第017話 話題の人物は何処へ
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朝になって学校に行くと、教室内がいつものように騒がしい。
なんのことで話題になっているのか少しも興味ないがない。
しかし、聞き耳を立ててしまうのが人の性。
ぼーっとしている時にテレビの音が欲しくなるのと似たよなもんだ。
聞こえてくるのは、SNSの話題ばかり。
これだからネットに毒された現代民は。
そう思いながら担任が教室へ入ってくるまで、携帯をいじって暇を潰す。
俺がやってるのは、携帯の中にインストールしてある電子書籍を読むことだから。
他の人とはちょっと違うから問題ないんだよ。
誰かが俺の席に近付いてくるのを感じる。
真は朝練があってまだ教室に戻って来ないはず。
それなら誰が俺に話しかけてくるんだ?
「おはようございます佐倉さん!」
「俺に話しかけてくる人が少ないから誰かと思った。おはよう星海。」
「皆さん、昨日のネットニュースで話題は持ちきりですね。」
どうやら星海は今日の教室中で話に出ていることについて知っているようだ。
普段から自分の興味のあることしか調べないので、あまり目に入る機会は少ない。
本来は会話のきっかけになるので見ておくべきであるけど。
「そんなにすごいこと起こってたのか?」
「えぇー!?見てないんですか?これですよこれ!」
わざわざ自分の携帯を開いて、記事を見せてくれる。
[アメリカのスーパースター 日本へ移住]
見出しからしてすごいことであるのは伝わってくる。
しかし、アメリカの女優やアイドルなどには疎いので写真を見ても誰かピンと来ない。
写真の下には、ハイラ・リーゼンと書かれている。
それを見てようやく自分の記憶の中にある名前と一致する。
「代表作は『滝に落ちる恋』だったか?最近の洋画だけど興行収入トップに並ぶ映画だよな。」
「そうなんですよ!元になっている小説は、失礼ですがそこまで有名じゃなかったらしいですけど、ハイラさんが主演を務めてから爆売れしたらしいですよ!」
ちょっとした豆知識を挟むのも欠かさない星海。
解説があった方が話としては広げやすいので有難い。
もし人見知りでなければ、友達なんて数え切れないほどいただろう。
「なんでまた日本に移住なんてことになったんだ?」
「それが噂だと祖母が日本人で、子供の時に来た日本に感銘を受けた受けらしいですよ。それで日本に来て、夢だった教師をしてみたいって。」
「俳優から教師って凄い振り幅だな。みんな夢になる職業から夢を育てる職業に変わる訳だし。」
これはなかなか上手いことを言ったのではないだろうか。
チラッと星海の方を見てみたがいつもと変わらない顔をしている。
思っていた以上に普通のことを言ったらしい。
まぁ、誰も気付いていないなら恥ずかしがる必要はない。
「ここだけの話。ウチの集めたネット情報によると祖母の家がこの藍連市のどこかにあるらしいですよ。」
「だから、この学校に勤める可能性があるかもって盛り上がってるのか。」
「そうです!そうです!どうですか?もしそうならテンション上がって来ませんか?」
星海は言葉通り興奮しているらしく、俺との距離がグッと近付く。
彼女は目をキラキラさせているが、女子に近付れるとし俺の心臓が持たないって。
慎重かつ丁寧に肩を掴んで少しだけ距離を離す。
星海も恥ずかしくなったのか話の続きをして話題を逸らそうとする。
「そ、そんなことはあり得ないと思うんですけどね〜。でも、そうなれば藍連高校の歴史に刻まれること間違いなしですね!」
「星海、窓の外を見てみろ。」
俺に言われたので、忠実に外を見る。
「今日は雪が降ってるか?嵐が来るか?・・・つまり、そういうことだ。」
「ウチはゲームでもロマンを求めるタイプなので賭けてみたいですけどね。」
そんな話をしていると部活組も教室に戻ってくる。
時計を見るとホームルームの時間だ。
ギリギリまで練習して大変だなと心の中で労っておく。
「じゃあ、時間なのでウチは席に戻りますね。」
まだ大半の生徒がダラダラとお喋りを続けている中で、律儀に席について担任が来るのを待っている。
こういうところは俺も見習って行くべきだろうけど、絶対に行動には移せないな。
時間が少し遅れてから扉が開く音が聞こえる。
どうして生徒は時間に遅れると酷く怒られるのに、教師は堂々としているのだろう。
そんなどうしようもない不満を胸に秘めて、いつもと変わらないホームルームが始まった。
やはり、担任の口から出るのは行事のスケジュール確認ばかり。
どれもプリントで事前に知らされているが、少数の生徒は初めて知ったようなリアクションをする。
こういうタイプはプリントのことをただの紙切れだと思って、平気で折り紙とかにして遊んじゃう奴らだ。
「本当毎度のことながらプリントに目は通せよ。俺夜更かしして作ってんだぜー?しかし、家持ち帰ってやったら給料出ないのに。」
大人の事情が垣間見えてしまい、先程の不満は無かったことにしておこうと思う。
「まぁ、そんな気苦労はどうでも良くて。今日はかなり重要な話があるので、静かに聞いてくれよ。良いか。絶対に静かにしてくれよ。」
念には念を入れて注意を促す。
つまり、担任としては絶対にうるさくなると予測が出来てしまうことが待っているということだ。
学校が一週間休みになるとか?
いや、ゴールデンウィークはとっくに終わっているぞ。
「それじゃ、入って自己紹介してもらって良いですか?」
「ハイ!こんにちは!今日からこのクラスの副担任になりましたハイラ・リーゼンでーす!担当科目は英語なのでよろしくお願いします。」
「あれ?意外とみんな静かだねー。いつもこんな感じだと良いんだけど。」
担任よ。これは静かなのではない、驚愕の余りに言葉を失っているのだ。
あと少しすれば、現実に思考が追いついてきてうるさくなる。
「おい!今になって騒ぐな!カメラもやめろ!失礼だろ!」
ほらな。
あまりの騒ぎように他の教室の生徒までもが覗きにくる始末。
教師が鎮静化を図るのに十分、説教が始まって十分。
そして、重要な質問攻めの時間が二〇分。
まだ高校生活始まったばかりだが、恐らく一番長いホームルームになっただろう。
珍しく時間割の変更があって、一時間目が英語になっていたのはこうなることを見越してだったのだろう。
「おい、信じられるかよ陽太!」
もちろん、この男も喰いつかない訳がない。
興奮気味に何度も信じられるか、嘘だろを連呼している。
「確かに凄いことだと思うけど、ちょっと迷惑になってんじゃねーの?女優の肩書き捨てて来ただろうに。」
「きっと今からが本番だぜ?慣れるのに何日掛かることか。」
ホームルームと一時間目は立て続けに行われたので、まだ教室内はクラスメイトだけだった。
しかし、一時間目が終わった後地響きにも似た音を立て人混みが押し寄せてくる。
ピロンッ
ここで俺の携帯に誰からメッセージが届く。
こんな状況で誰からだろうと思って見ると星海からだ。
『たまには大きな賭けに出て見るのも悪くないですね!』
他の生徒がハイラに注目している中でたった一人俺を見つめてニッコリと笑顔を見せていた。
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