デスペラード編 第39章〈ならず者Ⅸ〉
毎週日曜月曜のどちらかで投稿させていただいております。
面白かったり興味があれば星やブックマークをしてお待ちいただければ幸いです。
その他の詳細は後書きにて書きますそれではお楽しみください
ガハハッハハ!!
暗がりの中、ガサツな野太い笑い声に私は意識を覚醒させる。
(こ、ここは?)
未だに朦朧とする意識の中、私は自身が縛られている事に気づく、口は塞がれては居ないが声を出しても意味はないだろう。
(魔法は…うそ!?)
無詠唱の魔法は多少時間を使えば使えるようになったとはいえ、戦闘では時間がかかり役には立たない、だがこの様な状況であれば声を出さない無詠唱はかなり役に立つのだが魔法の発動が強制的に止められた。
「無駄よ、ここでは魔法はおろか、立つことさえ出来ないわ、ここは無魔の牢獄よ、諦めなさい…」
「だ、誰ですか?!」
「こっちよバカね…耳は聞こえてるでしょ?まぁ魔力がない状態じゃ聞こえ方も多少違うか…」
辺りをキョロキョロとするとぼろ布一枚の女性や幼い子供のエルフや獣人が私みたいに縛られ拘束されていた。
その内の、周りの女性たちよりも一回りも二回りもぼろぼろな布を着た女性がこちらを見て呆れた顔をしているのを暗闇になれた瞳で確認をして、この人が話し掛けて来たのだと分かった。
「こ、この部屋には魔力が、精霊達がいないと言うんですか?!そんな事…」
「あり得ない事はないでしょ?疑似勇者さん?」
ぼろぼろの布の女性は〝貴女はこれ知っているわよね?〟と言わんばかりの顔でこちらを見ているのに気付いて、思い当たる節があった。
それは疑似勇者が使用する犯罪者の牢獄に付与する時や、大型魔獣を捕獲する際の檻に付与されている、魔法無効の付与術内に居るときと同じ現象だと気づく。
「これは…だって…疑似勇者だけの…」
これは疑似勇者騎士団が生み出したあらゆる魔法を無効化する術式、東にある島国の魔術師、陰陽師が使用する陰陽道術や南に位置する村に伝わる呪術師達が使用する呪術など、色々な物を組み合わせた騎士団のオリジナル魔法なのだが、こんな森の奥の山賊が使用できるほど簡単な代物ではないはずなのだ。
「もうそろそろ思い出してもいい頃だと思うわよ」
その言葉を聞き私はここに連れてこられた時の、気絶する前の光景を鮮明に思い出す。
「う…そ…これって騎士団が関与してるの?…」
「当たりよ…」
私の言葉を裏付けるように、エルフの女性は全てを諦めた顔で頷き肯定する。
「そんな!だって!!」
「喚かないで、今貴女が無事なのは扉の向こうで貴女の同僚ともう一人の子が相手をしてくれているから、貴女の声でアイツ等がこっちに関心を持ったりしたらまた私は…だからこっちに意識を向けられると嫌なのよ!やっと解放されたのに…もう一度あんな目には会いたくない…」
その顔からは恐怖や屈辱、そして今の現状への絶望ですべてを諦めている人の顔がそこにはあった。
見覚えのある顔…
子供の頃によく視たことのある顔…
(昔の私と同じ顔…)
「だい…」
大丈夫そう声を掛けようとした私の言葉を遮り淡い光が差し込んでいる扉がガチャリと音をたてて開いた。
「声がすると思ったら…成る程、起きてたのか」
深い青色の髪をした騎士団の鎧を見にまとった男が扉から現れる、しかし私はその扉の奥で繰り広げられている光景になぜ先ほどの女性があそこまで怯えていたのかを理解した。
「ングッ…い…やぁ……」
「う…ぁぅ…あ…がぁ…」
扉の奥ではビシュウと幼い獣人の女の子が、汚い格好の男達に代わる代わる犯されている光景が私の目に映り、吐き気を催し。
「おっと見せるつもりはなかったんだがな、新入りの嬢ちゃんは妖精付だ、俺等は悪いようにはしねぇから安心しな!今回はアイツ等がエルフをまた抱きたいってんでそこの女の回収と、メインは嬢ちゃんの様子の確認な!そんじゃそいつ連れて行っていいぞ!」
青色の髪の男の言葉に
「待ってました!!」
と三人の男が部屋に入ってくる。
「いや!もうやめ…新しい子が入ったじゃない!その子でお願いよ!」
「俺等は人間を抱き飽きたんでね、幼女趣味もねーしてめぇの壊れる顔が見たくってね!」
「いやだ!やめてお願い…いいえお願いしますどうか!!お願い…します」
プライドが高く気高いとして有名なエルフが地面に頭をつけ泣きながら懇願する
「わ、私が相手をしますからどうか!!彼女を助けてあげて!」
エルフの彼女のそんな光景を見て居てもたってもいられなくなった私は男達の前に這いずって行きそう叫ぶ
「言ったろ?俺等は人間の女を抱き飽きたって、それにそんな事をしたら頭に起こられらぁ!ってな訳でこいつはつれてくぜ頭!!」
しかし男達はそんな私の言葉に耳を貸さず彼女を担いで扉の向こうへといってしまう
「嬢ちゃん、自分で何言ったのか分かってんのか?臭くて小汚ない好きでもない男に見ず知らずの亜人の為に代わりに体を売るって?」
「そ、そうよ!彼女だけじゃない三人を解放して!代わりに私が…」
「アハハハハハ!いい度胸だな嬢ちゃん!」
私の言葉を聞き青色の髪の男は右手で顔を覆うようにして大きな笑い声をあげる
「な…何が可笑しいの!…っ!?」
私がそう声を上げたとき男は私の髪を引っ張り扉の向こうをよく見えるように顔をそちら側に向けさせる
「見てみろよ!!あれをお前がやる?冗談はよせ、それにな?あそこで犯されているエルフのバカ女は最初お前と同じことを言って獣人のガキを助けようとしてたんだがな、少しアイツ等がいじめたら私だけは助けてって言い始めてよぉ!エルフ女の代わりにやって来た女にアイツ等が目移りしたら助かったとほくそ笑んでやがった屑だぞ?本当に守るかちがあるのか?!ちゃんとその何もねぇ脳ミソで考えてみろ!!」
見るにも耐えないおぞましい光景に私は今の自身の無力さに打ちひしがれ、彼女達を救えない無力さと自身の弱さに、色々な感情が私の中で渦巻き涙を流し吐き気が限界に達して私はその場で吐き出した。
「きたねぇな!?まぁ嬢ちゃんも俺等がどんな奴かは多少は分かったんじゃないか?」
「ど、どうじ、でごんなごど」
喉の焼けるような痛みと、止まらぬ涙で自分自身にも聞き取れぬ声で目の前の男に私は疑問を投げ掛ける
「金になるからさ!亜人や嬢ちゃんみたいな珍しい人間、魔獣なんかも売れるもんは全部売る!!それにな!何よりも俺が楽しいそれが一番の理由だ!!」
私の見たこともない邪悪な笑みで男はそう語る
(そうか、この人は第五の人…)
心当たりのある騎士団、自らの欲求だけを追求する騎士団の荒くれもの達の巣窟、ピュートンさんに聞いたことのある常識が通じない相手、彼等がどうしてこうも自由でいられるのかピュートンさんは不思議に思ってたが次の彼の台詞ですべてが分かった。
「俺がどの団員か分かったみたいだな!俺が何でこうも自由なのか知りたいか?!知りたいよな!今まで売ってきた亜人や女、ここにいるお前達も、ロブロムの貴族たちに売ってるから黙認されてるんだよ!ハハハ!ロブロムがなぜ未だに亜人の奴隷制度を止めないと思う?あの国は人間に飽きた亜人趣味の貴族が大勢いる!それにな国王だってその一人なんだよ!」
それを聞き私は絶望する
守ろうとした国の内部がここまで荒れ果て朽ちている現状に、その代表的な団員が居るのに見逃されている事実に、そして第一騎士団長のアルドレフがそれに関与している可能性、その義理の息子であるピュートンも例外ではない可能性に私が掲げた理想は私の中で全てが崩れ落ちていく音がした。
「おっとそろそろ腕輪の効果が切れるな、それじゃあと少しで時間だ、妙な気は起こすなよ?まっ起こしてもこの無魔の空間じゃ腕輪がなきゃ指一本動かすのもキツいか…」
そう言いながら男は部屋を後にする、閉じられた扉からは淡い光と、三人の悲痛な声が耳に届く
「ハル…私どうしたら」
この小屋の何処かで同じく囚われて居るハルに私は無責任にもすがろうとする、彼女なら何とかしてくれる、彼女なら、しかしそう思ったのも束の間、私の目にはあの光景が飛び込んでくる
(もしハルもあんな目に合っていたとしたら…)
そう思ってしまったら嫌な想像がどんどんと膨らむこのままではきっと自分もあの三人のようになるだろう、泣いて許しを求めようが聞き流され壊れるまでオモチャにされる未来を私は想像してしまう
私は頭を降りそんな考えを払い飛ばす、だってここには私よりも不安をか変えている彼女達が居るのだ、誰の救いも望めずこのまま売られて、罪もないのに奴隷にされてしまう彼女達にそしてハルの無事を私は祈る
(誰か…皆を助けて、私じゃもうどにもならない…この際私が助からなくてもいい、ハルをこの子達をどうか!お願いします…神様…)
「やっと聞こえた!」
その聞き覚えのある声に私は涙を流し声にならない声で助けを求める
「だずげで…ぐださい!!」
「もう大丈夫だよ!助けにきた!」
その声の先には、昨日この森で出会いそして別れたはずのバルドさんの笑顔があった。
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「精霊達のざわつく声がする」
バドンはフラウ達と別れてから盗賊のアジトを探し回り奔走していた。
目星のつけていた場所はすべにも抜けの空で、盗賊達が移動した後だったのだ。
「予想外の事が起きたからしょうがないけど…それにしてもあれは…」
目星のつけていた洞窟の中には檻や簡易的な小部屋があり隠蔽されていたがそこには精霊達が近寄れないように施された後があった。
(あんな魔法盗賊に出来るのか?高度な魔方陣の痕跡が見てとれたし、魔法だけじゃなくて色々な術式が使われてた、あれはなんだったんだ?)
そんなバドンは一抹の不安を抱える、相手がただの盗賊だんではない可能性、そして先程から聞こえる精霊達のざわつく声がよりバドンを不安にさせる。
〝助けて〟
そんな時だった。
精霊が助けを呼ぶ声がする、いや正確には精霊を使い誰かがバドンにいやこの周辺の誰かに助けを求める声がバドンは聞こえた。
「これは…なんっ!?」
初めての現象に戸惑っていると強烈な負の感情が精霊達を魔力を通ってバドンの中に入っていく。
「この感覚は…」
バドンは自身が膨大な魔力を手に入れた当時の感覚を思い出し、そそしてバドンはすべてを理解し、彼の顔付きは深くそしてどす黒く憎悪のこもった顔を浮かべて、精霊の嘆く場所へと走り出した。
遅くなり申し訳ないです!
筋トレしてたら思いっきり手首やってしまって…へへっ
ってな訳でどうでしたか?今回は下多めでしたね。
そうだ!普段優しい人が怒ったときって怖くないですか?なんかすごい厚があるって言うか何でしょうねあれ…
そして次回はデスペラード編の最終手前のお話です!!後2、3話でデスペラード編終了で新章突入ですお楽しみに
ではまた次回バイバーイ




