第020話 手紙に込めたもの
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四時間目が終わると、携帯にメッセージが届いていることに気が付く。
相手は古東からだ。
内容は見なくても大体分かる。
昨日の話し合いの結果、直接確かめることになったからな。
俺達も付いて行くべきか悩んだが、横浜先輩と同性の糸井先輩が代表して立ち会うらしく、他は待機しておくように命じられている。
部長から言われて仕舞えば従わないといけない。
・・・なんて、俺がそんなに素直な訳がない。
昨日の帰り道に古東が見に行かないかと提案されていた。
その時点で色々と話し合った結果、内緒でバレない位置から聞いておこうということに。
「行くか。そろそろ行かないと始まってしまいそうだからな。」
合流した古東に話し掛ける。
何か考え事でもしていたのか、ボーっとして魂が抜け落ちているようだ。
会話にならないと困るので、軽く肩を叩いて意識をこちらに向けさせた。
「ゴメンゴメン、四時間目ぐっすり寝てたからまだ寝惚けてるのかも。」
寝惚けているのとはまた違った表情にも見えたが、彼女自身が言うのだから否定出来ない。
そもそも探ろうとも思わないし。
なんだかいつもより距離が空いている様な気がする。
それは物理的になのか、精神的になのかは分からない。
分からないが確実に見えない何かが隔たりを生んでいる。
「終わったらすぐに飯だな。」
「意外と食いしん坊キャラでやってるの?」
「古東が飯って聞けば喜ぶかなと思って。」
「アタシに変なキャラ付けするなよ。」
元気出るかなと思って言ったのに逆効果だったらしい。
てか、食いしん坊なのはキャラじゃなくて事実だろ。
最初に会った時もまぁまぁ量のあるステーキ弁当食べてたし。
「いた。ここからは三人にバレないように。」
注意を促す古東。
顔も集中モードに切り替わっている。
ここからでは顔がはっきりと見えないが、恐らく羽田先輩と野中先輩ではない。
見たことのない顔なので、どの学年なのかすら不明。
もっと一目で学年が分かる制度を作った方が良いとつくづく思う。
「何か聞こえるか?」
「シー。ギリギリ聞こえそうなんだから。」
はいはい、雑音になってしまいましたと。
俺も事がどう終息に向かうのか気にはなるので、音を立てずに耳を傾けた。
「君がこの手紙を書いたんだね。」
「は、はい。そうですけど、なんで糸井さんまでいるんですか?」
「俺が呼んだんです。ちょっとした相談で。」
女子生徒は、相談と言う言葉を聞いた後に糸井先輩を見て納得する。
恋愛支援部の部長であることは上の学年で周知の事実らしい。
「なんで名前を書いてないのかな?」
「横浜を悩ませたかったから。この手紙のことで頭を一杯にして欲しかったから。」
「そんなことしても揺れる男じゃないけど、俺を悩ませて意味があるのか。」
「好きだから。好きだから、ずっと考えて欲しい。例え、どこの誰だか知らないままでも、ラブレターに興味を持ってもらえればそれで。それに・・・。」
言い淀んだ。
何か吐き出したい思いがあるはずだが、好きな思い人の為に言葉を飲んだ様に見える。
その先にどんな言葉があるのかを聞き出すのが、糸井先輩の力の見せ所か。
「君が言い辛いのであれば、僕から説明してあげようか。」
「えっ?分かるんですか。」
「僕はこの学園の事なら何でも知ってるよ。例え、それが人の心であっても。」
格好良いセリフのつもりなのか。
ちょっと本当に心が読めてそうだから洒落にならない。
・・・今まで糸井先輩に失礼なこと考えてないよな。
女子生徒と横浜先輩どちらからも注目されている。
あれだけ大口を叩けば合っているか気になるのも当然か。
「名前を書かなかった理由は、彼女が言ったことが全て。君を悩ませることに意味があった。そうすれば、練習でのパフォーマンスが落ちるからね。」
「好きなのに俺の練習の邪魔を?ますます、意味が分からないのでもっと具体的に説明が欲しいです。」
「困らせたかったのは、君だけじゃない。君に唯一チラつく女性の影、白島矢くんも困らせたかった相手なんだよ。」
「本当に全部分かっていたんですね。」
彼女はこれ以上隠し通すことが出来ないと悟り、空を見つめ語り出す。
「私は貴方のことを好きだけど、あの人がいつも邪魔をする。それなのに、何食わぬ顔で隣を位置取るの。それが嫌で嫌で、ちょっとした復讐のつもりで。でも、まーたく効果無かった見たい。」
「最初から遠回りせずに直接思いを伝えれば良いだろ。」
「伝えたら私にも少しは可能性があったかな。隣で貴方と笑っていられたかな。・・・そんなはずないよね。」
彼女の目からは涙が。
どうして流れた涙なのか。
俺にはサッパリ分からない。
事を最初から諦めて、変える努力もしなかった。ただそれだけのこと。
諦めていたなら涙を出す必要があっただろうか。
いや、俺には計り知れないほど愛おしく感じていたのか。
可能性がないと分かっていても、その声、仕草や表情、その全てを見るたび心を締め付けられたのかもしれない。
「俺には好きな奴がいる。だから、答えられない。」
「やっぱり噂は本当だった。白島矢さんと付き合ってるの。」
「いや、付き合ってはない。俺の片想いで終わってる。白島矢は俺が全国へ行く邪魔をしたくないと思っているから、今告白しても可能性は無い。でも、いつか俺が強くなれた日が来たら告白するつもりだ。」
「結局、何もかも上手くいかなかったなー。本当に何もかも。でも、貴方から元気を貰えた。好きな人の為に努力することも教えてもらった。色んな感情を知れた。ありがとう、大好きな人。」
そのまま思いを伝えると、返事を聞かないまま帰って行く。
あえて聞かずに潔く立ち去るのを、綺麗な終わり方な気がする。
その後、横浜先輩と糸井先輩が短い会話を済ませて解散した。
つまり、相談はこれで終了ということだ。
今回の件で、学べる恋愛支援部としての立ち回りや相談者達が持つ熱い想いなどは知れた。
三度目の正直という言葉もあるくらいだ。
次回こそ、全員から褒められるような活躍を残したい。
「言葉には簡単に言い表せないほど凄かったな古東。・・・古東?」
横を見ると全力で走っている古東の姿が。
何でそんなに焦ってるんだよ。
「佐倉くん。」
そういうことね。
だったら、俺にも教えてくれよ。
「奇遇ですねー。あははー。」
「こういう相談はナイーブな相談の可能性もあるんだよ。
だから、人数は最小限に絞って相手に配慮するんだ。今回は、二人が気付かなかったから良かったけど。」
この後、五分くらい話は続いた。
怒鳴るタイプであるなら不貞腐れていたかも知れないが、優しく説き伏せるタイプなので普通に反省を。
ちなみに、全力で逃げて行った古東も確保され、後に全く同じ話を聞かされていた。
「今回は怒られずに済んだけど、絶対あの人怒らせるのはやめておこうぜ。」
「いや、七瀬先輩も相当やばいって噂で。」
次、部室に顔出したらバレていて怒られるとかないよな。
糸井先輩も言いふらすような人じゃないし、きっと大丈夫だと信じたい。
古東と今日のことを反省しながら、残り少ない時間で弁当を口へ掻き込んだ。
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