第064話 幼馴染との文化祭は定番
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「本当に人気者になったね陽太。」
「藍連市一番の人気者が何言ってんだよ。俺なんか憎まれ役の方が多いっての。」
何なくで返した言葉は、神崎の表情を曇らせた。
本人はどうやら気にしていたようだ。
全く気にする必要なんてないのにな。
結局は神崎の意思と裏腹に俺のことを恨んだり、憎んだりする奴は存在するのだから。
「仕方ないことだけどな。事実はどうであれ、沢山美少女侍らせてれば嫌でも目立つからな。」
「うわぁー、柄にもなく陽太が美少女って褒めてくれる。」
「俺としては幼馴染がこんなに人気だと鼻高々だな。」
「えっ!あ、えぇー!どうしちゃったの今日。普段はそんなこと言わないのに。」
「藍連祭だからテンション上がってるのかもな。ほら、行こうぜ。有志の屋台とかも出てるみたいだから。」
「でも、せっかくなら先輩達の方に行くよね。」
確か三年が飲食で、二年がゲーム系などを担当している。
今はまだ藍連祭が始まったばかりでお腹が空いてるはずもなく。
自然と選択肢は二年生のコーナーからになった。
やはり、どこの学年も競い合いは激しいようで、コスプレした学生達が客引きを盛んに行なっている。
時間的には全部回っても良いのかも知れないが、また凛と回る約束をしているので、後でやることが無くなることは避けたい。
ここは神崎がどれをやりたいと言い出すのか待つのが得策だろう。
お化け屋敷、縁日系のゲーム、謎解き脱出ゲームに、ジェットコースターなんてのもある。
引きがあるのはジェットコースターだけど、神崎は何を選ぶのか。
俺の予想だと、縁日の奴を選びそうだな。
昔行った夏祭りで、すごくはしゃいでいた記憶が微かにある。
「どれにしよう。全部面白そうだよね。」
「高校生の文化祭を舐めてた。来年、このクオリティを出せるかって聞かれたら無理だよな。」
「だって、結構作り込まれてそうだよどこも。」
どのクラスも受付の前にある看板から気合いが表れている。
「じゃあ、謎解き脱出ゲームにしない?なんと部室棟丸々使ってやるらしいから結構難易度もありそうだし。」
「へぇー、面白そうだな。部室棟ってかなりの広さあるぞ。」
「よし!決定!早速部室棟向かおう!」
はしゃいでる神崎には申し訳ないが、もう一つ俺は脱出ゲームと同時に進めないといけない事がある。
部室棟は貸切状態とはいえ、人が行き来する場だ。
そこに落とし物をしている可能性だってゼロじゃない。
寧ろ、見落としがちな場所として選んでいても自然だ。
「おいおい、マジかよ。」
部室棟に着いたのは良いけど人が多いな。
パンパンって程ではないけれど、明らかに中の人は動き辛そうだ。
「あちゃー。やっぱり藍連祭始まったばかりだから、人が多いね。どうする?他のとこにしようか。」
遠慮がちにこの場から去ろうとする。
確かに人は多いかも知れないけど、それだけの理由で諦める必要もない。
「いくぞ。多分、先輩達がある程度は誘導してくれるだろうし。」
「えっでも。」
何を遠慮しているのか分からないけど、手を引っ張って受付へ。
受付の生徒が女子で良かった。
少なくとも睨み殺されるような事にはならない。
入学当初は俺ですら想像してなかったな。
文化祭を神崎と回る事になるなんて。
「これが最初の暗号になってますので、無くさないようにお気をつけて。」
色々な説明を軽く聞いた後に、謎解き脱出ゲームが始まった。
「先に聞いておきたいんだけど、神崎は得意か?こういう系の。」
「んんー、やった事ないけど、テレビの謎解きとか得意だよ。」
「頭は柔らかいということにしとくか。」
「なんなら、めっちゃ頼りにしてくれて良いんだよ。」
その言葉を信じるかどうかは一問目の働き次第。
頭が良いイメージは確かにあるけど、クイズが得意かどうかまで知らないからな。
さて、渡された紙を眺めてみるとびっしりと書かれた文字と穴抜けになった空欄が数個。
つまりは、ここから当てはまる文字が何かを連想していけば良いってことか。
「ヒントは、三階だって。」
言われた通りに三階まで上がると壁中に貼られた文字の紙。
まだ一問目だって言うのにサッパリ分かりそうにないな。
「とりあえず、問題用紙と照らし合わせてみようよ。」
「それもそうだな。もしかしたら、文章が浮かび上がってくるなんてことも。」
「って思ったけど、全く関係ない文字ばっかりだ。」
「他の人達も苦戦してるみたいだ。この問題作った人、相当クイズ好きかも知れないな。」
三階がヒントになっている以上、問題を解くヒントはここにあるはず。
この場から立ち去っていく人達の声に耳を傾けてみる事に。
「まさか、あんな簡単とは思ってなかった。」
「解けてみれば意外だったね。」
その言葉を聞いて、もう一度問題用紙を見てみる。
「分かった!こう言う事じゃないかなー。」
俺が答えを導き出す前に、神崎が答えを見つけたらしい。
同じ物を持っているのにわざわざ俺の近くに寄って解答方法を教える。
これだけ近ければ集中出来なくなりそうだが、日々鍛え上げて来た精神力を集中モードへ。
「この壁とかに貼られたのって、この紙に無い文字でしょ?でも、関係ないってことはないと思うから、ここの空欄に使うんじゃないかな。」
「なんか、思ってたよりは頭脳というよりパワーで解決しようとしてる気が。」
多分、適当に並べてるように見えるだけで、空欄の近くには紙が貼られた場所の単語が書かれている。
その場所を探していくと空白に必要な文字が見つかって、入れ替えると次のヒントが出るって感じか。
とりあえず、神崎がゴリ押しで解決してしまいそうなのでそれに従ってついていこう。
「次は、二階の料理室らしいな。」
謎解きクイズはその後も順調に進んでいく。
俺もそれなりに活躍したが、一番は神崎のひらめき力が問題を解く手掛かりに繋がっていた。
落とし物らしき物もここには無かったし、景品も貰えたので満足だ。
「この景品すごいねー。」
「小さいぬいぐるみなんて、作るの難しいだろうな。それを来る客全部に渡せるよう用意するのは相当大変だろうな。」
「来年は同じクラスだったら良いね。そしたら、藍連祭の準備とかも一緒にしてさ。」
一緒にか。
俺はその言葉に上手く返事が出来なかった。
最近は前と違って喋ることも増えて来たけど、それでも隣で学校生活を送っている未来は想像出来ない。
どうしても心の中で神崎に対して、ブレーキを掛けてしまっている。
「そろそろ、三年の飲食も行ってみようよ!頭使って甘い物食べたくなって来たからさ。」
「そうだな。パフェとかやってるとかあるかな。」
「絶対あるよ探せば。」
俺としては、糸井先輩と七瀬先輩のクラスには行ってみたいけど、二人は接客とかしてなさそうだよな。
挨拶だけでもと思うんだけど。
三年の飲食は事前にどんな物があるか、パンフレットを見ながら確認しておく。
移動中もずっとどれにしようか迷っている神崎は、最終的に三年C組のふれあい動物喫茶にする事に。
動物とか好きだし、話題にも繋がりやすそうなので、個人的にも助かる。
どんな動物が出迎えてくれるのか今から楽しみだ。
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