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3/12

ボッチくんに恋の天使が舞い降りたそうです

「あんたを騙せてよかった~。だって……前から欲しかった服を全部買ってもらえたからね!」


 ……そっか。だからあの時、玲奈(コイツ)はわざわざ俺の腕に胸を押し当てて、おねだりしてきたのか……。

 クラス一の美少女と付き合って、たった3日でこれかよ……。


「だから今日でこの関係はおしまい。わかった?」


 俺はベンチから立つ。


「当たり前だ。お前のような悪女と付き合うなんて二度とごめんだ!」

「……はあ? 誰が悪女だって? 誰が悪女なのかもう一回言ってみろ!」

「お前だよ……。星宮玲奈! お前のことを俺は……悪女だって言ってんだよ!」

「……死ね」


 すると玲奈は突然、俺の股間を蹴ってきた。


「ガッ……!?」


 俺は股間を押さえて地面に横倒しになる。


「この私を悪女と言いやがって! 死ね! 死ね! 死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!


 玲奈は何度も俺の腹を蹴ってきた。


 俺は「ゴホッ……ゴホッ……」と咳き込む。


「謝れよ! この私に対して悪女って言ったこと、謝れよ!」


 ……サイコ野郎が。……アハハハ! だったら俺だって……!


「俺がお前に謝る? アハハハハハハハハ……! 笑わせんなよ」

「はあ?」

「サイコパス悪女に謝るぐらいなら、俺は死んだ方がマシだぜ! アハハハハハハハハハハ……!」

「……あっそ、なら死ね!」


 そう言うと玲奈は、再び俺の腹を何度も蹴り続けた。


「────オエッ」


 俺は何度も腹を蹴られたせいで、(すさ)まじい量のゲロを吐いた。


「汚な……」


 玲奈は俺の腹を蹴るのをやめて、呼吸を整えている。


「足()った……。おいバカ! 一応忠告しておくけど、もし今日の出来事を誰かにチクったら……あんたを死に追いやるから」


 そう言って玲奈は、家に帰って行った。


()ててて……」


 俺は腹を押さえながら立ち上がり、ベンチに座った。


「…………騙された俺がバカだった。イケメンでもなければ、運動神経も偏差値も高いわけでもない……友達が作れなくてぼっち飯をしてる俺なんかに、玲奈(アイツ)が本気で好きになるはずないよな……。アハハハハ……。何してんだよ……俺」


 なんかもう生きるのが辛くなってきたな……。今なら死んでも悔いはないし……。


「もういいや……自殺しよ」


 すると背後から「死んじゃダメ」と少女が囁いてきた。


「えっ……?」


 俺は後ろを振り向いた。


「…………どうしてここに!?」


 そこに立っていたのは――学年一の美少女と呼ばれている、仁井名(にいな)リコだった。


「篠垣綾人くん、今日君が死んでしまったら、私が困るの」

「えっ……。仁井名さん、何を言って――」


 すると突然、仁井名さんは――俺の唇にキスをしてきた。


「!?」

「――だって君は、私が初めて一目惚れをした相手なのだから……」

「つまり……仁井名さんは俺のことが好きってことか?」

「うん。そうだよ」

「……そっか。ところで仁井名さん――」

「リコでいいよ」

「……それじゃあリコ、お前に聞きたいことがある」

「何?」

「……どうしてお前はここにいるんだ?」

「それはー、あー、えっと――」

「お前……玲奈(アイツ)()()だろ」

「ええっ!? ち、違うよ!」

「なら、何故お前はここにいる?」

「そ、それは……実は私、綾人くんのことを一目惚れした日から……毎日、綾人くんが家に帰るまで尾行してたの!」

「…………すまないがリコ、俺の聞き間違いかもしれないから、もう一度言ってくれないか?」

「恥ずかしいからやだよ!」

「キスする方が恥ずかしいだろ!」


 てことは、本当にリコは俺のことが好きなのか……。だけど玲奈(アイツ)に騙されて裏切られた後だから、あまり嬉しく感じないなぁ……。


 それにしても、まさかリコが俺のことを尾行していたとは…………ん? 待てよ。俺のことを尾行していたってことは……。


「なぁリコ、俺のことを尾行してたなら、お前も見てたよな? 玲奈(アイツ)が俺に暴力を振るっていたのを……」

「もちろん見てたよ。……綾人くんには本当に申し訳ないと思っているんだけど……私、知ってたの」

「何を……?」

「星宮玲奈が…………いや、あの外道な女が……綾人くんを騙していたことを……」

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