第002話 傷付き傷付ける華
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まだ殴られた頬が痛い。
感覚を確かめるように撫でる。
ヒリヒリする感じがずっと続いているな。
これって学校側に言えば、問題にしてくれるんじゃないだろうか。
まぁ、そんなことしたら何故こうなったのかの経緯も調べられる。
ただの女絡みで対処してくれるのなら良いが、もしも神崎に迷惑が掛かるようなことがあれば会わせる顔がない。
それに本人の耳に届いてしまう可能性だってあるだろう。
優しい神崎のことだ、そうなれば絶対に自分を責めることになる。
俺さえ我慢すれば解決する。
時間が経てばアイツらだって気付くはずだ。
俺と神崎は、幼馴染という関係性こそあるが対して深く交流はないと。
「って、そんなことより購買部だった!」
考えている間は空腹も気にならなかったが、一旦考えるのを止めた途端決壊したダムのように空腹が押し寄せて来る。
売り切れてしまっていないかと心配しながら、全速力で廊下を入る。
教師に見つかったら怒られるだろうが、今はほとんど職員室にいるはず。
走っている時は、風に乗って気持ち良い。
校内で走るのは目立ってしまうが、今は腹を満たすことが何よりも優先なので気にしている場合ではない。
息を切らしながらやっと辿り着いた購買部。
もう昼休みが始まってだいぶ時間が経過しているからか、人は全くいないようだ。
それでも弁当は点々と残っている。
どうやら間に合ったようだ。
「良かったー。昼飯抜きになるところだったぜ。」
「また頬を赤くして。アンタ本当に絡まれやすい体質ね。」
「おばちゃん、そんな俺に同情してくれるなら弁当安くしてくれね?」
「バカなこと言ってると売れ残りそうな弁当、全部買って貰うよ。」
俺の交渉術は効果を発揮しなかった。
ここは大人しく弁当を選ぶことにしよう。
しばらくどれにしようか悩んでいると隣に女子生徒が並んでいる。
彼女も弁当を求めてここに来たのだろうか。
そんなことはどうでも良いか。
また弁当に意識をやるとあることに俺は気付く。
あ、あれは!
あまりに人気で数量限定10個しか作られない幻のステーキ弁当。
味良し、量良し、値段も500円と破格の値段だ。
これを選ばない選択肢などあるだろうか。
「「ステーキ弁当で!」」
どうやら隣の女子生徒と注文が被ってしまったようだ。
この時初めて俺は女子生徒の方を見た。
いくら校則が緩いからと言って明らかに目立つ金髪のショート。
ちょっと威圧的なパッチリとした目。
いつの時代だよと言いたくなるような虎のスカジャン。
これは絵に描いたような不良少女だな。
彼女は交友関係の少ない俺でも知っている、神崎とはまた別の意味での有名人。
「・・・薔薇姫だ。」
薔薇姫こと、古東華。下の名前が薔薇姫の由来だったはず。
「聞こえてるっての。アンタもこの弁当が欲しいの?」
「いや、まぁ、そうだな。これは食べないと損するだろ。」
「このステーキ弁当の価値が分かるとはなかなかやるね。こうなったら決着は!」
大きく拳を振り上げる薔薇姫。
さっき殴られたばかりなのに、また殴られるのかよ。
歯を食いしばってぎゅっと目を瞑る。
「最初はグー!」
え、ジャンケン?
噂では素手で熊を倒したことあるとか、中学生の時に組1つ潰したとか言われている女がジャンケン?
もしかしたら、この噂って全部嘘だったのかもな。
よくよく考えたら人間の出来る範疇を軽く超えているし、早く気付くべきだった。
「じゃんけんポンッ!」
不意を突かれて何を出そうか考えられないままに事が進む。
脳ってのは不思議で考えていなくてもジャンケンはできるのだ。
体が覚えているのか咄嗟に言葉に合わせてグーを出す。
「アタシの勝ち!んじゃ、おばちゃんステーキ弁当1つ!」
嬉しそうに購入しているのを見て、ほんのちょっとだけ可愛い奴だなと思ってしまった。
こんなことを言うと弁当ではなく彼女の怒りを買ってしまうことになりそうなので、適当に惣菜パンを見繕って購入する。
今日は天気が良いので、お気に入りの屋上で昼食を食べることにしよう。
なんでか知らないが、立ち入り禁止な訳でもないのに人が全くいないからな屋上は。
安心してプライベートな空間を確保することができる。
雨の日は利用することができないのが唯一の欠点だけど。
そんな楽園に向かう最中に大問題が発生している。
後ろから確実に薔薇姫が付いてきているのだ。
俺なんかしましたか!?
背後を狙って油断した隙にグサリとかないよな。
ステーキ弁当まで譲ったのにそんなことされるとは有りえないだろ。
なんの恨みがあるんだよ。
そのまま何もないまま屋上まで着いてしまった。
「へぇー、やっぱり屋上が目的地だったんだ。アタシも好きなんだよね屋上。」
ただただ、屋上でご飯を食べようとしているだけだったのか。
この瞬間、何故屋上に人が寄り付かないのかという疑問も解決した。
逃げ出したい気持ちもあるが、今この場を離れると明らかに薔薇姫を嫌っての行動に見える。
まだ何かされた訳でもないのに、それは心が痛むな。
「いつもここで飯を食ってるのか?」
「ん?そうだけど?だって、アタシとご飯食べてくれる奴なんていないでしょ。」
どうやら自分が人を寄せ付けないのは、本人が一番理解しているようだ。
「分かってるならもっと大人しい格好したらどうだ?顔整ってるんだから、そっちの方が人気だって出るだろ。」
「なにアンタ。アタシのこと口説こうとしてんの?」
「冗談でもやめてくれ。色んな意味で恐れ多っての。」
「アハハハ!ごめんごめん。学校で人と話する久しぶりだし、アンタ面白い奴だからつい。」
笑っているはずなのに、言葉はどこか寂しげだ。
さっき知り合ったばかりの人間に、過去の話を聞く訳にもいかないが深い何かが心の奥にあるのだろう。
ちょっとした沈黙の後に慣れた動きで扉上の給水塔に登る。
「ほら、アンタもこっちに来なよ。」
差し伸べられた手を取る。
意外にも普通の女子と変わらない柔らかで小さな手だ。
自分のことだが、考えてること気持ち悪いなと思いながら登り切ると、そこには街全体を見渡せる綺麗な景色があった。
「・・・綺麗だな。」
思わず声が溢れる。
それほど魅力的な一場面だった。
「だろ!アタシだけの特等席。」
「良かったのか?俺なんかを招待して。」
「良いの良いの。実は言うと誰かに自慢したかったから。お近付きの印って奴。」
「薔薇姫とお近付きとは過去の俺が知ったら驚愕するだろうな。」
昼飯を一緒に食べることになるとは想像もしていなかった。
同じ学校にはいるが、全く違う人種で遠い別の世界にいるみたいだったからな。
「薔薇姫じゃなくて古東。」
「知ってる。有名人だから名前くらいはな。」
「ならそう呼べっての。えーっと、佐倉?」
「なんで疑問系なんだよ。合ってる合ってる。」
「ちょっと携帯貸せよ佐倉。」
新手のカツアゲか?
どちらにせよ抵抗しても良いことはないだろうから素直に渡す。
慣れた手つき操作しているのを感心しながら見学する。
「よっしできた!これでアタシの同い年の友達一号!」
嬉しそうに自分のアドレスに増えた俺の連絡先を見せてくる。
他にも名前が入っていることから少なからず他の友達はいるようだ。
噂というのは当てにならないとつくづく感じる一日になった。
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