デスペラード編 第30章〈孤独〉
毎週日曜月曜のどちらかで投稿させていただいております。
面白かったり興味があれば星やブックマークをしてお待ちいただければ幸いです。
その他の詳細は後書きにて書きますそれではお楽しみください
ずっと一人だった…
子供の頃からずっと私は一人、唯一の友達は私にしか見えない妖精のハルだけだった。
幼いころから私は虚空を見上げて何かを目で追っていたらしい、そんな子供だったから親から見たら気味の悪い子供に見えたのだろう、私には悪魔がついていると、私は何度も妖精が見えると説明したのに両親は聞き入ってくれない、それは仕方のない事だった。
妖精は人に姿を見せなくなっていたのだから…
でも私には彼女達を無視することはできなかった。
そして両親は私を屋敷の中に閉じ込め、悪魔祓いや神父などを呼びつけ何度もお祓いをしていた。
そんなものは彼女達に効果が無いのに…
ある日両親は私を他の子供と遊ばせ彼女達から遠ざけることを決めて、周辺の貴族を読んでお茶会を開いた。
しかし普通の子供の中に私なんかが入れるわけがなくて、皆に気味悪がられずっと一人ぼっちで…
いつしか私は彼女達を見ないように魔力阻害のある眼鏡をかけて過ごすようにと両親から言い渡され私は諦めたように両親に言われたことを守っていた時、私に話しかけてくれる子が一人だけいました。
「貴方妖精が見えるのよね?」
態度は偉そうだったけど私に対して初めて真っ直ぐ接してくれたことがうれしくて、彼女とアルシェとお友達になり、私は少しだけ変われました。
私達が15歳になりアルシェと一緒に成人の儀を行い神様に祝福された私の元に、疑似勇者騎士団第二騎士団長のエレナ様がお会いになりたいと遥々王都から1日かけていらしてくださったいました
エレナ様は私の憧れ、王族の血を引きながら民や亜人に対する態度は同格の者を扱うようなそんなお優しい方で、彼女に憧れを持つ民も多いと聞いた事があり私は胸に期待を膨らませ待合室に入るとエレナ様だけでなく第一騎士団の副団長をやっているピュートン様の姿も見え少し緊張が走りました。
「初めましてフラウ嬢、私の名はピュートン・ロードラン、アルドレフ・ロードランが義理の息子にございます以後お見知りおきを」
彼はまるで上の階級の人間に対応するかのように私に丁寧な挨拶をしてきて、私は驚いて固まってしまいます
だって彼の家は侯爵家で私の家は子爵家だったのですから…
「気にしないで、これがピュートンさんなりの場の和ませ方だから、公の場でやられると困るけど…」
ジトッとした目でエレナ様がピュートン様を見る姿になんだかおかしくて私は小さく笑ってしまう、そんな私を見て二人もハハッと笑って見せて、二人のうわさとは違う姿に私の緊張もいつしかどこかに消えていて、そして二人は今回なぜ訪問に来たかを話してくれました
そして説明されたことは衝撃的だったのを覚えています。
私の両親や周りの人が悪魔だと怯えていた者は、害のない妖精であったことが証明されたのです。その理由は成人の儀にて私のステータスに妖精を見ることができる魔眼を持っていることが分かったからでした。後にこの説明を受けた両親は酷く後悔の表情を浮かべて私にすまなかったと謝ってくれましたが、私の心はそれでも二人を許せないでいました。
「っていうわけで君は悪魔付きじゃなくて妖精付き、妖精に愛された少女ってのが分かってねもしよければだけど君の力を疑似勇者騎士団に貸してくれないか?」
「も、申し訳ありませんが…お話が急で、少しだけ、二日ほどお時間をください」
その場では即答ができませんでした。
ここを離れることは私も願っていたことです、だって私にはハル以外にできた唯一の友達のアルシェの存在があったから…
「その話受けなさいフラウ!疑似勇者選抜を受けないで候補生に上がれる人はほとんどいないのよ?このチャンスを無駄にするの?」
「だって私一人じゃ何も…」
「ハルがいるでしょ?はぁ~あんたはいつもそんなんだから下に見られるのよ!ったく…貴女はこの話受けなさい絶対よ!?」
「でも…」
「でもじゃない!!貴女には言ってなかったけど今回の疑似勇者選別には私も出るの受かったらまた一緒だから、これでいい?」
そんな彼女の優しい顔を見て私はありがとうと返事を返すだけでした…だって彼女は本当は疑似勇者なんかに興味がなかったのですから…
彼女の夢それは魔法学園都市ガーデンに在籍し魔法を極めること、しかし私の我儘の所為で彼女はその夢を諦めてまで私の傍に居てくれようとした。
そんな彼女の為に私は入念に準備をして疑似勇者の候補生になったのに、私と同じ教官に付いた二人にあっけなく私は実力を抜かされてしまったのです。
初めの頃は二人の実力よりも私の方が上だったと思います、しかしそれはサポートをしてくれるハルのおかげ、そしていつしか私は私自身の力で彼らとともに並びたいと思うようになってしまい、ハルを呼ばずに戦闘訓練を行うようになったのです。
やはりというべきなのでしょうね、ハルがいない私では彼等の足元にも及ばない、私は初めの頃に持っていた少しの優越感を砕かれ絶望しました。
そんな私を置いて彼等は半年で疑似勇者に成り、今や騎士団の中でいいえこの国の中で知らない人がいないくらいに名声を高めました。
一方で私はピュートン様に教えをもらっているのに一向に上達する気配がありません。
「焦らなくていいんだよ、君には妖精達がついてる彼女達も君の力の一部だ、力を貸してもらったって誰も文句を言わないよ」
「はい…」
そんな優しい言葉を掛けてくれるのはピュートン様しかいません、他の候補生や疑似勇者の先輩方には妖精を封じられたら何もできない無能のレッテルを貼られ、ある噂が耳に入り私はお友達になってくださった皆様と距離を開けるようになりました。
その噂は私に気を使っている皆様、アルシェやスミスさん、テミスさんにアキレシスさんそしてピュートン様方が私を嫌い始めていると。
お友達の少なかった私はその真実を確かめることも出来ずずっと一人で抱え込んでいて…
そして昨日久しぶりに会ったテミスさんに言われたのです、大切な友達だからと、だから私はもう迷いません
「フラウさん今日はやけにやる気だね!」
「ええ、私もそろそろ大切なお友達と同じステージに立ちたいんです!!だからこれからは本気で行きます!!!おいでハル!!!!」
そうして私は疑似勇者最強と歌われるピュートン様に今日もお勉強させていただくのです。
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ドゴオオォォン
疑似勇者騎士団訓練所からただならぬ音が響く
「お疲れ様!今日はここまでこの後僕は用事あるから座学の授業に混じるなり休息をとるなりしていいよ!」
「あ、ありがとうございました…」
ボロボロの姿で訓練所から出てくるフラウの背後から足音を立てないように接近する人物はフラウの肩を叩こうとした時、それを彼女は反射で避けて驚かそうとした本人はバランスを崩して彼女の前に姿を出す。
「やるじゃないフラウ!3か月ぶりくらいね!」
「アルシェ!久しぶり!!」
アルシェの姿を見たフラウは瞳に涙を浮かべながら彼女に抱き着く。
「お昼一緒にどう?」
「うん…」
鼻声になりながらフラウはアルシェの提案を受け、二人は幼い頃の様に手をつないだまま食堂に向かう
「テミスから聞いたわよフラウ!アンタまた随分と落ち込んでたみたいじゃない!ワタクシも自分の事で今手一杯で何かしてあげられないけど」
「大丈夫だよアルシェ、もう平気だから!」
「あんたの事だからどうせワタクシが疑似勇者に成るって言った時みたいになってるんじゃないかって思ってね、杞憂だったみたいね」
「それってどういう事?」
フラウはアルシェに今でも負い目を感じている、自身が疑似勇者に誘った所為で彼女は自身の夢を諦めてしまったとしかしアルシェの次の言葉にフラウは驚く
「ワタクシ別に魔法を研究できればどこでもいいのよ、魔法学園だろうが疑似勇者だろうが、それにテミスさんやハルから聞く話だともうワタクシの夢の半分は達成してるらしいからもう気にしないでって事よ」
「え?え?」
「だーかーら!ワタクシの夢は精霊に好かれるようになる事!そして貴女をあの家から連れ出して一緒にこの世界を旅することなの!!言わなかったワタクシも悪いけどこんな事恥ずかしくて言えないでしょ?」
耳まで顔を赤くしながら「ここまで言わないと分かんないか!」とプイッとそっぽを向くアルシェをみてフラウはどこかおかしくて「フフッ」と笑い始める
「だ、だから話したくな…」
「ありがとうアルシェ!その夢実現させよう!私も頑張るから!!来週にはきっと私も試験合格するから!!」
アルシェの言葉を遮りフラウが彼女の手を取りながらそんなことを言う
「変わりましたねフラウ」
「みんなのおかげだよ!」
この場には疑似勇者候補生になった時の半年前の彼女はもういない、今ここに居るのは先を走っている二人の友人と目の前の初めて怖がらずに友達になってくれた友人、そして彼女を愛する小さき親友がいる疑似勇者を志す一人の騎士フラウ・ノーデルがそこには居た。
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「おう!!バルド!!今日の依頼は何やるんだ!!」
アラヴィス公国にある冒険者局の中でひときわ大きな声で緑色の髪の男性ディルフォードが一昨日Bランク冒険者になったバドン(偽名をバルド・アポロ)に話しかけていた。
「ディルフォードさん!今回はゴブリンが小さな村を襲撃したとのことでその討伐任務と、後は盗賊団幻影の風の調査ですね」
「しっかしよーギルマスもBランクじゃなくてAランクにしてやりゃいいのに何でBからなんだ?」
「それは…」
バドンが答えようとするとギルドの二階に続く階段の踊り場から声がかかる
「バルドが言い出したんだよ、Bランクの依頼を10点だけ成功させたらAランクに上げてくれってな」
「ギルマス!それに茨の…」
ギルドマスターと一緒に降りてきたのはSランクの冒険者試験が控えている茨の騎士だった。
「自分はギルドに関して素人なので流れを見る為にギルドマスターに掛け合ったんですよ」
「ふーん、んでギルマスはなんで茨と一緒に居るんだ?」
ふーんって…と先ほど聞いてきた本人に言われバドンは精神ダメージを少し受け驚きの顔でディルフォードに目を向けているが、彼の興味はもうそこにはなかった。
「少し話が合ってな、すまなかったな茨の用事は伝えたからもう行っていいぞ」
「報告ありがとうございます、それでは」
「おい待てよ!てめぇSランクになるからって調子乗んなよ!絶対追いついてやるからな!」
流石は嵐の狂犬ところ構わず噛みつくそバドンは感心しギルマスは頭を抱えていた。
「調子には乗れない、先日の戦い見事だったよ狂犬、私では彼の消える技の一撃を受ける事はできなかった、これからは師匠にもっと稽古をつけてもらうとするよそれじゃまた」
意外な対応をされディルフォードは「え?来てたのアイツ…」となんだか恥ずかしくなり顔を赤くさせる
「ディルフォードお前誰彼構わずもう噛みつくな、いつか手痛い恥をかくぞ」
そのギルマスの言葉に「…ウッス」とバツが悪そうな顔をして返事をするディルフォードみてギルド内は狂犬が子犬になった日と爆笑の渦が巻き起こった。
どうも寝巻です!読んでくださってありがとうございます!
本当は昨日投稿したかったのですが、色々不備が見つかり修正のため一日遅らせました。
連続投稿したかった~って思ったんですが実際見直しの際文字数多いとやる気が…
そして来週からはデスペラード編の終章が始まりますそこまで章は多くないですがバドンにとっての強敵やフラウにとっての強敵が出てくるかもしれないです…
おっとそれと本作の主人公は皆さま方で決めましたか?
バドン視点で主に進みますが、疑似勇者の二人の視点や今回のようにサブキャラの視点も増やしていきます。
この物語が薄っぺらい物にならないように努力しますので温かい目で見守ってください!
未だに大まかな舞台設定しか書かれていないですが、これも後々に詳細を説明することができるキャラで出てくるのでそこまでお待ちくださいではまた次回!バ~イ




