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第004話 流れる空気が見えなくて

誤字脱字や文章の下手さについてはご了承下さい。投稿予定時間になるべく投稿できるようにします。

よければ、評価とブクマ等していただければ幸いです。

それは自信ありげな表情だった。

長い間悩み続けた呪いは今日で解けるのか。

疑心と期待だけが頭の中を駆け巡る。


「で、具体的にはどういったことをすれば?」


少し長い焦らしに我慢出来ず、俺から問いかけてしまった。


「君はどうすれば解決すると思うかい?」


質問を質問で返すタイプの人だったか。

露骨に嫌な顔をしては失礼だろうから、真剣に考えてみる。

いや、元からハッキリとした解答を俺は持っていた。


「神崎との関わりを一切断つ。それが一番手っ取り早いと思います。神崎を嫌っている訳ではないですが、そこまでするしか方法は考えられません。」


「なるほど、それも興味深い選択だ。」


「完全な逃げね。解決とは言い難いけど、選択肢としては無難な方よ。」


七瀬さんが鋭い言葉を放つ。

だけど、俺は全く傷付かない。

俺自身が逃げだということを自覚しているからだ。


「他の方法はないと思います。これが俺の見つけた最善策だから。」


「最善策?それって本気で思っているのかい?」


「えぇ、勿論じゃないですか。」


「それだと疑問が浮かんでくるね。」


「疑問ですか?」


「どうしてそれを今までやって来なかったってことよ。最善策ならとっくの昔に実行していてもおかしくないでしょ?」


出す言葉が見当たらない。

自分の心を見透かされているようで、恐怖と羞恥心の入り混じる不思議な感覚だ。

しかし、逃げ出したいという感情よりこの後の言葉を聞きたいという好奇心が勝る。


「なら、他の選択肢はあるんですか?」


「君も分かっているんじゃないかな。逃げ出すということは、反対に立ち向かうことも出来る。彼女と向き合ってみたら何か変わるかもしれない。」


「なんとかなるんでしょうか、それだけで。」


「それはやってみないと分からないね。」


どうやら、結論の出ない話をされていたようだ。

あれほど得意げになっていたのに、結果がこれでは残念である。


「まぁ、どちらにせよ経験と知識が足りないわ。」


「それって誰かと付き合うことでしか磨かれなくないですか。」


「あら、そうでもないんじゃない。ピッタリの場所があるでしょ。」


その言葉と共に軽く机を二回突く。

ようやく俺はゴールのない会話の全貌が見えてきた。

どうやら、これは俺を勧誘するのが目的らしい。

しかし、俺は全く部活をするつもりがないので話はこれで終わりだ。


席を立とうとすると古東が戻ってきた。

そこには、本当に買って来た飲み物と俺とは別の相談者の姿があった。


「道迷ってるみたいだから連れて来ました。」


古東に怯えている姿から見て、連れて来たというより誘拐して来たという方が正しいと思ってしまう。


「丁度良い所に相談者が来たみたいだ。佐倉くん、この相談者の悩みを解決する間だけでも仮入部ということで見学してくれないかい?」


「まぁ、それくらいなら良いですけど。」


どんな活動をしているのか気にならないと言えば嘘になる。

見学として気楽に参加してみるくらいなら悪くないのかも知れない。

願わくば、何か解決の糸口に繋がってほしい。


「えっ、佐倉がこの部に入部するの?」


「まだ決まった訳じゃないけどな。」


ここで入部を確定させるつもりはないので、曖昧は表現にしておく。


「三人共。相談者の方を放置するのは良くないわ。」


困惑していた相談者をスムーズに案内する副部長の七瀬さん。

彼女は周りがよく見ていて気が配れるタイプらしい。

相談する側に立って考えるとそういう人間が一人いるだけで安心できる。


「僕は一年B組の今仲秀治(いまなかしゅうじ)って言います。」


一年B組か。・・・一年B組!それって俺と同じクラスの生徒じゃないか!

まだ一ヶ月しか経っていないため顔と名前を言われてもあまりピンとこない。

これが交友が深い者や様々な意味で目立つ者達なら話が変わってくるんだけどな。


「佐倉と同じクラスだな。クラスメイトなのに覚えていないとか酷い奴だぞ。」


「古東が言わなければ気付かれることもないし、気付いていたとしても空気を読んでスルーしてくれただろ。」


「アタシが悪いってこと?」


腕をグルグルと回して喧嘩でもするかとアピールしてくる。

古東がそれをすると冗談に見えないのでやめていただきたい。


「良いです。僕が空気のような存在なのは、生まれ付きなので。小学校でも中学校でも、良い意味でも悪い意味でも目立って来なかったですから。」


気まずい沈黙が流れそうになった時、糸井さんが話の道筋を戻す。

その様子を見て、俺は恋愛よりもトーク術を学んだ方が良いのでは無いだろうかとさえ思う。


今仲は、思い出したように本題を語り始めた。

話をする目は暗い思い出を語っていた先程とは違い、輝きを見せている。

ここまで彼を明るくさせる話題に俺はとてつもない興味を持った。


「そんな僕を見つけ出してくれた人がいるんです。彼女の名前は、岡田真衣(おかだまい)さんと言って、とても笑顔が素敵な人だったんです。」


「素敵な方と巡り合ったんですね。出会いはどこで?」


「たまたま乗る電車が同じだったんです。最初は彼女から声を掛けて来てくれたんです。その制服ってことは同じ学校だねって。クラスは同じではないので学校で話すことはありませんが、朝の電車で毎日話をしているんです。」


コンタクトを取って来たのは、その岡田真衣という女子生徒からか。

同じ学校の生徒を見つけたら親近感が湧く気持ちは分からなくもないが、話掛けるとは相当明るい性格だ。

彼に失礼だとは思うが今まで女子生徒と話す経験も少ないはず、あったとしても大半が事務的な話だと思う。

そんな中で積極的に話をしてくれる女子と出会えば意識するのも無理はない。


てか、男子生徒の憧れのシチュエーションにランキング入りするだろ。


「つまり、その岡田真衣さんと付き合うのを後押しして欲しいってことね。」


「いや、それはちょっと違うと言うか。まだ早いというか。」


なんとも歯切れの悪い返答だ。

流れ的には七瀬さんの考えになるのが必然だろ。


「えっと、まずは彼女のことを何も知らないので趣味とか色々調べて欲しいんです!」


やっと自分の相談を言えたからかスッキリとした表情だ。

意外にも簡単そうな依頼だったな。

これなら岡田真衣という女子生徒のクラスメイトや友人などから聞き込みをすれば良い。


進展があるかは別として、本人はそれで満足できるようだしな。


「早速僕達で動き出そうと言いたいところなんだけど・・・。」


「次の予約も入っているのよ。だから、私と糸井くんは行けないの。」


「えっ!それってつまりは。」


心配そうな眼差しで俺と古東を見る今仲。

俺だっていきなり見学で聞き込みさせられるとは思ってもいなかった。

それに俺と古東は知名度はあるが、お世辞にも良い意味ではない。

多少なりとも調査に影響が出るだろうな。


「安心してよ。僕らも後から調査はするから。今仲くんは、三日後に結果を聞きに来て欲しい。」


「分かりました。その言葉を信じて今日のところは帰ります。」


不安そうな表情が残っていたが、先輩達も調査すると言うなら大人しく待つしか無い。

俺はトボトボと帰る彼の背中を目で追いかけた。


「では、一年生コンビだけで動く初の相談だ。張り切って捜査してよ〜!」


「えっ、さっき糸井さんも最終的には動くって。」


「それはそうだけどなるべく二人で頑張ってよ。ほら、行った行った。」


強引に背中を押されて部室の外へ閉め出された。

どうしようかと二人で見つめ合う時間が発生する。


「あぁ〜もう!アタシは考えるの得意じゃ無いからとにかく足で稼ぐか。」


「一応、手伝うことになってるから記録とかは任せろ。」


上手く出来るか分からないが何事も挑戦だ。

ご覧いただきありがとうございました!

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毎日22時から23時半投稿予定!

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