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かつての友人の死に思う

胸糞悪いと、思います。


胸につかえてることを、吐き出しただけです。




 数年前になります。

 疎遠になっていた、かつての同級生で友人だった男が自殺しました。

 彼の死を知ったのは会社の同僚からの電話でした。出身が同じ町の2つ年下の同僚から、シフトで休みの私に電話がかかってきて、初めは顧客関係の話しだろうかと、運転中の車を停めて、出たんです。

 「愛猫~、田中(仮)って知ってる」

 「中学の同級生だね、卒業以来、成人式であったきりだけど、どうしてんのかな~。田中(仮)がどうしたの」

 「今日の信毎のお悔やみ欄に載ってるけど」 

 

 時が止まる思いがして、嘘だろと返したものの、新聞に載っていた名前は確かに私の同級生だったんです。

 それから、同級生で連絡先を知ってる奴に片っ端から連絡して、どうやら自殺だったことがわかったんですが、そもそも、地元に残っていた同級生たちでも、彼が地元にいることすら知りませんでした。皆、東京で働いていると思っていたんです。


 彼との思い出は中学時代のものばかりです。

 私の通った中学は当時、上級生が荒れていて、どのくらいだったかと言えば、廊下や体育館を自転車やスケボーが走り回る。

 そこかしこで先輩がタバコを吸ってる。

 注意する先生が「火の始末はちゃんとしろ」とずれたコメントしてる。

 とそんな感じで未開の地でした。

 その上、私のクラスは一部の女子生徒のせいでいじめが横行して、3人もの不登校を出し、私もいじめのターゲットでした。

 そんな中、彼はクラス内で私の友人でいてくれた数少ない人物の一人でした。幸いにして、クラス外ではそこそこ友人のいた私は孤立することはなかったのですが、それでもクラス内では彼との思い出は多かったのです。


 そんな彼との思い出に先輩からの呼び出しがありました。

 実は私は不良の先輩たちに目をつけられていました。

 上級生が荒れていたため、私の学年では一年生のとき、ほぼ全ての生徒が制服のワイシャツのボタンを上まで閉め、男子は詰襟学ランだったんですが、詰襟のホックまで閉めてました。不良たちに絡まれないために(笑)

 私はそれが馬鹿らしいし、物理的に息苦しかったので無視してたんです。それが気にくわなかったクラスメートの男子に私の通学カバンは1ヶ月もしないうちにぺったんこに潰され、付いている校章を剥がされました。

 不良スタイルに変貌したカバンに不良より前に先生から呼び出し喰らったんですが

 「壊した奴等に弁済させるなら、買い換えるが、そうでないならこのまま通う」

 と言い切ったため、先生方は何も言わなくなりました。ただ、担任の先生だけが「すまなかった」と謝ってくれて嬉しかったのを覚えています。

 そんな私は見事に不良さんにも目をつけられて呼び出し喰らったんですが、全部、無視してたんですよ、面倒だから。今思うと、これだけ協調性皆無ならいじめられるわって思いますね(笑)

 で、ある時、彼も呼び出し喰らったんです。

 「愛猫くん、俺、先輩の○○さんから呼び出しされたんだけど、怖いからついてきて」

 「○○さんって、誰」

 「不良の怖い先輩だよ。愛猫くん、よく呼び出しされてるんでしょ」

 「全部、無視ってるけどね。無視ればいいよ、何もしてこないから」

 「無理だよ。怒って襲われたらどうすんだよ」

 

 そう言って怯えてる彼を見ながら、本当に襲われたら、俺ならボコボコにされても最悪一人は道連れにやり返してやるって考えてるとは言えず

 「なんで呼び出されたの」

 って聞いたんです。神経質で臆病なパソコンおたくの彼が不良に目をつけられる理由が良くわかんなかったんですね。

 「俺も良くわかんないけど、メンチ切ったって言われた」

 「マジで言う人いるんだ。それ怖くて目を逸らしただけでしょ」

 「まあ、そう」

 

 もう、完全にアホらしくなって、ただの言いがかりだし、謝れば大丈夫って言ってついてったんです。

 そしたら、5~6人いて、どんだけ暇人なんだと。

 彼はずっと謝ってて、向こうの頭っぽいのが

 「もういいわ、帰っていいぞ」

 って、言うの聞いて帰ろうとしたら、

 「お前残れや」

 って言われたんで、ついに一人道連れにぼこしあいかってワクワクしたんですが

 「なんで無視すんだ」

 とか、訳わかんないことグダグダ言ってくるんで、ひたすら

 「サーセン」

 って言ってたら許されました(笑)

 あまりに堪えないから面倒になったんでしょうね。


 「お前、すごいな」

 って、彼に言われました。

 そのあとも、色々と彼には助け助けられて中学時代を過ごしたんですが









 なあ、地元にいたんなら、なんで声かけてくんなかったんだよ。

 あの時の不良なんて全然怖くなかったけど、声かけてくれたじゃん。

 修学旅行でお好み焼き焼き損ねて、不味そうに食ってるお前に、俺、半分あげたよな。

 あんとき、嬉しそうに いいのって言ってくれたじゃん。

 なんでさ、こんな大事なこと、いいかなって言いながら相談しに来てくんないんだよ。

 そりゃ、中学出てからは疎遠になってたけど、成人式のとき、なんかあったら連絡くれって言ったじゃん。

 連絡先わかんなくても、俺なら大概の奴にきけばわかるはずだから、どこにいるとかさ。


 聞いてくれよ。もう遅いんだけどな。



 また、バカやりたいんです。

 真っ赤な顔しながら、小刻みに体を震わせて怒ってるあいつを笑いながら、一緒にバカやりたいんです。


 なあ、そっちは良いとこか、思い出話持ってくから、今度はお好み焼き、焼けるようになっててくれな。ご馳走になるから。





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― 新着の感想 ―
[良い点] お悔やみ申しあげます。彼の人生(天国の)に、少しでも、光が射すことを。
2021/11/08 02:44 退会済み
管理
[良い点] 合掌しか出来ません
[気になる点] 沈みきって死ぬのは良くない!!
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