
その先で二人の位置を完全に把握した。
席の端で今仲は座り、岡田は立って話をしている。
どうやら、毎日話をしているのは嘘ではない様子。
ただ、その表情はどちらも楽しそうではなかった。
朝の気怠けな感情があるからだと言われたら納得するしかないが、あの話を聞いた後だと余計な推測が入る。
その後も特に変わった様子は見られない。
互いに目を合わせることなく、ローテンションのまま会話が進んでいた。
今仲が一方的に話しをしている訳でもなく、途中岡田から話題を振っているようだ。
結局学校から最寄りの駅に到着して、二人は降りた。
降りた後は、駅で待っていた昨日の友達二人と合流して岡田が先に姿を消す。
俺達の目的はあくまでも岡田真衣の調査なので、残った今仲を追いかけることはしない。
「あれれ!俺のセンサーがあれは知り合いだと言っているぞ!」
前から変な男に絡まれそうになる。
面倒なことになりそうなのでそのままスルーしよう。
「ちょっと待って、陽太!無視することはないだろ〜。むしろ、イメチェンしたお前にも気付ける俺を褒めて欲しいくらいだね。」
「ナンダ、マコトジャナイカー。」
「おい、絶対分かってただろ。てかさ、そこの隣の美人は誰なんだよ。もしかして昨日の今日で彼女が出来たとか言わないよな?」
古東に気を遣ってコソコソと耳打ちをしてくる。
まぁ、これが薔薇姫だとは想像も出来ないよな。
「全部聞こえてるっての。別に佐倉と付き合っちゃいないから。」
もう変装を続ける必要もないのでウィッグを取った。
やっぱり、この髪型と髪色があって古東という感じがするな。
「あわあわわわー!ば、ば、薔薇姫だぁ!」
あの有名な薔薇姫だと分かった瞬間にこの態度の変わりよう。
震えたまま俺にしがみつき離さない。
本人を前にして、こんな態度を取るなんて失礼な奴だから頭目掛けて軽くチョップしておく。
せめて、何かされてから怯えるべきだろ。
「薔薇姫って直接言われるの嫌がるから、お前今の内に謝罪の準備を。」
「おいマジかよ!陽太も一緒に謝ってくれ!仲良いなら許してくれるかも。」
「ちなみに古東の好きなのは、駅前にあるパン屋が売っているプリンだそうだ。」
「俺、今から行ってくる!グヘッ!」
俺の言葉を鵜呑みにして駅前のパン屋に行こうとしているところを、襟を掴まれて阻止される。
片手で男子高校生の全力疾走を抑えられるとは凄まじい腕力だ。
勢いだけ有り余って変な声が真から出る。
お前のせいで昨日は散々な目にあったから自業自得だ。
「アンタも変なこと吹き込んじゃないっての。余計怖がれてるじゃんかよ。」
俺が真にしたように軽くチョップでお見舞いされる。
それが思っている以上に痛い。
軽くやったよな。えっ、本当にキレてるのか?
「あははは!ざまぁーみろ、人のこと騙そうとするからこうなるんだ!」
「アンタも調子に乗らない!」
「はい、姉御!って、意外に面白い人だなバラじゃなくて古東さん。俺、柊真。ひらりんって呼んでくれ!」
「一度も呼ばれたことないだろ、そんな呼び方で。」
変なこと言うから古東が真顔になっただろ。
「柊は良いのか?アタシの近くにいると良くない意味で目立つよ。」
視線だけで俺達に合図を送る。
駅のホームは俺達以外もいて騒がしいはずなのに、学生から嫌なほど視線を集める。
どれも友好的なものではなく、野蛮なものを見る目。
陰で何を言われているのか分かったものじゃない。
「別に俺は他人の評価は気にならないからなぁー。だって、陽太と友達やってんだぜ?慣れっこ慣れっこ。」
「おい、そこで俺を出すと俺のせいで評価が落ちるみたいだろ。」
「えっ、違うの?」
「否定はしないな。」
「冗談なんだから否定してくれよ。俺まで悲しくなる。」
「良い友達がいるんだな佐倉は。」
遠い存在を見ているような目でそう呟いた。
本当かどうか分からないが噂を流されているせいで、友達作りはうまくいかなかったのだろう。
俺も真がいなければ、高校生活はボッチを極めることになっていたから気持ちは痛いほど分かる。
「すげー他人事じゃん古東さん。」
「そりゃアタシには関係ない話だから。」
「俺と出会った時点で友達だよ?フォーエバーフレンド。ドゥユーノーアンダスタン?
なんでカタコトな英語を話出した。
場を和ませるためなら大失敗だぞ。
「良い奴だな柊。」
「だろだろ!それなのに陽太ってば酷いんだぜ?」
歩きながら、一時間後には思い出せないぐらいくだらない話を沢山して、沢山笑った。
ただの高校生の日常が、俺にとっては堪らなく贅沢に思える。
今日の学校までの道のりが短いのは、決して気のせいではないだろう。
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