ボッチくんに恋の天使が舞い降りたそうです
「あんたを騙せてよかった~。だって……前から欲しかった服を全部買ってもらえたからね!」
……そっか。だからあの時、玲奈はわざわざ俺の腕に胸を押し当てて、おねだりしてきたのか……。
クラス一の美少女と付き合って、たった3日でこれかよ……。
「だから今日でこの関係はおしまい。わかった?」
俺はベンチから立つ。
「当たり前だ。お前のような悪女と付き合うなんて二度とごめんだ!」
「……はあ? 誰が悪女だって? 誰が悪女なのかもう一回言ってみろ!」
「お前だよ……。星宮玲奈! お前のことを俺は……悪女だって言ってんだよ!」
「……死ね」
すると玲奈は突然、俺の股間を蹴ってきた。
「ガッ……!?」
俺は股間を押さえて地面に横倒しになる。
「この私を悪女と言いやがって! 死ね! 死ね! 死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!
玲奈は何度も俺の腹を蹴ってきた。
俺は「ゴホッ……ゴホッ……」と咳き込む。
「謝れよ! この私に対して悪女って言ったこと、謝れよ!」
……サイコ野郎が。……アハハハ! だったら俺だって……!
「俺がお前に謝る? アハハハハハハハハ……! 笑わせんなよ」
「はあ?」
「サイコパス悪女に謝るぐらいなら、俺は死んだ方がマシだぜ! アハハハハハハハハハハ……!」
「……あっそ、なら死ね!」
そう言うと玲奈は、再び俺の腹を何度も蹴り続けた。
「────オエッ」
俺は何度も腹を蹴られたせいで、凄まじい量のゲロを吐いた。
「汚な……」
玲奈は俺の腹を蹴るのをやめて、呼吸を整えている。
「足痛った……。おいバカ! 一応忠告しておくけど、もし今日の出来事を誰かにチクったら……あんたを死に追いやるから」
そう言って玲奈は、家に帰って行った。
「痛ててて……」
俺は腹を押さえながら立ち上がり、ベンチに座った。
「…………騙された俺がバカだった。イケメンでもなければ、運動神経も偏差値も高いわけでもない……友達が作れなくてぼっち飯をしてる俺なんかに、玲奈が本気で好きになるはずないよな……。アハハハハ……。何してんだよ……俺」
なんかもう生きるのが辛くなってきたな……。今なら死んでも悔いはないし……。
「もういいや……自殺しよ」
すると背後から「死んじゃダメ」と少女が囁いてきた。
「えっ……?」
俺は後ろを振り向いた。
「…………どうしてここに!?」
そこに立っていたのは――学年一の美少女と呼ばれている、仁井名リコだった。
「篠垣綾人くん、今日君が死んでしまったら、私が困るの」
「えっ……。仁井名さん、何を言って――」
すると突然、仁井名さんは――俺の唇にキスをしてきた。
「!?」
「――だって君は、私が初めて一目惚れをした相手なのだから……」
「つまり……仁井名さんは俺のことが好きってことか?」
「うん。そうだよ」
「……そっか。ところで仁井名さん――」
「リコでいいよ」
「……それじゃあリコ、お前に聞きたいことがある」
「何?」
「……どうしてお前はここにいるんだ?」
「それはー、あー、えっと――」
「お前……玲奈とグルだろ」
「ええっ!? ち、違うよ!」
「なら、何故お前はここにいる?」
「そ、それは……実は私、綾人くんのことを一目惚れした日から……毎日、綾人くんが家に帰るまで尾行してたの!」
「…………すまないがリコ、俺の聞き間違いかもしれないから、もう一度言ってくれないか?」
「恥ずかしいからやだよ!」
「キスする方が恥ずかしいだろ!」
てことは、本当にリコは俺のことが好きなのか……。だけど玲奈に騙されて裏切られた後だから、あまり嬉しく感じないなぁ……。
それにしても、まさかリコが俺のことを尾行していたとは…………ん? 待てよ。俺のことを尾行していたってことは……。
「なぁリコ、俺のことを尾行してたなら、お前も見てたよな? 玲奈が俺に暴力を振るっていたのを……」
「もちろん見てたよ。……綾人くんには本当に申し訳ないと思っているんだけど……私、知ってたの」
「何を……?」
「星宮玲奈が…………いや、あの外道な女が……綾人くんを騙していたことを……」




