デスペラード編 第38章〈ならず者Ⅷ〉
毎週日曜月曜のどちらかで投稿させていただいております。
面白かったり興味があれば星やブックマークをしてお待ちいただければ幸いです。
その他の詳細は後書きにて書きますそれではお楽しみください
バルドと別れ半日が過ぎ、フラウ一行は休憩を取っていた。
「そう言えば昨日、カビタ先輩は私とヤった後どこ行ってたんですか?寂しかったんですよ~一人で寝るの!」
ビシュウはフラウの反応をチラチラと伺いながら、恥ずかしげもなくカビタにそんな話題をふった。
「今する話じゃないだろ?帰ったらたっぷり教えてやるから別の話題にしよう!」
少し焦ったようなカビタの反応にフラウの横にいたハルは何かを感じ取った様で、彼女に耳打ちで何かを囁いている。
(不味い、妖精は悪意に敏感だ、このバカ女の所為で俺の計画がおじゃんになる!早いとこ黙らせないと!)
「もしかして気持ちよくなかったですか~?だから一人でヌイてたとか?そしたら私少しショックです~」
カビタのそんな思いも知らずにビシュウはどんどんと勝手に下世話な話を広げようとする、彼女がその話題を広げようとする度に、カビタは冷や汗が出てしまう。
カビタが今やろうとしているのは、フラウとその契約妖精のハルを捕獲することだった。
この森で最近小銭稼ぎの為の人身売買で亜人を捕獲している彼の先輩が現在この付近に居て、その人にフラウを売り飛ばす為に、昨日カビタはビシュウを抱いた後一人でこの先の少し行ったところに妖精用のトラップを仕掛け回っていたのだ。
しかしそれを知らぬビシュウはフラウにマウントを取るためだけにそんな話題を出しているのをカビタは知っていた。
だからカビタは余計にイラつき焦る、この計画がもし失敗したら、きっと朝に先輩の計画を変えた自分の首は繋がっていないかも知れないとそう恐怖しながら。
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(バルドさんと別れてから、カビタさんの様子がなんだかおかしい、ずっとなにかを気にしてそわそわしてる)
カビタの挙動が明らかに昨日までとは違い、何かを気にして注意力が落ちて居るようにフラウには見えた。
昨日、バルドに目の事を言われてから、帰りの際フラウはメガネを外し見やすくした状態で後ろから辺りを警戒していたのだが、カビタの周りの精霊がざわざわとカビタ同様に落ち着きがないように見えた。
(きっとこのメガネの事もバルドさんは気付いてたよね…じゃないとあんなことしないよね!)
フラウが今かけているメガネは、彼女の同期であり人間の中での親友であるアルシェが、彼女の健やかなる生活に為にと贈ってくれた特別なメガネで、名を魔力阻害眼鏡と言い、彼女が見ようとする時や集中する時意外は妖精の姿を見えなくさせる事のできるメガネだった。
それを知ってか知らずか、バルドは彼女を試すとき敢えて、彼女の顔を近くで覗いて調べていた、彼女に至近距離に置いた目に集中させてこの眼鏡の能力を解いて彼女の目の真実を見抜いたのだ。
そしてフラウが時々メガネを外すのは周囲の精霊の動きをなんのノイズも無しに見るためで、そのお陰でカビタの不振な挙動に気付けたのだ。
そして半日が過ぎ、休憩に入る頃、フラウの疑念はハルの一言で確信に変わる。
ビシュウの下世話な話が始まると急にカビタの挙動不審はより一層ました。
(普通の先輩なら彼女の話に乗っかって私が聞きたくもない話をペラペラと話すのに今日はやけに彼女の話しを終わらせようとしてるのはなんで?)
そうカビタに不信感を募らせたフラウに横に居たハルが耳打ちで二人に聞こえない様に彼女に伝える
『今ね、あの男から物凄い嫌な感情が伝わってきたからフラウは注意してね!』
ハルはカビタが良からぬ事を企んでいると、そう断言し警戒するようにフラウに伝える、フラウはこの森に入ってから感じるカビタのイヤらしい視線と今回の事を結び付け、この男は…と小さいため息を吐いた。
「さ、さぁ話はもういいだろ!早い所この森から出るぞ!」
そう取り繕ってももう遅くフラウやハルには彼には何らかの計画があることを念頭に起き慎重に足を進める。
ある程度森を進んだところでカビタから感じられる悪意がどんどんと増長し、そしてある木を越えた先でその悪意は危険だと判断できるほどだとフラウの目はそう見て立ち止まる
「お、おい!どうした?何でそこで止まるんだよ!」
「そうよお風呂に入りたいから早く来なさいよ!バカ女!」
しかし二人がそう言ってもフラウは何かを考えているようでそこから動こうとしない
「私とハルは別の道から行くので二人はどうぞ先に帰ってください…」
カビタを見据えてフラウがそんな事を言い始めビシュウはその言葉に「はぁ?!」と怒りを露にする
「何でだよ!こ、こっちからの方が早いし、俺は試験官だからお前らをちゃんと…」
「行くときは煩わしそうにしてましたよね?別に、帰るだけなんですから別行動でも良いですよね?」
カビタの言葉を遮り、フラウはそう言うと一方後ろに下がる。
「あんたホンット子供ね!!私あんたみたいなの大っキライ!!もう行きましょう!先輩!!」
ビシュウはフラウの態度に耐えかねたのか、カビタの手を引き先に進もうとするが、カビタは動かなかった。
「…めぇの…いだ…てめぇの所為だぞ!!バカ女!」
「きゃぁ!」
握っていた手を思いっきり振りほどかれ、尻餅を着いてビシュウは呆けてしまう
「せ、先輩?」
「てめぇが静かにしてりゃ今回の計画でこの女を消せた!!なのにてめぇは要らんことペラペラ喋りやがっててめぇの所為で俺の計画がばれた!そこで大人しくしてろ!《バインド!!》」
何が起こったのかビシュウは分からず、けれどもカビタの拘束魔法で彼女は指一本すら動けないでいた。
「やっと本性出しましたね?カビタさん…」
「うっせぇ!てめぇがさっさとこっちくりゃこんな手間かけなくてすんだんだ!!」
そう叫びながらカビタはフラウに斬りかかるが、フラウはそっと掛けていたメガネを外し、その攻撃を避ける。
「ちっ!!妖精が居るのはやっぱり厄介だな!」
《フリーズ!!》
《プロテクション!》
カビタはフラウが剣を避けれたのは妖精であるハルのお陰だと思っているがそれは違う、彼が攻撃をしたいと思う場所に精霊が道を作り速度をあげる補助をしていた為に彼女に見えてしなっているのだ。
焦るカビタは咄嗟に詠唱破棄で魔法を繰り出すが、それをハルは瞬時に止める
「くそ!!あの木さえ通ればてめぇなんて無力だったのによ!」
「うっ!!」
しかしそこは腐っても疑似勇者でフラウの目で追いきれない速度の剣撃を放つ、フラウはピュートンに鍛えられたその反射で何とかその攻撃を受け止める。
《ロックブラスト!!》
《ウインドウィップ!》
破裂して出来た散弾がフラウを襲うが、これまたハルが風の鞭で全てをはたき落としフラウを守る
「ああくそっ!!キリがねぇ!!急がねぇと行けねぇのによ!」
《我が意思に答え敵を迎撃せよシャドウドール!》
短い詠唱にすべての憎しみを込めカビタは影の人形を2体作り出した。
「オリジナル魔法!?」
『そこまで出来て何でそっちに行っちゃったの!!』
彼が生み出した独自の魔法に二人は驚く、オリジナル魔法は生半可な努力では作れない、彼がどれだけの辛い道を歩みオリジナル魔法を作れるほどに努力したのだろうか、しかし堕ちたカビタは二人の言葉を鼻で笑い飛ばす。
「はっ!てめぇには分からねーよ!どんだけ努力してもどんだけ足掻いても上に化け物が居る気持ちが!下から来る怪物達の声はてめぇには聞こえねーよ!!」
〝努力しても追い付けないのなら、努力しても実らないのなら、堕ちてしまえばいい、足掻くなよ休め、そんな堕ちた人間を拾うのが俺の趣味だ!〟
彼が疑似勇者に入り目的を見失った時、第五騎士団長が彼に言った一言を彼は思い出す。
「俺はてめぇ等みたいな天才がキライだ!壊れろ!天才!!」
その叫びは彼が召喚した影の人形に伝わり、人形は動き出す。
「こ、この動き!!」
『うそうそうそうそ!無理だって!』
「だろうな!!てめぇ等には勝てねぇ相手だろうな!」
2体の人形の動きに二人は見覚えがあった、その2体の動きはいつも訓練で見ていた攻撃と同じ軌道をたどり二人に迫る
「その2体は2体で一人の男を模倣してる!!てめぇ等もよく知るピュートン・ロードランの動きをな!!」
此方の攻撃は一切をいなされ隙を作られ攻撃され、一方的な戦いになるのがピュートンとのいつもの戦闘訓練で、フラウは彼に一度も勝った試しはなく、同期で既に疑似勇者の二人もピュートンには勝てていない。
その真実がフラウに重くのし掛かるあれがもし本当にピュートンを模しているのなら勝ち目は…
『フラウ!!しっかりして!どっちか一体を倒せば楽になるはず!』
ハルの言葉にはっ!とフラウは意識を引き締め直す。
「それができたらな!!」
しかしその人形の攻撃だけではなくカビタの攻撃も対処しつついけない状況はより二人を追い詰めていく
「ハハハっ!これで仕舞いだ!」
《ロックボール!!》
「な!」
ピュートンの動きを型どった人形の対応に追われ、フラウとハルは少しの隙をカビタに見せそこにすかさず彼は魔法で石の玉を打ち込んだ。
しかし打ち込んだ玉はフラウの体をすり抜け、その奥の木に当たり木をって砕け散った。
『陽炎って魔法は知ってる?貴方の敗因は永劫を生きる私を相手取ったこと、そしてフラウの目を甘く見たことよ!』
《ショックバインド!!》
「うがあああ…」
いつの間にかカビタの後ろに立っていたフラウとハルは彼を電流で気絶させ拘束した。
『作戦がちね!フラウ!』
「うん!」
そう彼女達は幾度となくピュートンと戦っているのだ、その癖をフラウは知っている、わざと相手を誘い打ち込む事をそれをカビタは利用することを。
だからフラウはハルに魔法を使用させずに、彼女のオリジナル魔法で好機を作ったのだ。
ピュートンの攻撃には相手を試す段階がありその隙に陽炎を使い偽物と入れ替わり背後を取った。
彼がもし本当のピュートンを真似ていたら勝ち目は無かったがピュートンが全力を出したのは後にも先にもテミスとアキレシスが疑似勇者に上がった時の腕試しの時だけなのだ、だからフラウは彼が知っているピュートンは誰かを試すときのピュートンだと推測できた。
「この人憲兵に付き出せばいいよね?ハル!…ハル?」
フラウが確認を取ろうと振り返ったときには既にハルの姿はなく辺りをキョロキョロしているといつの間にかカビタの姿もないことに気づく。
「憲兵だけは勘弁な嬢ちゃん!ここで第一や第二の団長に知られんのは不味いんだよ!」
「だ…れ…」
悪意も何もフラウの目には見えなかったどころか、ハルでさえも気付かぬ攻撃にフラウも倒れる。
「寝てな!んで目覚めたら悟りな!嬢ちゃんはもう売り物だってことに、ったくこいつは爪が甘いねまだまだ…」
カビタの尻を叩き、二人を担ぎあげハルを摘まんで青髪の男はそに場を去ろうとする
「おっとあんたも来てもらうよカビタのメス穴さん!」
「い、いや…」
ひゅるりと翻したかと思えば残っていたビシュウを気絶させ肩に担ぎ、三人を抱えて青髪の男はその場を後にした。
ああ…フラウが…つかま…
ってなわけで謎多き青髪の登場でフラウ大ピンチ!?
第五騎士団ってヤバイのしかおらんのやな…
まあそんなわけで読んでくれてありがとうです!
次回は…どうなるのかご期待ください!
ではまた次回~バイバーイ




