第015話 名前のないラブレター
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昨日の交流会を経験すると今日の授業が面倒に感じる。
それでも退屈な授業に耳を傾けていたが、何も覚えられないまま放課後になっていた。
もう五月も後半になりかけている。
中間考査があることを考えるとそろそろ勉学にも本腰を入れるべきか。
いや、それは未来の俺に任して部活にでも参加しよう。
きっと近いうちに嫌でも勉強詰めの日々がやってくる。
ならば、その日が来るまでに十分な休息を取っておくことがは必要だ。
決して勉強したくないから部活に逃げてるとかそういうことではない。
「お疲れ様でーす。」
「お疲れ様。佐倉くんは最近、相談が少なくて気が抜けてるねー。」
「うーん、相談がないとどうしてもやることないですから。」
「もうそろそろ中間考査が始まるでしょ?華ちゃんと佐倉くんは勉強してるの?」
考えないようにした側からテストの話題になってしまった。
学校に通っている以上は避けては通らないということか。
そして、俺よりもこの話題を恐れている人物がいる。
「華ちゃん、また赤点だらけなんて許さないからね。だから一緒勉強頑張りましょうか。」
「いやー、七瀬先輩の手を煩わせる訳にはいかないですから。」
「頑張りましょう、・・・ね?」
「はい。」
普段は恐れられる存在である古東が、背筋の伸ばして上擦った声で返事をする。
それがあまりに珍しい光景で笑ってしまいそうになったが、鋭い目つきで古東に睨まれたので窓の方を向いておく。
「勉強は頑張らないといけないけど、それはまた今度にしようか。なんと言っても、今日は予約が入ってるからさ。」
「おぉー!それを待ってたんですよ!」
「多分、そろそろ来るんじゃないかな?」
糸井先輩の予想はピシャリと当たっていたようで、扉をノックする音が聞こえる。
音に反応した糸井先輩は、慌ただしくドアの方へ向かって行った。
初めて俺がここへ来た時も似たような騒がしさを感じたけど、まさか毎回こうやって対応してないよな?
次見かけたら、それとなく止めるよう言っておこう。
相談に来た身としては不安になるからな。
「失礼します。」
入って来た男はあまりにも大きな体格をしていた。
身長は明らかに180センチを超えていて、筋肉もしっかり付いているのが服の上からでも分かる。
男子生徒は、糸井先輩に案内されるままソファーに座る。
一人で来たのが心許ないのが、ソワソワとしているのが伝わる。
「軽く自己紹介と相談内容を聞かせて欲しいな。」
「二年A組・横浜優ッス。相談内容なんですけど、俺の靴箱にこれが。」
テーブルの上に置かれたのは、一枚の封筒。
見た目からするに、手紙が入れられてるのではないかと思われる。
なんたって丁寧にハートシールで止められてるからな。
どう見たってラブレターだろ。
今時ラブレターで告白をするとは乙なものだ。
「つまりはこのラブレターの返事を手伝って欲しいと。」
「あ、いえいえ。この手紙、間違って入ってだと思うんですよ。」
「間違い?こんな大事な手紙をかい?」
「最初は俺も舞い上がって手紙を確認したんですけど、宛名も差出人も分からない手紙で。」
本当にラブレターであるならば、誰が誰に送ったのか分からない曖昧な手紙にはならないはず。
そう考えて、ここへ持って来たのか。
「失礼ですけど、横浜先輩。間違いの可能性もありますけど、イタズラと考えるのが自然じゃないですか?」
目的も誰がやったのかも分からないが、真っ先にイタズラだと思う。
仮に友達同士のイタズラだとしたらタチが悪い気をするけどな。
「そうなんだろうけど、中身を見るとどうしてもこれを書いた人は本気なんじゃないかと思って。」
「だとすると困っている人がいる。しかも、恋愛絡みのことで。」
「俺もそう思ってここへ。この差出人を探し出して、返してあげて欲しいです。」
どうやら今回は人探しから始まるようだ。
相談者が目の前にいる状況なので言い出せないが、この一枚のラブレターを渡されても情報源としては乏しい。
部長が断る訳はないので、結局頑張るしかないんだけど。
また変なことに巻き込まれるとかないよな。
「あ、俺部活あるんで今日はこの辺で。押し付ける形になって申し訳ないんですけど、よろしくお願いします。もし見つからなかったら、そっちでどうするか決めてもらって良いので。」
下ろしていたカバンを背負い直して、そそくさと出て行ってしまった。
最後に言った言葉から察するに、結果がどうであるのか気にならない様子だ。
可能性としては、まだ彼自身が関係しているのもあり得るんだけどな。
相談者がいなくなった後で、テーブルに置いてあるラブレターを一読しておく。
ラブレターが物珍しくて野次馬魂で読んでいるのではなく、少しでもヒントがあるのではないかという気持ちからだ。
「なんか思っているより具体的な文ですね。特定の人に向けて書かれた手紙にしか思えない。」
「そうなんだよ。相談者の横浜くんが言っていたように誤って彼の下駄箱に入れた可能性も考えられるね。」
「アタシは普通にあの先輩宛に送ったと思うけど。」
「今の段階では判別が難しいでしょう。ここはいつものように足を使って探すしかないわ。」
「七瀬くんの言う通りだ。今回の調査は苦戦を強いられることも考えて、各自で調べてもらいたい。その方が効率が良いからね。」
簡単に調べると言っても俺と古東は全く上級生の情報を知らない。
故にどこから手をつければ良いかなんて全く。
とりあえず、携帯を取り出してカメラを起動。
これでいつでも内容を確認できるはずだ。
書いた生徒のことを考えてると倫理観的にまずい気もするが、手紙を持って歩く方が可哀想だよな。
「それじゃ二日後に情報交換でもしようか。部室は十八時まで空けておくから、自由に使ってもらって良いよ。」
ここから捜索パートということらしい。
早速、二年生の教室へ向かってみた。
他学年の生徒が、教室近くを彷徨いてるのは目立つようでジロジロと見られている感覚がある。
とりあえず、二年A組に向かうが既にもぬけの殻。
時間にすれば十七時ぐらいなので、当たり前と言えば当たり前か。
部活や勉強、バイトなど放課後の過ごし方は無限に存在する。
わざわざ教室で残って喋ってるだけの生徒は少ない。
「君、二年生じゃないよね?A組の生徒に用があるの?」
眼鏡を掛けた三つ編みの女子生徒が近付いてくる。
勝手に教室へ入った後輩を怪しんでいるようだ。
俺が同じ立場でもそうするから、文句は言えないな。
「横浜先輩に用が合って来たんですけど。最近仲良くさせてもらってます佐倉陽太です。」
「最近仲良くしてるなんて真っ赤な嘘ね。」
咄嗟に不自然にならないよう嘘を付いたが、何故か見破られた。
根拠の無い否定であるなら、まだ認めずに嘘を突き通した方が良いと思い続ける。
「なんで断定されるのか分からないですけど、仲良くしてもらってるのは本当ですよ。」
「まだ嘘をつき続けると怪しさが増すから止めたら?私は、白島矢菜乃。柔道部の次期エースである彼の専属マネージャーよ。」
ようやく話を聞けそうな生徒を見つけたが、どうやら最悪の第一印象を与えてしまったようだった。
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