仁井名リコは嘘をつくのが上手いそうです
「あ……綾人くん、どどどど、どうしよう!? 私たちが交際していること、あの女にバレちゃうよ!」
「ど……どうすれば……」
俺たちの交際がバレたら……アイツ、何しでかすか分からないけど……もしかしたら……いや、多分アイツは、俺たちの関係を崩すだろう。そうなったら、元も子もない。
「綾人くん!」
「ん?」
「トイレ……早くトイレに隠れて!」
「あ……あぁ!」
俺は急いで男子トイレに向かい、身を潜めた。
「リコ、大丈夫かな……?」
★ ★ ★ ★
綾人くんがトイレに隠れてからおよそ30秒後に、外道な女がドーナツ屋さんに入店してきた。
「あれ? 仁井名さん?」
「ほ……星宮さん。き……奇遇だね」
「仁井名さん、一人で来たの?」
「う……うん。一人……一人で来た」
「そうなんだ~。……ん? 何でドーナツのお皿が二枚もあるの?」
ギクッ!!
「そ……それは~」
「それは?」
ヤバいヤバいヤバいヤバい! 何て言って誤魔化そう? …………よし! 一か八かこれで……!
「私、ここのドーナツが大好きで……10個以上食べちゃうんだ~」
ど……どう? 誤魔化せた、かな?
「……仁井名さんって以外と大食いなんだね!」
ご……誤魔化せた!!
「そうなの! 私、実は大食い女子なの!」
「……いいな~」
「何が?」
「仁井名さん、そんなにドーナツ食べても痩せてるから」
「あぁ……。だ、だけど、私は食べたあとに走ったりしてカロリーを消費してるよ」
「そうなんだ……」
「うん……」
私、自分でもビックリするぐらい嘘をつくのが上手くない!?
「あっ、もうこんな時間! 妹がここのドーナツをどうしても食べたいらしくてね……」
コイツ、妹いるんだ……。
「妹さんのためにドーナツを?」
「うん。買いにきたの」
「……星宮さんは優しいね。妹さんのためにドーナツを買っていってあげるんだから」
「そ……そうでもないよ」
……そうだよね。お前みたいな外道な女、優しいはずないよね!!
「じゃ、じゃあ私はこれで……」
「うん」
外道な女は、妹のためにドーナツを買って帰っていった。
私はトイレで隠れている綾人くんに声をかける。
「綾人くん、もう出てきて大丈夫だよ」
綾人くんがトイレから出てきた。
「アイツを上手く誤魔化せたのか?」
私は親指を立てて「バッチリ!」と言った。
「はぁー、あの時はマジで肝が冷えた……」
「アイツ、妹のためにドーナツを買いに来たんだって」
「そうなのか……。まあ、リコのおかげで俺たちの関係がアイツにバレずに済んだ。……ありがとう。リコ」
――綾人くんは私の頭を撫でてそう言った。
読者の皆様へ!
☆☆☆☆☆の評価とブックマーク、誤字脱字報告をしてくださいますと嬉しいです!!!