第006話 幼馴染との下校は定番すぎる
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部屋に入ってまず最初に目に入ったのはソファーに腰を掛けて、俺達の帰りを待ってた部長と副部長の姿。
「どうしたんだい?そんな深刻そうな顔をして。」
「どうしたもこうしたもないですよ。アタシ達が調べている最中に岡田真衣と会ってたんですよね。」
ドンッとテーブルを叩く。
加減はしている方かもしれないが、それなりの大きさの音が部室内に響いた。
古東だけが二人を非難すると、彼女だけ悪者のように写ってしまうかもしれないので俺も一言付け加えておこう。
「本人から直接情報を聞ける機会があったならわざわざ俺達が情報を集める必要も無かったんじゃないですか?」
「僕達も匿名で予約をされていたから知ったのは彼女がここに来てからさ。」
「ちなみに証拠はこれよ。」
見せられたのはネットのホームページ。
簡易的な作りではあるが、校内の学生向けに作られた物と考えると十分だな。
本日の予約者一覧の中に、今仲と匿名女子生徒の二名が記載されている。
「へぇ〜、そんな便利なサイトがあったんだ。」
「古東は恋愛支援部の部員なのに知らなかったのかよ。」
「まぁー、相談者の中には予約する奴もいるぐらいの何となくの知識だったから。」
まだ入って一ヶ月も満たない部員であれば、相談者の管理を任せれないのも納得はできる。
そのことを考慮しないで二人に勘違いの憤りを感じたこと心の中で謝罪しておこう。
「俺達が聞き込みしていた岡田の友人から、岡田はストーカー被害に悩まされていたと聞きましたがそれは本当ですか。」
「そこだよ!そこ!もしそうだとするとあの今仲って男の可能性が高いんじゃないですか?」
誰にだって想像が出来る推理だ。
今仲がいつ頃岡田と知り合ったのかは分からないが、彼女と毎日会話をしていると言っていた。
ストーカー被害に会っている間に楽しく異性と会話する元気があるのだろうか。
勿論それだけで疑っている訳のではなく、そもそもあの相談自体が不自然だと今になって思う。
電車内で毎日会う人間のことを何も知らないのはおかしい。
会話は些細なことをきっかけに進展していくので会話の至る所に情報は隠されているはずだ。
それに学校でだってすれ違うことはあるだろうが、会話が電車内に限定されているのはあり得ない。
「話を聞いてた限りじゃ僕も怪しいと思ちゃったよ!あははは!」
笑い事ではないだろ、笑い事では。
部長も疑っているなら学校側に伝えるなり、なんなりして正式に問題にする必要がある。
「華ちゃん、佐倉くん。表情が怖いわよ。」
「・・・でも。」
「誰の意見が正しくて、誰の意見が間違っているか。それは憶測ではなく自分の目で確かめるべきじゃないかしら?」
憶測だけが先行して、変に正義感が湧いてしまった。
七瀬さんの言う通り、まだ今仲が犯人と決まった訳じゃない。
冷静な人間が一人いると頼りになるな。
「それに僕は、ここへ相談に来る全員を信じたいんだよ。彼ら彼女らは、恋や愛に悩んで悩んで勇気を振り絞ってここへ来る。それが嘘だとは思いたくないよ。」
「なんかカッコイイ部活に見えてきました俺。」
「それならここにサインを。」
さっと出される入部届。
ちゃっかりしているな。
「まぁ、興味が湧いたきたから良いか。」
俺はこの場で名前を記入した。
勢いが大事になる場面だってあるだろう。
「おぉ!これで正式に部員になったんだな!しかも、それが佐倉なんて嬉しいよ!」
「改めてよろしくお願いするわ。」
「男が増えると僕も息がしやすいよ。」
高校生活が始まって、歓迎とは無縁の日々を過ごしていた。
ただ部活に入部しただけというちっぽけな日常の一場面なのに感動するな。
涙こそ出ないが、胸の辺りは確かに熱を帯びている。
「よろしくお願いします。出来ることだけをやるがモットーです。」
「なんか頼りになるのか、ならないのか分からないな。」
失礼だな。俺は意外と器用になんでもこなせるタイプだ。
「部員も増えたことだし、明日以降の動きを確認して今日は終わりにしましょう?」
「そうだね、楓くん。まだ解決していないのは、今日新たに相談があった二件だけ。」
「一年B組今仲秀治くんの岡田真衣さんについて知りたいという相談と、その本人一年D組岡田真衣さんのストーカー被害に遭っているという相談ね。」
息の合った連携で今日のことを振り返る。
流石は上級生、年齢は大きく変わらないはずなのに何倍も大人に見えるな。
「今仲くんの相談は一年生コンビに任せてもいいかな?僕達は岡田くんの相談を捜査しようと思うから。」
それが妥当な割り当てだな。
いきなり岡田の相談を任せられるのは気が重い。
「解散の前にもう一つ。それぞれの相談は本人達に決して伝わることのないようにね。事が大きくなる可能性だってあるから。」
「分かりました。」
七瀬先輩の注意を受けて解散となった。
鞄を持って廊下に出ると外はすっかり日が落ち始めている。
いつもは見ることのない茜色の空に感心していると古東も部室を出てきた。
今日の事を話したり、明日からどうするか作戦会議をしたりして玄関まで移動。
文化系の部活も点々と帰り始めていて、当たり前のように好奇の目を寄せられているが段々気にならなくなってきたな。
玄関に到着すると知っている顔が居た。
しかし、今日の出来事を思い出してしまい妙に会うのが気まずい。
このまま出会う事なく帰ることにしよう。
「えっ!陽太?」
声の正体は神崎だ。
学園の人気者に声を掛けられた俺は、再度視線を集める。
彼女が音楽部に入部しているのは知っていたが、まさか帰宅時間が被るとは。
俺としたことが失念したいた。
「おい、あの神崎と幼馴染なんだろ?返事してやらなくて良いのか?」
ポンと背中を押されて一歩前へ。
「明日からもよろしくな。」
それだけ言い残して颯爽と立ち去る古東。
空気が読めているのか、いないのか。
それにしても、これ以上は古東が言ったように無視出来ないので返事を返した。
「神崎も今帰りか?」
「そうだけど、陽太はどうしてこんな時間に。それに今の人って。」
「説明すると長くなるんで省くけど、部活に入ったんだよ俺。」
「えぇ!意外だね。あんまり部活には興味ないのかと思ってた。」
「俺もそう思ってたけど成り行きでな。古東とは部活仲間みたいなもんだ。」
家は隣同士にあるので同じ時間に帰れば、必然的に同じ道を帰ることになる。
一緒に下校するのは何年振りだろうか。
それよりもこうやってまともに話すのだって久しぶりかもしれない。
「なんだ〜そうだったんだね。とにかく、陽太が楽しそうにしているのを見て安心しちゃった。」
「意外とのらりくらりとやってるよ俺は。なんたってジャングルに放置しても生きていけるって親のお墨付きがあるからな。」
「ふふふ!それならどこでも生きていけちゃうね。・・・でも、私のせいで迷惑掛けてるなら言って欲しいよ。なんとか・・・するからさ。」
彼女は俺の身に何が起こっているか知らないほど鈍感じゃない。
だから、時折心配そうな表情を見せて顔の曇らせる。
「気にすんなよ、慣れればどうってことないんだから。それにこうやって神崎が笑ってる方が良いからな。」
無理矢理、彼女の頬を引っ張って口角を上げる。
「ちょっひょ、ちょっひょ。やめてよーもー!」
頬を膨らませてオーバーに怒った演技を見せる。
その態度に謝罪する俺。
他の奴らに見られたら確実に処刑だな。
「でもね、本当に良かった!こうやってまた陽太と笑顔で話せたから!」
それでも俺は、まだ彼女のことをあの日々のように下の名前で呼んではあげられない。
いつかまた、呼べるようになる時が来るのだろうか。
いや、心のどこかで確信している。何故なら今はあの部活があるから。
「じゃあ、また学校でな。」
「うん!また一緒に下校出来る日があると良いね!」
扉が勝手に閉まるまで互いに手を振って見送った。
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