憎悪(side 仁井名リコ)
――3日前
私は体育館裏で、綾人くんにあの外道な女が意図的に告白するのをこっそり見ていた。
「私……篠垣のことが好きなの!」
「…………えっ」
「だから……私と付き合ってくれない?」
「…………えっ……ええっ!?」
星宮さんって、綾人くんのこと好きだったの!?
だ……ダメ……ダメだよ! 綾人くん! 綾人くんのお嫁さんになるのはこの私なんだから!
「付き合おう」
綾人く~~~ん!? えっ、今……付き合おうって言ったの!? 私の聞き間違い!? えっ!? えっ!? ええっ!?
「俺も星宮と付き合いたい。だから付き合おう!」
……付き合おうって言ってるぅぅぅぅぅぅ!!
「うん! これからよろしくね! 綾人!」
「こちらこそよろしく。星宮」
ガーン……。綾人くんと星宮さんが……カップルに……。綾人くんのお嫁さんになるのはこの私……。綾人くんのお嫁さんになるのはこの私……。綾人くんのお嫁さんになるのはこの私……。綾人くんのお嫁さんになるのはこの私……。綾人くんのお嫁さんになるのは――。
「あっ! そうだ! 綾人、今週の日曜日って予定空いてる?」
「今週の日曜は~……空いてる」
「じゃあデートしよ!」
で、でで、でででで……デート!?
「で……デート!?」
「いいじゃん! 私たち付き合ったんだし!」
「……確かにそうだな。でも、どこでデートするか決めないと――」
「それならもう決まってる」
「速っ!!」
「あっ、そうだ。綾人、マイン交換するからスマホ貸して」
「あ、あぁ……」
え~、いいな~。私も綾人くんとデートしたいな~。綾人くんにあーんをしてもらったり……。頭を撫でてもらったり……。あとは……デートの帰り際にハグとか……キスをしてもらいたい!
「はいこれ。デートの内容はマインで連絡するから」
「わかった」
「それじゃあまた明日、学校で」
「あぁ、また明日」
綾人くん、帰っちゃった……。ん? 星宮さん、なんでずっと立っているんだろう?
「アハハハハ……」
えっ……今、星宮さん……笑った? ……そ、そんなはずな――。
「アハハハハハハハハハハハハハハ……!!」
な……なんで……笑ってるの?
私は笑っている星宮さんを見ていると、謎の恐怖心に襲われて体が震えだした。
「ほんと……男ってバカね。私が本気でボッチ飯をしてる陰キャなんかに惚れるわけないじゃない」
星宮……! 綾人くんのことを……!
「あのカモには、デートの日に前から欲しかった服を買ってもらお! そしたらあとは……適当にバイバイすればいっか!」
綾人くんのことを騙しやがって!
――絶対に許さない!
私は星宮を睨みつけてその場を去った。