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第001話 校舎裏の土は食べない方が良い

誤字脱字や文章の下手さについてはご了承下さい。投稿予定時間になるべく投稿できるようにします。

よければ、評価とブクマ等していただければ幸いです。

天気は快晴。

寒さはまだ残るが日中の日差しは心地よい。


校舎からはキャッキャッウフフと青春の声が聞こえる。


そんな中で俺は校舎裏の土を食べています。

それは自主的になのかって?


そんな訳ないだろ!なんで自分から土食わないといけないんだよ!


・・・コホン。取り乱してしまってすまない。

いきなり何の話をしているんだと思った人が大半だろう。

安心してほしい。今から愚痴も込めてしっかりと説明する。


何故、土が口の中に入っているのかと言うと数十分前まで記憶は遡る。


◇◆◇


キーーンコーーンカーーーンコーーーン


四時間目の終わりを告げる鐘の音。

まともに聞く気にもなれない授業がやっと終わった。

学生にとって昼休みは心身共に安らぐ貴重な時間である。


俺のお腹も空腹だと伝える為に音を鳴らしているな。


どこで食事をしてもいいのだが、違うクラスの生徒も行き交う教室の中は居心地が悪い。

このまま迷っている内に続々と教室に人が入りかねない。

やましいこともしていないが、コソコソと後ろのドアから教室を出ることに。


腹が減っているせいなのか移動することも気怠く感じながら扉の前まで辿り付いた。

そしてちょうどドアに手を掛けた時、向こうからも力が加わっているのを感じる。

誰かが入ってくるに違いない。

そう思った俺はドアから離れて1歩後ずさる。


「このクラスに 佐倉陽太(さくらようた)って人いるよね?ちょっと話がしたいんだけど。」


佐倉陽太というのは、俺の名前だ。

つまりは俺に用事があるらしいが、こんなイケメンは生憎知った顔ではない。

知らない顔の生徒が俺を訪ねて来るのは、入学してから一ヶ月しか経っていないのに8回目。

週二だぞ、週二!俺は有名人か何か!


よし!ここは何も知らない顔をして横を通り過ぎよう。


「あ〜、陽太ならそこにいる奴だけど。」


聞き馴染みのある声での告げ口。

後ろを振り返れば悪友の柊真(ひいらぎまこと)が親指を立て頑張れと応援している。


コイツ絶対に許さねぇーーー!!!

今から何が起こるのか分かっているから楽しんでやがるな!


「で、彼の言うことは本当かい?」


「は、はい。」


おい、俺ぇーー!

なんで素直に返事しちゃうんだよ。

あれか、相手のイケメンからプンプン漂う陽キャオーラのせいか?

そのせいで俺に選択肢を与えられず素直に答えるしかないのか?


許さんぞ、陽キャ野郎め!

一言文句を言ってやるぜ!


「僕は隣のクラスの山上風助(さんじょうふうすけ)だ。悪いけど話があるから、付いてきて貰っていいかな。」


「・・・分かりました。」


俺の人生経験によると、この場合は逆らわずに空気の流れに身を任せるべきである。


結局どこに連れて行かれるのかも分からないまま、廊下を歩かされている。

何度も言うが今は昼休み。

そこが椅子に座って落ち着ける訳でもない廊下であっても、それなりの人数が雑談に花を咲かせているのだ。


イケメンと吊り目の天パ野郎。

この異様なコンビが廊下を歩いていれば、嫌でも噂話が始まってしまう。


コソコソッコソ


本人達に聞こえないように喋っているつもりかも知れないが、俺の耳は地獄耳。

意識する会話を絞れば、廊下ぐらいの狭い空間でなら聞き取れる。

・・・全く役に立ったことない能力だがな。


「あのー、どこまで連れて行かれるんでしょうか俺は。」


「なるべく人の目がない場所が良いから空き教室か校舎裏が良い。でも、昼休みは空き教室も使われているだろうからやっぱり校舎裏にしよう。」


最初の頃は何が始まるのかと怖くなっていたものだが、何回も経験すれば慣れたものだ。

俺の貴重な昼休みの時間を確保するために手っ取り早く終わらせてしまおう。


そんな思考を張り巡らせていると、いつの間にか校舎裏。

まだ入学して1ヶ月なのに、何度も訪れた場所。

最早実家のような安心感さえ感じる。


「君も昼休みを少しでも確保したいだろうから本題に入らせてもらいたい。」


これは有難い提案だ。

俺のことを気遣ってくれるなんてすごい良い奴なのではないだろうか。

ん、待てよ。そもそも良い奴なら、初対面の俺に急に喋りかけて校舎裏に呼び出すか?


「君は今後一切”神崎(かんざき) 絢音(あやね)”に近付かないでくれ!」


そう言われると分かっていたから考えないようにしていたのに、お構いなしに話を続けやがって。


神崎絢音は俺の幼馴染である。

幼馴染とは言っても、漫画やラノベのラブコメのように終日行動を共にすることもなく、休日にデートではないと言いながらも遊びに行くなんて関係性でもない。

精々、出会ったら気まずくないくらいには会話できるレベルである。


その程度の俺が何故これ程までに圧を掛けられているのか。

もちろんそれは彼女にある。


名前を聞けば、この街で知らない者はいない程の有名人なのだ。

理由は単純で、黒髪のロングがよく似合う美少女で超の付くほど性格が良いから。

学校内外、男女問わず仲良くなりたいという人が大勢いる。


しかし、男性はそれが叶わない。

彼女は相次ぐ告白の嵐によって男と話すのを避ける。

特に歳の近い男性と話しているのは誰も見たことがないのだ。

たった1人を除いて。


「言っておくが、俺も仲が良いと呼べるレベルじゃない。それにただの幼馴染だというのは周知の事実だろ。」


「それでもだ。僕は彼女のことを本気で愛している。君が話しているのを見ると良い気分はしない。」


なんて我儘ロジックだ。

今までそんな意見がまかり通ったことがあるだろうか。


でも、今日はついている方だ。

今日を含めない7回の内、顔面パンチ2回、死ぬほど暴言を浴びせられる3回、永遠と説得される2回と散々な目に合ってきた。

それらと比べたら注意だけで済まされるなんて幸運以外の何ものでもない。

そもそもあんまり神崎と話をしている訳でもないのだから注意すら気にしなくて良い。


「あいよー、じゃあ恋愛頑張れよ。俺、すごい応援してるからー。」


我ながら感情が籠っていないが、俺だって早く昼食に有りつきたい。

彼を背にひらひらと手を振りながら、この場を後にする。


まだ、購買部に弁当とか余ってるかな。

思ってるよりは早く終わったしな。


「・・・はなんだ。そのふざけた態度はなんだぁー!!!」


大きな怒鳴り声が後ろから近づいて来る。

何事かと思い振り返ると、山上渾身の右ストレートが不可避の距離にあった。

どうやら顔面パンチの記録が更新されたらしい。


このようにして俺は地面の土を食べる羽目になったのだ。

これで皆には好んで土を食べている訳ではないと証明できたかな。


それにしてもお腹が空いているのに、最初に口にするのが土って最悪過ぎる。

真の奴め。こうなると分かっていながら友達である俺を売ったよな。

その罪は、ジュース1本で償ってもらうとしよう。


俺はしばらく動けないので仰向けになって空を見つめた。


この物語は、よくあるラブコメのように”幼馴染とイチャイチャする物語”ではない。

佐倉陽太が”()()()()()()から逃れるまでの物語"である。

ご覧いただきありがとうございました!

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毎日22時から23時半投稿予定!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公の良い人感が凄まじい。 幼馴染み関係で何回も苦労してるだろうに幼馴染にたいする不満がない聖人ぶり。 少ない描写だが悪友の男の子や幼馴染の女の子についてもっと知りたいと思わせる文章力と…
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