第061話 練習最終日
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ついに明日は藍連祭当日。
準備に抜かりがないように厳しいチェックが各組で行われている。
B組も例外ではなく、最終調整で教室と体育館を行ったり来たり。
舞台を使えるのは一時間と決まっているので、その中で全ての確認を終わらせたい。
「裏方の人、ちょっと急いでね。ここの準備に時間掛けると練習時間無くなるから。」
委員長が厳しくも正論で裏方の人を走らせる。
注意するまでは喋りながら歩いて来ていたので、それくらいは言ってやるべきだ。
明日が本番という緊張感が足りていない。
もしかすると、自分は舞台に立たないから失敗しても恥をかかないと思っているのかもな。
「さぁ、最終調整を始める。照明や音響、ナレーションまで入ってくるからいつもと感覚が違うかも知れないけど、この一時間で慣れてくれ。」
他のクラスは、今までの練習で十分に慣れているはずだけどな。
合わせなんて、舞台が無くてもいつでもどこでもできるだがら。
その点の進行度は、委員長・御城が指示を出しているのでとやかく言えるものでもない。
自分でやれって言われるのが目に見えてるからな。
そうそう。
なんで、またこの二人でクラスを仕切っているのかという問題なのだが、あの噂が原因である。
B組の問題児の一人である浅間の告発。
他の人にとっては嘘か本当かなんて分からないが、身に覚えのある本人はご立腹の様だった。
しかし、これ以上暴れればまた余計な噂が増えるばかりということで今日まで大人しく過ごしている。
そのまま何もしないでくれたらありがたいのだけど。
「緊張してる?陽太くん。」
俺の衣装の袖をツンツンと摘んで話しかけてくる凛。
用意されているドレスを可憐に着こなしているが、本人が緊張で震えているので勿体無い。
「緊張してるのは凛の方だろ?」
「バレた?この衣装来てからプレッシャーがとても大きくのしかかって来て。」
「練習でそんなに緊張してたら本番どうなんだよ。」
「消えてなくなるかも。」
「ヒロイン不在は困るだろ。俺から言えるのは失敗しても気にするなってことだ。」
失敗なんて誰にでもあることとか、ありきたりのことは言わない。
失敗するにはそれなりの理由があって、大半の落ち度は自分にある。
それが改善の余地がないことかも知れないし、取り返しのつかないことかも知れない。
なら、その失敗をいつまでもクヨクヨと抱え込んでしまって不毛。
どれだけ次に活かせるのかが勝負だ。
なんて、柄にもないことを言っているがこれは好きな漫画の受け売り。
本心はここまで熱く語ってないが、大半は同じことを考えていると思ってもらっても差し支えないと思う。
「そんなこと言っても緊張するよ。性格って簡単に治らないっていうでしょ?」
「最悪、失敗したら俺のせいにでもしてくれ。そしたら、少しは気分楽になるだろ。」
「いやいや、もっと後味悪くなるよー。」
「俺としては全く問題ないんだけどな。」
「世の中には陽太くんの味方もいるんだから自分のこと大切にね。」
雑談もどうやらここでおしまいの様だ。
カウントダウンが始まり、委員長の合図で劇が始まった。
まずはナレーションの語りから。
その後少ししてから凛の出番だ。
「頑張ろうね藍連祭。」
ガッツポーズを作って、表へと向かって行ったのだ。
舞台に上がった凛はまるで別人だった。
先程まで弱気な姿を見せていたのですっかり騙されたが、動作の一つ一つがベルという姫を完璧に表現している。
これは俺の方が頑張らないといけないみたいだ。
演技上手い人の中に一人でも下手な奴いると見ている人は冷めてしまう傾向が強い。
今から間に合うか疑問だが、間に合わせるしかない。
これまでも下手からまぁまぁまでにして来たんだから出来る。
最後まで通しで練習するのに大体二十分くらい。
つまり、後二・三回は練習することが出来る。
普段は自ら練習など望まない俺もこの日ばかりは急ぐ。
その後も、舞台が借りれる時間のギリギリまで練習を続けた俺達。
動き過ぎて足がパンパンになってるのが分かる。
「休憩行こうぜ陽太。」
時計を見ると時間は昼休み。
丁度キリも良いので、ここで長めの休息時間に入る様だ。
「ちょっと待ってくれ。凛も誘ってみる。」
「多分、来ないと思うぜ。」
「いつもの四人で女子会だとよ。くぅー、羨ましいね。」
「まさか、一人で食事するのが嫌だから、仕方なく俺の所に来たとかじゃないよな。」
「まさか。・・・まさか。」
否定してくれるのは嬉しい。
しかし、一度も俺と目を合わせないのはどういうことだろうか。
今時、小学生でももう少しマシな嘘の隠し方するぞ。
「しゃーないか。誰かと予定あったとかじゃないし。」
「話が早い男はモテるよ陽太。」
「そんな効果が表れたことないんだけどな。」
「本人には分からないもんだって。」
意味ないだろそれ。
本人がモテてることを自覚して始めて意味のある物になる。
もしも、知らない所で俺のことを好きと言ってくれる人間がいたとしても本人に伝わらなければ一方通行だ。
なんて少し古い考えを心の中だけで述べてみた。
「飯なんかあんのか?」
「もちろん!彼女特製の愛妻弁当がねー!」
「やっぱりお前性格悪いな。彼女いることが人生全てじゃないんだ。全てじゃ。全てじゃ。」
「おいおい、珍しく心が揺れ動いてなー。彼女なんて興味ないです風の立ち振る舞いだったのに。」
「あの部活してれば、嫌でも興味湧いてくるっての。部活名がアレだけど、活動内容は口で簡単に言い表せないほど奥が深いぞ。」
俺の弁当がないので購買部に向かいながら、部活のことを話した。
意外にも続けられていることに驚きながら、自分が勧めたのが良かったんだと念を押して来る。
半分は適当に聞き流しているが、真の言い分も正しい。
この感謝は何かしらの形にして返すことにしているので、今は褒めないでおこう。
購買部につくとある程度の食べ物を買い、近くの座れそうな場所を探す。
「藍連祭上手くいくと思うか?」
「また出た、ネガティブ思考。良いか陽太、こういうのは何とかなる精神でやれば良いんだぞ。」
「そんなお気楽な話じゃねーんだよ。」
「抱え込み過ぎんなよ。」
「安心しろ。真のおかげでかなり良い手を打ってある。」
「俺のおかげ?何かしたっけ?やっぱり俺天才だったのか?」
ちょっとだけ褒めたらこの調子の乗りようだ。
だから、普段からはあんまり褒めないようにしている。
友達としてそれ酷くないかって?
友達以外にそんなことやってる奴の方が酷いだろ。
それは置いおくとして、藍連祭は明日だ。
どう足掻いても始まることに変わりはない。
一個人の声で止めろというのも不可能。
鬼龍院の発言が爆弾を示唆する物であるなら、警察を介入させるのが普通かと思うだろうけど、あんな曖昧な言葉で警察は動かない。
動いたとしても、騒動が大きくなるだけ。
そうなれば、相手の思う壺になることは間違いない。
「明日、サボりたいなぁー。」
「とか言って、ちゃんとやることやるのがお前なんだから。」
「そんな律儀な性格になった覚えねぇーよ。」
でも、真の言う通り、明日はやることをやるしかない。
全てを成功で終わらせる為にも。
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