トーナメント編 第3章〈怪物〉
第2週の日曜から火曜
第4週の日曜から火曜
のどれかで投稿します....何回投稿かは後書きの方でお知らせいたしますツイッターもやてますどうぞヨロシク
「うおおおおおおおおおお」
とDのステージを見ていたであろう観客達は歓声を上げている声聞こえてくる....
(私には関係ない...“アレ”が何処まで勝ち進もうが、はたまた擬似勇者になろうが私には全く関係は無い...)
頭をクリアにして行く、そしてそのクリアにした頭を“彼”で埋め尽くす...
あれはまだ私と彼が婚約者じゃなく、そして彼が私の為に初めて剣技を見せてくれた時...彼の剣技を見て私は心打たれた。
その剣技はとても艶やかで、舞っているように踊っているように闘っていた。その光景を見た私は彼に無理言って剣を教えて貰ったっけ?
でもまだ彼の剣技に届かない...
控え室のあの時、彼は私の拳を受け流した、肋骨の一本でも折れれば良いのにって考えて放ったあの拳は、狙った場所には届かなくてそれでもいなしきれない力で彼は後方へと飛んで行ったけど、彼は思った通り無事だった。
二人で擬似勇者になるって約束したのに彼はあんな奴に負けた、いや違う彼はあいつの攻撃を全て見切ってたそれでも加護の壁の前には攻撃が届かなかった。
だから私は彼に見せなくちゃ....少しの間だけど私は一人でも大丈夫だからって所を、でも長い間一人は“もう”嫌だから後でこれが終わったら抱きしめて貰おう...私の愛しい愛する彼に.....
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Aのステージに上がった女性を見た観客達は静まり返っていた。他のステージではまだ戦闘が行われているのに誰一人そのステージから目が離せないのだ。
ステージ上に立った女剣士は水縹色の髪を一括りにして、妖しくなびかせながら戦闘の合図を待っていた。
「テミスねぇってさ、こう思うと本当に綺麗だよね?あの特徴的な髪色もそうだけど顔立ちが“整い”過ぎてるってか、なんかもう同じ女性として悔しいけど見惚れるちゃう....でもねなんだろ少し自慢したいなぁってなるあの人は私の兄の婚約者ですって!」
唐突に左隣の妹がそんな風に笑顔で喋りかけて来る。そんな言葉に嬉しさを感じながら
「だね...本当俺なんかが彼女と婚約出来たのかは不思議だよ!はは...どうせなら今も彼女の隣に立ちたかった...」
ステージ上に立つ彼女を見てバドンは悔しさを滲ませ、何故自分に加護が出現しなかったのかと奥歯を噛み締め彼女を見る
「おにぃなんかが弱気になんな!!来年同じ場所に行くんでしょ?もし来年が無理でも再来年!!この選抜を見届けて私と一緒にあの二人のとこに行こうじゃんか!」
ふふんっと無い胸を突き出して言う妹にふふっと笑って頭を撫でてやる兄はそれだけで勇気がもらえた気がした
「ほらおにぃ始まるみたいだよ!応援しないとね!」
「おう!でも再来年じゃなくて来年行ってやるよ!」
小さくそれでいて力強い返事に安心したのか妹はステージに目を戻す。
(ああ俺は何処までも頑張らないと行けなくなったな)
そう考えてバドンもまさに今始まるであろう大切な人の第一戦目が始まるステージに向き直る
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パンッと小さい破裂音と共に開始の合図がなる、Aステージに立った二人はいまだに睨み合ったまま
「グフフ...オデの相手はこーんな美人さんけ?そんな細い腕でオデに敵うはずがねぇ悪いがこの試合は貰っだでな!」
「そうね...確かに腕は細いわ、でもそれがどうしたの?もしかしなくても力が自慢なら私と勝負しようか」
「オデとお前さんでは勝負になんねーが!オデがそんなやすい挑発に乗ると思ってるなら大間違いだで!」
「あらそう、私は力勝負で普通に闘っても貴方に勝てる自信しか無いのだけど、ああもしかして怖いの?力勝負で負けるのが、貴方見た目の割に心はか弱いのね?」
目の前の少女に対し男は挑発を仕掛けたが乗ってくる気配はなく、彼女から逆に来た挑発も男は軽く流して思考する
(何故この女は力勝負しようとするだ?力関係の加護があるから?いんやそれはこっちの加護でも打ち消せる、それにこの体格差はどうあがいても無駄だと思うが...そんなリスク背負うより普通に闘って隙をついた方が勝算はある筈だで...狙いは?)
太った男は頭の中で現状の物事を整理し目の前の相手をしっかりと分析していた、この選抜も村組ではなく王都であった枠取り合戦でその頭脳を生かしてここまで来た。
「あなた見た目の割には頭使ってるのね?私と大違いみたいだし思考するタイプは厄介だからこっちから行かせてもらうわ!!」
相手が思考をして戦う相手だと悟ったテミスは男に向かって走っていく、一方で目の前から綺麗な女性が剣を抜き走ってくる様を見ていた男は、真っ向勝負の力押しで来たのかと少しガッカリして、相手の振り上げる剣を待ち構え腰にある大剣を引き抜き振り下ろした。
ガンッ!!!
と大きな音を立てて男の振り下ろした大剣の方が大きく弾かれる
「グッ?!オデの大剣を弾き返しただか?!」
驚きを隠せない様子で後方へと男は下がる、しかしそれを見過ごすテミスではない、思ったよりも男の振り下ろした大剣は重かったと感じたが想定の範囲内であり、彼女の次の攻撃が男に迫り来る
「グゥゥ!!オデが力押しで負げだ?!!!その細い腕の何処にそんな力があるだで!!魔法か??」
次に来た横振りを男は弾く、思わず口に出たそんな疑問を彼女は素直に答えた
「魔法?違うわよ?これは半分以上が加護の力、まあもう半分は自力だけど加護で強化されてるから貴方に勝ち目はないわよ?」
「馬鹿を言うな!!加護はこっちも持ってるだで!それで相殺されたとしたら残るは素の力、オデはそれに負けたっでが?!」
信じがたい事実を言われて男の中にある仮説が出来上がる、しかしその仮説はとてもじゃないが現実的ではない、その考えとは裏腹に目の前の少女は事もなく真相を明かした
「あら?貴方のその加護“一つ”で私の加護を相殺できると思ったの?ならお門違いもいい所...まあ普通は複数の加護持ちと戦うこと自体が珍しいから驚くのも無理はないけど」
目の前の彼女にそう言われて男は驚愕の表情を表に出す、彼が出した仮説は加護の複数持ち、それを裏付ける発言を彼女が言ったことにより動揺が走る、大体の人は加護を複数は持っていない。
複数の加護持ちで有名なのは勇者だがこれは例外、この世界だと聖女か有名どころは隣国のブルモスのSランク冒険者の一人、西の大国のローズローにも英雄と呼ばれる男が所持しているらしい、そしてこの国にも一人だけ、擬似勇者の現在の団長であるアルドレフ・ロードランが居るがそんな稀有な存在と同格な相手が今自分の目の前に立っているなどと誰が考えられるだろうか...
「考えは纏まった?それじゃまたこっちから行かせて貰うわね!!」
そうして彼女は駆ける、次々に迫り来る剣に防戦一方の男はジリジリと後方に下がっていく、体格差から侮った目の前の女性の剣技は、先ほどの力技とは違いまるで舞を踊っているかのような剣技に変わっているが見た目に反してどんどんと力の強さが上がっていく。
「グググゥ!!!!ごのままじゃ負げでしまう!加護が“二つ”あるからってここまでの差が出ちまうのか...」
そう吐き捨てながらも迫り来る剣撃に全ては対処しきれないまでも動けなくなる致命傷だけは避けつつ男は守りに徹している。
「残念ね、でも誇っていいわよ貴方は私相手にここまで頑張って耐えたんですもの!これでお終いにしてあげる!」
相手の男を後方に飛ばして距離を取りテミスは集中をする。
「まさか!!身体強化の加護だけじゃなくて魔法にも加護が使えるのが!させるわけねぇだよ!」
距離を取られた男は彼女の手の閃光の荒々しさを見て加護を魔法にも載せられるのかと慌てて詠唱を始めた彼女の方に走り出す、しかしその詠唱はさほど長くなくだがその詠唱に込められた力は強かった。
《彼を想う私の気持ちを精霊に捧ぐ!彼の願いは私の願い私の全ては彼の物!!!我らの敵を排除せよ!!》
【聖なる光】
“詠唱”に込められた“彼女だけ”の想いを取り込んで“精霊”はその魔法の補正をする、彼女の魔力を吸い取り彼女に魔力操作の一部を任せて世界の事象、その上書きを進める。
【魔法】それはこの世界の事象を大きく歪め、この世界にある《???》を改竄し対象者の、否ただ願う者へその願いの成就の為の代行手段として用いられる力
【精霊】願う者の想いを汲み取りそれを実現させる為の魔法の手助けをしてくれる良き隣人
今この二つが正常に彼女の願いを聞き届けて目の前の男に聖なる光の塊を放つ、男はその塊を剣で受け止めてそのまま飛ばされて場外に出てしまう
男が飛ばされた場外の煙が晴れていくと、片膝立ちになった男がよっこらせと立ち上がり大きな笑い声をあげステージに戻っていく。
「ハハハッオデの負けだでな!!剣技だけでなくそんな強力な加護を使った魔法まで撃てるとは...末恐ろしいでよ」
場外に出た男は清々しい気持ちでステージに戻り勝者のコールを待つ
「私の最初の相手が貴方で良かったわ、ああ勘違いしないで?私は貴方を認めてるの、貴方は確かに負けたけど私が居なければ貴方がこのブロックで一番強い人だったからね!それにこの大会で私の“三つ”の加護が通用するってわかったし...お礼を言わせて!ありがとう」
「三つ...だははははそりゃ勝てねぇでな!おめさんのあの詠唱の願い、相手さんにちゃんと届くといいな!!」
驚きの事実を告げられ、少しの間きょとんとした顔をした男だったがしょうがないと笑い飛ばし先程の彼女の詠唱を思い出しながら彼女の“願い”が叶うようにとそう彼は思った。
「ふふっありがと!私の詠唱は私の大事な人の願いで固めた私の宝物だから褒めてくれて嬉しい!」
そんな彼女の笑顔に男は少し幼さを感じ清々しい気分で自分の敗北コールを聞いた。
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「テミスねぇ初戦勝ったね!」
「そうだね...ふふっ」
そう嬉しそうにはしゃぐ妹の髪をわしゃわしゃと撫でながら今目の前で起きた闘いを振り返る
太った男を前にしても物怖じせず最初は力で押してそしてトドメに魔法を使ったあの闘い方、自分との稽古でも見せなかった新しい戦法、それにあの詠唱...確かに詠唱は精霊への供物としての役割ではあるのだがなんともまぁ恥ずかしい詠唱をしたものだ...テミスのあの詠唱を聞いてしまったからには来年は本気であの座を目指そうと彼は心に誓う
「ねぇおにぃ次の2回戦目から二人共勝つのが難しくなってくるんじゃない?アキレシスさんは詠唱破棄バンバン使えないだろうしテミスねぇは手の内見せちゃったし大丈夫かなぁ」
心配する妹に問われたバドンは頭に乗せていた手を再度ワシワシと動かす
「大丈夫!テミスは3つも加護持ってるしアキレシスもまだ全然余裕だろうしね!ただテミスとアキレシスのブロックに変な感じの人はいるから怖いけどね」
「変な感じ?どんな風に?」
妹の頭から手を離しバドンは待合室を思い出していた
待合室で食事を済ませた後少しの間談笑をしていた4人だったがバドンはその待合室にいる人の中にちょくちょく気持ちの悪い気配を感じていた、一人は女性もう一人は男性で両方ともフードを被っていて顔までは見えなかったが体格からして性別は間違いないだろう、しかしその二人から嫌なら気配を感じたのだ。
「なんかまとわりつく様な気持ち悪い感じがしてさ...それに何か人と違うような....」
「なにそれ人?じゃないって、ふふっまあ亜人の可能性もあるし亜人とかじゃない?」
笑いながら亜人だよ!と言う妹の言葉に何か引っかかりを覚えてただあれは絶対に亜人では無いと彼自身はそう思っている
「最初の方にフードの二人が居たから当たるとしても最後の方かな?アキレシスもテミスも最後だったから」
「そうなんだ!」
とまだまだあるトーナメント表を見てそう思うバドンだがしかし不安が心の中を埋めていく....
寝巻小唄です
ツイッター
@nemakigusa
後書きです!!そして報告です!!トーナメント編終わらんのでなんとか早めに進もうと日曜から火曜の間に頑張って出来るだけ投稿する事にしました!!!いやもうトーナメントええねんプロットではすぐ終わんのになんでこうなったかな〜謎です。というわけで!第4話第3章どうだったでしょうか?今回はテミスの初戦まあ戦闘シーンが前回は書けなかったので頑張って丁寧に書いてみましたがおかしい部分あればよろしくお願いします!!感想なんかもどしどしください!それでは次回でまた