デスペラード編 第29章〈正体Ⅵ〉
2週間ぶりです詳細は後書きにて
みてくれてありがとうございます
「自己紹介はしたでしょう?!俺はバルド…」
そう答えようとしたバドンの言葉に鼻で笑って見せて呆れた顔を向けてディルフォードが喋りだす
「バルド・アポロだろ?俺が聞いてんのはそう言うことじゃねぇ、お前あの技は何処で身につけた?あれは俺が冒険者に憧れを持った技だ、踊るような鋭い剣技あの剣に憧れた、それだけじゃねぇお前が中盤から使い始めた姿を消す技、あれマナロストだろ?あの状態で動ける人間を俺は一人しか知らねぇが、その人だって一度使ったあとは相当な疲労をしてたし魔力の回復はマナポーションを飲んで回復してた、けどお前はどうだ?マナポーションを飲まず周囲から魔力を補充していた、あれが出来るのは宮廷魔術師の中でも優れた者そしてsランクの冒険者でも限られた者にしか出来ねぇ、剣術は達人クラス、加えて魔術も宮廷魔術師以上?ふざけすぎだろ?この国に何の用事だよ疑似勇者!!」
今このアラヴィス公国と、隣国ロブロム王国の間は険悪な雰囲気が流れていた。
理由はロブロム王国側の亜人に対する接し方の問題だけでなく半年前に発生した国境付近の新魔王騒ぎをロブロム王国は何を思ったのか、アラヴィス公国の策謀だと決め付け非難の声明を公に出したのだ。
そしてディルフォードはバドン、ここではバルド・アポロを名乗っている目の前の黒髪の青年を隣国ロブロムから送り込まれた疑似勇者だと思い込んでいるのだ。
「えっと~俺がもし本当に疑似勇者なのであればあんな派手なことしないと思いますけど?」
「それ以外にお前の存在に説明がつかないんだよ、ロブロムには潜入特化の騎士団が存在したはずだ、確かあれは…」
「第三騎士団、王の為だけに動く騎士団、主に他国、ギルド果ては同疑似勇者騎士団内部まで潜入し王に牙を向く存在の調査や片付けを行っている騎士団ですね」
「それだ!」
ディルフォードの言葉にバドンは即座に回答する、彼が夢見た騎士団の一つ、団長を務めるのは300年前に貴族になり今も尚疑似勇者を排出している名門貴族ローズ家、バドンの魔術の師匠、ロインズに関わりが深い家の現当主が団長を務めている。
「それならもっと地味にやりません?あそこまで注目されたら動きにくいですし」
「それもそうだな、じゃあ結局お前は何者なんだよ?」
「えっと長くなりますがいいですか?」
「お前の正体が分かるならな!」
そう言われバドンは夜明け団の4人に話した内容に肉付けしながら話をしていく
「そっか…国境付近の村で起こった魔王騒動、その当事者の血の女帝とその婚約者、お前はその婚約者から剣を教わっていたと」
「ええ、ですがあの日俺は体調を崩し家で安静にしてました、そして俺に剣を教えたそいつは魔王に…」
「お前以上に剣が扱えるって化け物だな、まあ疑いが晴れた訳じゃねぇが納得したよ、お前の剣の師匠の名前を聞いて」
バドンはディルフォードに死亡した自身を剣の師匠として名前を出し、彼はそれに納得した顔をして遠くを見つめ何かを思い出しながらため息を一つ吐いた。
「バドン・アファル・ポレン…成る程な、そりゃお前の剣は完成されてるわけだ、俺が冒険者に憧れた剣があるってさっき言ったろ?あれな、アファル・ポレンって言う冒険者が俺の村を救ってくれたときに見た剣技だったからだ」
「それって…」
「ああもう20年近く前になるな俺がまだ5、6歳の頃あん時はまだロブロムとの戦争の停戦前、戦争で貧困していた俺の村に魔物が襲ってきたときだったあの人が来たんだ」
そうして過去を懐かしむようにディルフォードが語りだす、バドンも知らない彼が生まれる前の父親の話を
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(いやだ…死にたくない…死にたくない…)
見渡す限りの火の海、魔物の群れが戦争で疲弊した村を襲い壊滅させるのにそう時間は掛からなかった。
残った俺は家族の遺体を踏みつけてまでも必死にその場から逃げようとしてた、子供の俺が逃げ切れるはずなどなく斥候の小鬼どもに捉えられ俺の命は風前の灯だった。
小鬼は俺の上に被さり、ナイフを俺の腹目掛けて突き刺そうと迫ったとき目の前の小鬼の首が跳ねられた。
「大丈夫かい少年?遅くなってすまない」
倒れている俺に優しい声音で語りかけた人物に俺はコクコクと瞳に涙を浮かべ頷く。
「強いね君は…後はおじさんがやっつけるから君は私の後ろにいなさい」
そう言ってその人は俺を守りながら村の魔物を討伐していく、その人の舞うように戦う姿をみて俺は子供ながらに綺麗だと感じた。
そうして助かった俺が冒険者を志すのは当たり前のことだった。
そしてその人物との二度目の出会い、8歳の頃に俺は冒険者になり5年掛けてcランクまで上がった時、丁度魔王の存在が懸念され始めロブロムとアラヴィスの戦争停戦協定が結ばれた時期だった、ある任務で再びその人物にであった。
何の変哲もないcランクの任務で、魔物に襲われた村に行ったときだった、俺は後に魔王になる魔物と偶然出会いそして死を覚悟したとき、昔見た背中が俺を守ってくれた。
「大丈夫かい少年?後はおじさんに任せなさい」
最初に助けられた時と同じような台詞を言いながらその人物は魔物と戦い、奥の手を使いなんとか撃退をする、その時に見せたのが後にバルド・アポロが見せた、目の前から姿を消す技だった。
「アファルさん無茶しないでください!この前も孤児を一人助けるために随分無茶をしたそうじゃないですか!?」
救援にきた隣国の騎士団員がそんな事を言っていた。
「しょうがないだろ?未来ある若者を助けたいだけだ、それに彼らが自分の息子だったらと思うと身体が自然にな」
後に知ったのだが俺を救ってくれた人物と話している騎士団員は後のロブロムの将軍第一騎士団団長アルドレフ・ロードランだった事に今でも驚く。
「ア、アファルさん助けていただき有難う御座います!」
「ん?少年に私の名前は言っていないと思うのだが…ああ先程の会話で!改めてアファル・ポレンだ!未来ある若者を助けられて良かった」
「俺はディルフォードって言います!アファルさんに助けてもらうのはこれで二度目です!」
「ん?そうか少年!数年前の村の子供か!大きくなったな!」
俺が言ったのは助けて貰った事だけそれだけでアファルさんは俺の事を思い出して、大きなその手で俺の頭を大雑把に撫でるそれだけで自然と涙が出て俺はその場で恥ずかしくも泣いた。
それが俺の恩人との最後の出会い、その後彼は魔王に挑み帰らぬ人になったと魔物との戦争の終結した戦場で聞かされた。
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「これが俺とアファルさんが出会った経緯だ、彼には息子が居たらしいが、そうか、息子さんも亡くなってしまったか…あの家系はつくづく魔王に縁がある…」
そう言ってディルフォードは唇を噛み締めながら拳を強く握る、自身がもっと強く、最前線で戦えていたなら恩人の彼を守れるくらいに強かったら、そんな感情が彼の中から溢れだすのをバドンは感じとる
「まだ大丈夫ですよ、あの家系はまだ途絶えてない、師匠が言ってたんですが妹が居ると、彼にはもう一人お子さんがいます彼女を全力で守りましょう!貴方はちゃんと強くなってますよ」
ディルフォードはその言葉に救われたように優しい笑みをバドンに向け「ありがとう」とそう返した。
「話が長くなってしまったな戻ろう、お前の事は一旦保留にするよ」
「まだ保留ですか?!あんなに語ったのに?!」
その反応にディルフォードは笑い、それにつられてバドンも困った表情で笑った。
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ザワザワ…
森が騒がしく音を立てる、ここは聖王国ダーハールムにある魔の森、ロブロムにある魔物の森と同質とされているがその実世界三大魔窟の一つに歌われる人が消える森
その奥地誰にも魔物にさえ認識されない様にポツンと一軒豪邸が立っている
「そろそろだよ、やっと会える」
「お父様どうしました?」
暗闇から真っ白な髪の毛を垂らしながら宙吊りの状態で美しい顔が現れる
「やっと彼に会えるんだ、僕と白織の宝物」
「お兄様が!もうそんな年月が廻ったのですね」
「ああ、長かった終わりなき旅路がもうそろそろで…七雪彼を迎える準備をしよう!!」
その豪邸は彼の一言で慌ただしくなる、七雪と呼ばれた女性はその特異な身体を使い屋敷の中を縦に横にと縦横無尽に歩き回り、屋敷の中に居る彼女の子供達に嬉しそうに知らせ回る
「待ち遠しいよ、我が息子…そして世界の終わりの魔王さま」
そう呟く瞳は本当に愛しい者を待つようなそんな瞳で、彼の待ち人を今か今かと人類が入れない魔の森の奥地で待っている
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キーンコーンカーン
大きな音がロブロムの町中に響き渡り、城内にある疑似勇者の教練所からは次々に人が出てくる、そしてあっという間に少し先にある食堂は疑似勇者候補生や疑似勇者達でごった返す。
「ここ相席いいかしら?」
その言葉にビクリッと肩を揺らしオズオズとした表情でその声の人物を覗く気弱な少女がいた。
「テ、テミスさん!どうぞ…」
声をかけたテミスも「悪いことしちゃったかな」と軽く謝りビクビクしている丸メガネに御下げが特徴的なフラウの前に彼女とは正反対で勝ち気で誰の目線も奪う言うな美貌を持っているテミスが座った。
「久し振りね、調子はどうフラウ!」
「ま、まぁまぁかなぁーえへへ」
テミスの質問に目を反らしながら苦笑いでフラウは返えした。
「辛そうね、耳にしたわよ噂」
「な、何の事?わ、私は大丈夫だよぉ~」
目を泳がせながらフラウはどうにか質問を回避しようとしているが、テミス瞳は真っ直ぐとこちらを向いたまま離さない
「辛いなら言いなさいよ、貴女はちゃんと強いのよ!?その証拠に貴女だって来週候補生から疑似勇者になる試験を受けるんでしょ?」
そう彼女は他の候補生と違い半年近くで疑似勇者になる試験まで来ていた、彼女の戦闘力は申し分なく、戦略や戦術に関しても一級品だったのだが彼女は未だに自身の力を信じきれていなかった。
「わ、私は多分今回も落ちるし、だ、だから気にしない…」
ドンッ
フラウの言葉を遮りテミスがテーブルを叩く、その音にフラウはビクッと身体を小さく跳ねあげる
「私は!私は貴女と友達じゃないの!?何で何も言ってくれないの!!貴女の噂を聞いた時だって気が気じゃなかった!私にとって貴女は大切な友達なの!!貴女が…」
テミスは彼女より先に疑似勇者になってしまった。
彼女の噂、それは同期であるテミスやアキレシスに嫉妬した疑似勇者の教官が事あるごとに試験を受けた彼女を落とし続いて居るのだと言う、戦闘面では彼女の友達である妖精を使用しないで戦うといった無茶な内容をやらされたりもしたと言う、妖精も彼女の力の一部なのに…
「大丈夫だよ、テミス私はもう大丈夫絶対次で二人に追い付くから」
今までビクビクしていた彼女とは違い今はテミスの顔をしっかりとみて答えていた。
「私達は友達だから、もう心配させないよ」
フラウの言葉にテミスは落ち着きを取り戻し二人は食事を済ませる
(ありがとうテミス、貴女の言葉のお陰で覚悟が決まった)
フラウがビクビクとしていた理由それはもう一つの噂、テミスとアキレシスがフラウを毛嫌いしている噂が疑似勇者内に立っていたからだった。
しかしテミスの言葉でフラウの目は覚める、彼女はもう迷ったりはしないだろう、運命を変える彼に出会うまで
どうも寝巻きです!二話投稿!しますと言うことなんですが…連続ではなく明日の20時になります連続投稿出来なくて申し訳ないです
と言うことで今回はどうでしたか?
次回話が動きますのでお楽しみに
ではまた明日20時にバーイ




