第031話 あの日君へ誓ったもの
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ついに来てしまった。
佐藤先生の相談を進めていて、日付の感覚をすっかりと忘れてしまっていたがもう金曜日。
学科が終えた俺達はすぐさま木枯市へ向かう。
本番当日だと言うのに、俺達でさえ何が起こるか分かっていない。
相談を受けた立場でありながらなんとも情け無い話だ。
「みんな遅かったわね。」
先に商店街に到着していた七瀬先輩。
俺達と同じタイミングで授業が終わったはずなのに、どうして既に商店街は居たのか気になる。
ほとんど俺より先に部室とかいるし、瞬間移動とかの能力者なのか?
だとしたら、もっと有効活用してるよな。
「は、は、始めまして!一年B組の星海凛と申します。入部したのにも関わらずご挨拶遅れて申し訳ございませんでした。」
「そんなに謝らないで凛ちゃん。私が色々あって部室に顔を出さなかったから会わなかっただけだから。」
いきなり凛ちゃん呼びなんだ。
女性との距離の詰め方が手慣れているのを感じる。
今までどれだけの女性を虜にしてきたのか。
そんなことはさておき、何故商店街の入り口は大きな黒幕で隠されているのだろうか。
これでは中がどうなっているのか全く確認することができない。
佐藤夫妻が揃ってからのお楽しみということなのだろうが、チラッとくらいなら先に見てしまっても良いのでは。
誰にもバレないようにそろーっと近づく。
ここまでは誰にもバレていない。
注意深く辺りを観察した後に、誰も俺のことをマークしていないのを確認して布に手を掛ける。
「何やってんの?」
遅れてやってきた華の声掛けに心臓を止められそうになる。
「別に何も。」
「明らかに怪しいでしょ。七瀬先輩〜!ここで・・・」
「待て待て待て!分かったお互いにここから一歩ずつ離れよう。そして、今まで見たことを全て無かったことにする。」
「アタシに特ないでしょそれ。まぁ、いじめるつもりもないからそれで良いけど。」
結局、夫妻が来るまでお預けということに。
それにしてもこれだけ大掛かりなことをやっていれば、当然人集りも出来始める。
何かのイベントだと勘違いして写真を撮る者まで現れ始めた。
そろそろ、この人混みが混乱を止んで通報の一つでも入りそうだが奇跡的にそれはない。
それもこれも全てが七瀬先輩の手筈通りだと考えると、賞賛を通り越して恐怖すら感じる。
「佐藤夫妻が来られたから、気を引き締めてね。ここからが僕達の本番だと思って。」
引き締まる部長の言葉によって空気が変わる。
雑談をしていた俺達は着崩れた服装を正して二人が近くに来るまで待つ。
「妻を迎えに行ってから来たから少し遅くなってしまった。」
「え、何どういうことですか貴方。生徒さん達まで集めて。」
「今日、結婚記念日だろ?今から君にサプライズを贈ろうと思ってね。」
「え!?本当ですか?てっきり今年は無いものかと。」
この様子だと佐藤先生が準備を進めていたことを、本当に知らなかったんだろう。
彼女の表情は、驚きながらも照れと喜びを含んでいる。
「今日という日がお二人の人生に深く残りますように。」
部長が語りを入れて、指をパチンッと鳴らす。
合わせて何処からともなく音楽が鳴り響く。
何が始まるんだと夫妻も俺もキョロキョロとしていると、野次馬だった人の中から一人の若者が前へ出る。
そして、音楽のスローテンポでポップな曲に合わせて、陽気なダンスを披露。
「あの服装って、昔の貴方って感じがしない?」
「言われてみればそうだ。どことなく若い頃の僕と同じ雰囲気を感じさせる。」
このフラッシュモブは過去の二人をイメージしているものなのだろう。
その証拠に次に現れたのは女性だった。
あれが佐藤先生の奥さん役の人か。
曲はここで切り替わり激しい音に。
手を繋いだまま激しい音に合わせて踊るダンサー。
佐藤夫妻の人生をぎゅっと詰め込んであり、話を聞かなくても様々な思い出があったのが分かる。
「お二人共楽しんで頂けてるようで嬉しいです。」
ダンスの邪魔をしないよう静かに俺の横へ来る凛と華。
俺も一人で見ているのは寂しさを感じるので、二人が来てくれて助かる。
「それにしても再現度は本人のお墨付きみたいだな。俺達の知らない間に糸井先輩が聞き込みしてくれたってことか。」
「なんでアタシの可能性が入ってないの。」
「じゃあ、聞くけどあれ準備したの華か?」
「・・・違うけど。」
だろうな。
別に華が無能ということではない。
実際に俺も今回の件に関しては、ほとんだノータッチだったからな。
言いたいことは、先輩達が有能過ぎるということ。
華が気付いてるか分からないが、プレゼントの件に関してもそうだ。
一見すると俺達が案を出して、それを採用して実行に移したようにみえる。
だけど、よく考えると俺達の力を借りなくても上手く事が進んでいたはずだ。
つまりは、影でフォローしながら俺達に成長出来るよう経験を積ませていたと考えるのが打倒だ。
「見て!あれは!」
余計なことを考えている間に曲は結婚式で流れる奴になっていた。
そして、音楽が変わったことによってダンサーは一気に衣装チェンジ。
着ていた服が宙を舞い、格式高いドレスコードへと変化。
「春さん。僕は貴方を一生愛す事を誓います。」
「・・・はい。」
この言葉で最後は締め括られた。
佐藤夫妻の拍手が聞こえたと同時に、一斉に周りからも拍手が聞こえる。
始まって数分でこの盛り上がり方。
今のタイミングでプレゼントを渡して終わりでも、大成功だっと言えるほどの出来栄えだ。
「あれから四十年経った今も変わらずに愛してるよ。」
「そんなこと私が一番知ってますよ。ずっと近くで見てきましたから。」
お互いを見つめて良い雰囲気が流れている。
しかし、どちらかが人前だと気付いたのか、照れくさそうに目を逸らす。
「さて、今日のメインイベントが残っていますよー!あの黒幕の方にご注目ください!」
おっ!待ちに待った七瀬先輩が用意していた物の正体が判明する時間だ。
勢い良く取り外された先に待ち構えられていたのは、明るい光。
ただ、それだけかと思うかも知れないが、前回来た時とは全く違う光景になっている。
明るい光の正体は、かつての活気を取り戻した商店街の店々から漏れている光。
昔ながらの良さを感じさせる温かな光が、佐藤夫妻を待っていた。
「この間までは確実にシャッター通りだったはずなのに。」
前の状況を一緒に見た佐藤先生はもちろん、野次馬である人々もその光景に驚きが隠せない。
「あの頃の商店街に戻った気分ですね。」
「店も全て再現してあるので、存分にお楽しみください。」
本当に利用できるようになっているらしい。
最近部室に顔を出さなかったのは、この為に現場で調整に調整を重ねていたからか。
俺が同じことをしろと言われても無理だ。
仮に型になったとしてもおままごとレベルの物しか出せないだろうな。
「あの〜。糸井先輩、これって本当に七瀬先輩が用意したんですか?明らかに学生のやることじゃないですよ。」
「あれ?言ってなかったっけ?七瀬くん財閥の娘だから、顔が広いんだよね。」
・・・?
・・・ザイバツ?
なにそれアニメのキャラクターかよ。
佐藤先生に悪いが別のことに興味が出て来た。
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