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英雄に憧れた少年は!!!魔王になる???  作者: 寝巻小唄
デスペラード編
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デスペラード編 第28章〈正体Ⅴ〉

いつも見てくださって有難う御座います!

俺はあの時の光景を忘れはしないだろう。


俺に冒険者を志す切っ掛けをくれたあの人の剣技を、あの人の優しさを、強さを、あの背中を。


俺の剣技はあの人に比べてまだまだ未熟だ、そんな俺の目から見ても完成されていた剣技でもあの人にとってはまだ未完成だったらしい。


そしてこの日、冒険者の試験とした試合の日俺は十数年ぶりにあの人が使っていた剣技を目の当たりにする。


〜〜 〜〜 〜〜 〜〜 〜〜 〜〜


「ハァ…ハァ…ッ」


(相手の息遣いが荒くなるのが分かる、相手が何処を守ろうとしているのか分かる、相手が何処を攻めたいのか分かる)


切っ先を寸前で避けながら緑色の髪の男の息遣いが荒いことにバドンは気づく


「もう随分とキツそうですが大丈夫ですか?」


「うっせぇ、てめーのその技…受けづらいんだよ!」


そう叫びながら緑色の髪の男はバドンに斬りかかるが、剣を受け流されバランスを崩してしまう、その隙を見逃すほどバドンも甘くなく、崩れた体制の相手に瞬間斬りかかる。


「クゥッ」


迫り来る切っ先を何とか避けながら、自慢の脚力を使い後方に飛び退く。


「ハァ…ハァ…その剣技に見覚えがある…何処でそれを習った?」


少しの時間稼ぎでも出来ればと緑色の髪の男はバドンに質問を投げるが


「戦い終わったあとにでもお教えしますよ!!」


と相手に休む暇を与えずに切り込む、緑色の髪の男は自身がじわじわと追い込まれている焦りを顔にだし奥歯を噛み締める。


(あの舞うような剣技でも厄介なのに、時々見えなくなるのは一体どうなってんだ?!)


次々に繰り出されるバドンの技を何とか寸前で避け続ける緑色の髪の男は目の前で起こっている()()()()()()現象に戸惑っているが、それは彼等を見物に来た冒険者達も同じだった。


「おい…あの攻撃!…よく狂犬(マッドドック)は受けられるな」


「姿が見えなくなるのは空属性の魔法か?!」


「俺なら秒で終わってる…あれが本当に新人かよ…」


二人の戦いを見ていた冒険者達は口々にそう言ってこの戦いの結末がどうなるかを見守っている。


「つえーな…ハァ、見くびってたわ」


「俺も貴方がここまで俺の攻撃を受けれるとは思ってませんでしたよ、本当に強いですね」


「抜かせ…()()()使()()()()()くせにどの口が言いやがる…それどころかてめぇ…」


戦闘の合間にできた一瞬に緑色の髪の男とバドンは会話をするが、バドンは彼にその先を言わせないように切り込んでいく


〜〜 〜〜 〜〜 〜〜 〜〜 〜〜


「これは…どうなっているんですか!?」


二人の戦いを見ていた茨の騎士(ナイトオブホーン)が唐突に声を荒げて隣にいるギルドマスターを睨み付ける。


「見ての通りだ、お前と互角にやりあっていた嵐の狂犬(ストームマッドドック)は新人に押されているそれだけだ」


「私が言ってるのはそういうことじゃない!!なぜ…何故()()であの新人は動けるのですか!!」


始めのうちは彼女も気づかなかった。


ただ剣を扱うのが上手いだけの新人が、何とか狂犬に食らいついている、そんな印象だったのに、今はそれよりも確認しなければならない事があった。


「何故魔力枯渇(マナロスト)状態で人間が動けるんですか!!」


そう彼女は知っていた、彼ら冒険者は日頃から神に貰った鑑定眼を使用して相手の力量や魔力量を計り、剣や防具なんかも魔力の浸透しやすいものを選ぶために寝るとき以外は常に使用している、そして戦闘時にも勿論相手の動きを魔力の流れから予測しやすいように使用している、それが冒険者達なのだ。


しかしある事件が冒険者局(ギルド)を騒がせたことがあった。


それは魔力枯渇、マナロストをした者を鑑定眼を通して観ることができず救える命を救えなかった事故が過去に起こり、現在はその影響で捜索をするときは鑑定眼の効果を切り肉眼で捜索しないといけない決まりができた。


そうマナロスト時は鑑定眼を使用する全ての者から見えなくなる、言わば透明人間になるのだ。


「マナロスト中の人間が何故あんなにも動く事が出来るのです!!あれは…あれは本当に…」


「彼は人間だ、そうでないと説明がつかんのだ、この世界の全ての物に魔力が宿る、それが例え水だとしても石だとしても微量の魔力を宿す、マナロストが出来るのはその中でも魔物や亜人そして人間だけなのだ、彼が人間でないならその説明がつかん、そして今言えることは何も分からないだ」


長年冒険者をやって来た竜殺し(ドラゴンスレイヤー)のギルドマスターさえ分かたぬ事象に茨の騎士は唇を噛み締めて師匠の言葉を思い出す。


『もしも、もしもだジェーン、この世界に魔力を一切持たぬものが現れたとしよう、その者は生まれて数時間で命を落とす、何せこの世界には()があるからのう、神はその枷を外すために我らに魔力を与えた、そして仮にその者が枷を乗り越え生きていたとしよう、それは魔王以上の最悪の存在になりかねん』


枷のなかで過ごしたその者は、枷の影響で生きた結果、この世界の人々を一撃で屠る力を持つことが出来る力を持つ最悪の存在に成り果てると、彼女の師匠は長年の研究結果でそう結論をつけた。


混沌食い(カオスイーター)がこの場にいれば説明を受けたかったがな」


「混沌食い?ですか…その人は」


「亡くなったよ先の魔王との戦争で、しかし彼奴も使っていたのだ、彼奴は一瞬でしか使えなかったがな」


「マナロストを使いこなしていたと?!魔力の補給は?マナロストをしたら一時間以上は自然回復しません!だからみなマナポーションをもって…」


ギルマスの顔を見ると、闘技場を見ろと首をクイッと上げ彼女は闘技場を見る。


「鑑定眼を使ってみろ、但しここで使うのは狩人の経験で得た鑑定眼をだ」


そう言われ素直に茨の騎士は鑑定眼を使用する。


冒険者の上級者にもなれば魔物や魔獣の討伐で自然と獲得できる鑑定眼(狩人)を使用し、茨の騎士は闘技場を見ると狂犬の魔力は徐々に減っていっているのに対して、新人の方は消えている時の魔力が0の状態から姿を現す時にはその魔力を10回復させていた。


「な…どう」


それを見た茨の騎士は何がどうなっているのかわからないと言う驚愕の表情をしていた。


「あの状態はな実はこの戦いが始まる前から繰り返されている、しかしお前や彼奴は何故それに気づかなかったと思う?」


(そうだな、少ない魔力量だとは思っていたが、まさかマナロストをするほどだとは私も…)


そこまで思考してようやく茨の騎士は気づいた。


「あの新人の回りに漂っているあの魔力を…少しずつ吸収しているって言うんですか?!」


彼の魔力を錯覚した理由、それは彼が纏う魔力が一般の者たちと変わらなく、そしてあの状態が最初から続いているとなると元から彼の中には魔力はなく、彼の回りを漂っているあの魔力の元である精霊が鑑定眼すら混乱させていたと言うことが真実だった。


「そんな…精霊に好かれた存在なんて妖精族しか…」


「世界は広いと言うことなのだろう、俺もお前もあの事象を知らない、故に俺はこの戦いをお前に見せたかった」


ギルマスが本当に彼女に見せたかった事とは違うがこれも一つの学びだと、そう心に彼も刻む。


彼が本当に見せたかったのは、あの新人の魔力量が、昔に遠目で見た古の竜(エンシェントドラゴン)と同程度だった事だったのだが、それは彼が冒険者になって別の機会でも見れるだろうと心の中にしまう


「さあ終盤戦だ見届けよう」


ギルマスの声に闘技場を二人から目を離さないようにしながら茨の騎士ジェーンは頷く


〜〜 〜〜 〜〜 〜〜 〜〜 〜〜


うぉおおお


と会場が盛り上がりを見せる、片や満身創痍片やほぼ無傷、このどんでん返しを予想できた人間がこの会場に何人はいただろうか。


「これで終わらせますよ」


「ハァハァ…いいぜ」


二人が最後の攻撃の為に構える…


静寂が会場を包み誰かが生唾を飲み込むおとが響き渡る


ダァァアン


その瞬間大きな音と共に闘技場を煙が包み込む


「どうなった!?」


「くそ見えねぇ!」


ざわざわと会場が騒ぎ始めた頃、砂煙が開ける、闘技場の中心には一つの影が立っていた。


「勝者バルドォォオアポロォォオ」


会場中にギルマスの大きな勝者宣言がなされるとざわざわとしていた会場が「オォォォ!!!」と言う歓声で埋め尽くされる


「大丈夫ですか?」


「最後のは見切れなかった、俺よりはえー技出すんじゃねーよ…ゴホッ」


闘技場の壁に思いっきり叩き付けられた緑色の髪の男はバドンに手を引かれ立ち上がる。


「強かったなタグ無し、いやバルドか?」


「有難う御座います、貴方のお名前を御伺いしても?狂犬さん」


「ふん、俺はディルフォードだよろしくな」


バドンがディルフォードを立ち上がらせて強い握手を交わすと更に会場中が歓声を上げた。


〜〜 〜〜 〜〜 〜〜 〜〜 〜〜


「ガハハッ」


とギルドに戻ってきたバドンやディルフォード達を、会場で見ていた者達がギルドにある酒場に二人を捕まえ最強の新人とそれに奮闘した二人を称え酒盛りを始めた。


「バルド君すまんな、コイツらがどうしてもと聞かなくてな、先程の二人の戦いをみて興奮しそして勇気を貰ったのだろう、勘弁してやってくれ」


「大丈夫ですよギルマス、俺は慣れてるんで」


「そうか、カードに関しては明日発行される明日の朝取りに来てくれ」


「了解です!」


ギルマスろバドンは騒がしい場所から少し離れた隅でそんな会話をしていると


「主役はこっちだ!大物食い(ジャイアントキリング)


とバドンは手を引かれディルフォードの横に座らされる。


「すまんな、コイツら祝い事が好きで」


「いいんですよ!楽しいです」


ディルフォードに声をかけられバドンは笑顔で返す。


「あとでちょっと聞きたいことがある時間あるか?」


「ええ、分かりました」


ガヤガヤ、ドンちゃんとする中でバドンの顔を横目に見ながらディルフォードが確認を取りバドンはそれに頷いた


宴は夜が更けるまで続いて、バドンはディルフォードと一緒に見晴らしの良い場所まで酔い醒ましに行く


「お前に質問があるんだ」


「何でしょう?先程も聞きたいことがあると…」


「何者だお前?」


バルドの返事にディルフォードは遮るように聞くその目は真剣そのもので、その瞳はなにかを確信したような眼差しだった。

どうも寝巻きです。


今回は期限に間に合ったーふぅ


という訳で次週がデスペラード編正体の最後です!


ドキドキしますね!バドンの運命やいかにですよ!


そして次週が終われば次はデスペラード編の終わりが見えて来ます!どうぞお楽しみに


それではまた次回お会いしましょう!

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