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英雄に憧れた少年は!!!魔王になる???  作者: 寝巻小唄
デスペラード編
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デスペラード編 第27章〈正体Ⅳ〉

見てくれて有難う御座います

ザワザワ


正午の鐘がなるには少しだけ早い時間、アラヴィス公国が保有する闘技場の一つには100には満たないが人達が祭りでもないのに集まり始めている。


彼等はアラヴィスの冒険者局(ギルド)に所属する冒険者達で、今回の目的は昨日の夕方に突如アラヴィスの全冒険者局に張り出されたAランクの人物による戦闘試験を見に来ていたのだ。


「何でこんなに人がいるの!?」


夜明け団(ディブレイク)のリーダーであるホルンはその人数の多さに驚きを隠せないでいた。


「何でも元Sランクだったアラヴィス冒険者局東区のうちのギルマスが呼び掛けたって噂だぜ」


ホルンの言葉に答えたのは同じパーティーであり実の兄であるグウェンだった。


「他の冒険者さんが仰っていたのですが、何でも今回の試験の内容が内容でSランクに認められたタグ無しの人物にSランクの推薦を理由にAランクが喧嘩を吹っ掛けたとなっているみたいです」


「間違いはないの」


アルノアが他の冒険者から聞いた情報を話すと、ロインズは首を縦にふりながら肯定する


「マジかよ!俺はビビって出来ねーけどアポロならやりそうだな…」


皆の後ろから色々な食べ物を持ったソルトが追い付き、昨日あった張本人の顔を思い浮かべて納得した表情で苦笑いを浮かべる。


「それじゃ前の席にいくの、後ろだと彼の実力が分からないと思うから」


ロインズにそう言われて「そうだね!」とホルンが頷き夜明け団の皆とロインズは前側の席に腰をおろす。


〜〜 〜〜 〜〜 〜〜 〜〜 〜〜


「来たか」


顔が傷だらけの強面の男は、銀のフルプレートにその身を包んだ冒険者に語りかける。


「ギルマスが呼んだのでしょう?それに私は試験の準備に忙しいのですよ?そんな私に見せたいものがあるからと来てみれば、嵐の狂犬(ストームマッドドック)がタグ無しの試験をするだけじゃないですか…見る価値あります?」


その見た目とは裏腹に鈴が響くような美しい声が鎧から響き渡って来た。


「あいつにとっても、それにこれはお前にとっても大事な試合だから見とけ茨の騎士(ナイトオブホーン)


「はぁ、まあ直ぐ嵐の狂犬が終わらせるでしょうし良いですが…」


「どうだかな」


ギルマスがニヤリとした事に気づき茨の騎士はその顔を訝しみながら闘技場の方に目線をやると、すでに到着して精神を集中させている嵐の狂犬がいた。


(ギルマスも嵐の狂犬も何をそんなに真剣なのよ、たかだかタグ無しの試験でしょうに、もしかしてそれほどの実力者なの?)


そんな彼女の考えは挑戦者が現れて試合が始まった瞬間、その次元ではないと思い知らされる。


〜〜 〜〜 〜〜 〜〜 〜〜 〜〜


カタッカタッ


反対の入場口から足音が聞こえてくる。


ギルマスが自信より強いと言った人物、俺が憧れを持ったギルマスがそう言いきった人物の足音がAランク冒険者嵐の狂犬(ストームマッドドック)のディルフォードの数メートル先で止まる。


「試験って触れ込みでここまで来るもんなんですか?」


その声の主はディルフォードに語りかける。


「俺がお前に喧嘩を売ってることになってるみたいだぜ?タグ無し」


精神を統一させる為に閉じていた目を見開き目の前の挑戦者を睨み付ける、否彼以外の数人は知っている挑戦者はAランクである彼の方だと、そして彼自信もそう認識して目の前の青年の前にたっている。


「俺にもしっかりとした名前があるんですがね」


「俺に勝ったら覚えてやるよ」


ディルフォードの挑発に目の前の黒髪の青年は苦笑いで返す。


「そんなんだから皆からいつも言われるんですよ、()()()()()()嵐の狂犬さん」


その言葉を聞きディルフォードは真剣な顔になる


才能に抜かれた無能…


疑似勇者の稲妻の騎士(ブリッゼスリッター)が現れるまで彼は殆どの国で追い付けないものがいないほどの速度を有していた。


しかし彼が現れ、ディルフォードに貼られたレッテルは酷いものに、そして彼がSランクに上がれていないことにも触れ、今では彼を勘違いの凡才野郎と彼を僻んでいた者達から言われるようになった。


「ぜってぇ潰す…」


「出来るならどうぞ」


下から睨み付けるディルフォードにたいして両手を広げ黒髪の青年はさらに挑発をかける。


「それではこれより試験を始める!!ルールは簡単!死なぬ程度で戦闘不能、もしくは棄権させた方の勝だ、それでは両者構え!」


ギルマスがそう宣言をして二人は構える。


「始め!!!」


その合図と共に二人の試合が始まった。


〜〜 〜〜 〜〜 〜〜 〜〜 〜〜


試合の9時間前、太陽もまだ上らぬような薄暗い中、ある宿から一人の青年が音を最小限に押さえながらその場を後にする。


街中を軽く走りながら自信が抑制していた魔力を少しずつ放出していく。


「バドン、今日は随分早い時間からやっているのね」


「ロイン…エイミー!街中で一気に放出したら被害でちゃいますから今から少しずつやって試合に間に合うようにしたいんです」


バドンの後を追いかけて来たロインズは、彼に名を呼ばれ馴れておらず少しだけ頬を赤く染める、が辺りが暗く彼が走っていることもあり気付かれない


ロインズは魔法を行使してバドンに追い付いており、端からみたら青年の速度に着いていけている少女にしか見えないが今の時間は誰もいない


魔力枯渇(マナロスト)の状態で戦うの?」


「ええ、じゃないと対等じゃないでしょ?俺のこの魔力は俺の力で手に入れた訳じゃない、()()が俺に共鳴して力を貸してくれているだけなので俺は俺の力で戦いたいんです」


「そ、頑張ってね」


「はい」


そう言葉を交わし二人は無言になりながら一時間をかけて宿に戻る


「おはよ~本当に早いんだね~」


宿に戻って更に一時間後にホルンが起きてきて魔法の鍛練をしている二人を発見する。


「ええまぁ、そう言えば昨日聞き忘れたんですが…」


「何?」


バドンは昨日の歓迎会の影響で聞けなかった疑似勇者の二人に関してホルンに聞いたが、「私よりお兄ちゃんやソルトが知ってるよ!」と顔を冷たい水で洗いながら彼女は知らないと言い、「分かりました!」と彼は返事を返す、とそのまま皆が起きるまでまた鍛練に戻った。


バドンが疑似勇者の二人に関して話を聞けたのは更に1時間が経過した頃、全員が起きて食堂で朝食を済ませたあとだった。


「成る程、その疑似勇者は()()()()()さんと()()()さんって言うんですね」


見知った名前に喜びを隠しながらバドンは聞いた話を整理していく。


半年前に入団した候補生に中でずば抜けた二人はある任務でワイバーンの100近くに膨れ上がった群れを二人だけで討伐し、それを見た村人から二つ名が付けられた。


誰の眼にも捉えられぬ速さでワイバーンを屠る姿に稲妻の騎士(ブリッゼスリッター)


返り血をものともしないどころか、血の雨を降らせその中で深い笑みを浮かべる姿に血の女帝(ブラッディエンプレス)


そう付けられた二つ名を二人は気に入ってないだろうなとバドンは心の中でそう思う。


「それとここだけの話な、嵐の狂犬の前で稲妻の騎士話しはするなよ?」


「え、何故ですか?」


「嵐の狂犬は稲妻の騎士が出てくるまで最速の名を欲しいままにしてたんだが、ぽっと出の年下に抜かれちまって苛立ってんだよ」


「あー」


それを聞きバドンはアキレシスの顔が浮かんだ、彼も自身の速さには自信を持っていた、しかしいくら速くても勝てないバドンに苛立ちを向けていたことも知っていたので、速さを誇りにしている人はそういうものなのかもなと心の中でバドンは思う。


〜〜 〜〜 〜〜 〜〜 〜〜 〜〜


そうして現在、ギルマスの宣言を聞きバドンは目の前から駆けてくる緑色の髪の男の剣を全て見切り華麗に受け流す。


その剣捌きに会場の観客席からはどよめきが起こった。


「ハンッ!そう来なくちゃな!」


華麗に捌かれているにも関わらず、緑色の髪の男はさもそれが当然の様に次々に斬りかかる。


(速度はそうだな…アキレシスよりは確かに遅いんだけど、何だろうこのやりづらさ…)


受け流し、そして切りつけるが、バドンの剣は()()()()、当たると確信して振るう剣先には何の手応えもない


相手が回避を取っている様にも見えないので種がある筈なのだが、バドンは今だにそれが何かを掴めていない。


「どうしたよ!!さっきの威勢はッ!!」


「クッ!」


捌ききっている筈なのにバドンの身体に傷が目立つようになってくる。


(捌いてるのに、想定より深くまで剣が入ってきて捌き切れなくなってる!深くまで剣を入れている筈なのにこっちの剣は全く当たらない…なんだこの気持ち悪い感覚)


バドンは困惑する、現に今彼がアキレシスと戦えば圧勝出来るだろう、その剣の腕はもう半年前とは比べ物にはならない、アキレシスも強くなっているとは言え、その成長速度は群を抜いていた。


しかし、今目の前の緑色の髪の男はそのアキレシスより実力は下なのにも関わらずバドンを一歩的に押していた。


「守る手が増えたな!!てめぇの剣捌きは一芸に秀でてて確かにスゲーがそれじゃ俺は止められねーよ!」


魔力で身体強化をし、風魔法を行使しながら緑色の髪の男はバドンをじわりじわりと追い詰めていく。


「…そっか成る程」


「あ?」


バドンが呟いた瞬間から緑色の髪の男の剣は彼に急に届かなくなる。


「何やったてめぇ…」


バドンとの鍔迫り合いから後ろに飛ぶように引いて剣の先端を彼に向けながら質問をする。


「修正しただけです、凄いですねその()()()、何処の武道を混ぜ合わせてるんですか?」


そうバドンが彼に苦戦していた理由がこれだった。


所謂武道と呼ばれるものには、足運びの形が存在する、それは我流であっても変わらない。


Aの攻撃の型をやるためにAの足運びをした方が切りやすかったり、Bの攻撃の型にAの足運びをしてリズムを崩したりと戦略を無限大に出来る足運びは剣術や武術以外にも、社交ダンスなどにも用いられる。


バドンが彼に対して抱いた違和感の正体がこれだった。


「よく気づいたな?でもそれはスタート地点だぜ!!!」


「ッ!!」


そう言いながら彼が繰り出した剣術は先程とは異なる、そしてその時点でバドンは自身の見積もりの甘さに少しばかり嘆いている。


(足形だけじゃない、彼はおおよそ剣術と呼ばれる流派の型その全てを上級者以上に強く磨き上げ、その上で足形を変化させ攻撃をしてくる…並みの努力じゃここまではできない)


目の前の緑色の髪の男性にバドンは戦闘中にも関わらずその努力に敬意をもって真正面から打ち砕くことの覚悟を決める。


何度目かの打ち合いで再び互いに距離を取る


「すみません、俺はあなたを勘違いしてました」


「あ?!だったら俺もてめぇを勘違いしてたよ!もっとつえーのかと思ってた」


その言葉にバドンはフフッと少し笑みを溢す。


「普通戦闘中に笑うか?馬鹿なのか?」


「ええ、そうですね俺は大馬鹿者です、なので貴方のその強さに敬意を表してここからは全力でいきます…」


その言葉に、いや彼自身から漂う空気感が変わったことを悟り緑色の髪の男は生唾をゴクリッと飲み込む。


(ハハッこうも変わるかよ!今目の前にいるのはさっきのガキじゃねぇ…化け物だ!)


バドンの回りの空気が、否この会場全体の空気が()()()それに同調するようにバドンの姿が揺らぎ消えて緑色の髪の男は自身の勘を頼りに咄嗟に下の方に剣を切り込む


ガキンッ


(眼には見えなかった…ただの勘…違う!!!俺はこの()()を見たことがある!!)


試合開始30分頃ようやくその場の皆が心に刻む、Aランクの冒険者と戦っているのは、タグ無しで等ではない、彼らが一度も出会ったことの無い怪物だと…

寝巻です、


えー安定に謝罪です。ずびばぜんでじだ


月曜日に投稿予定でしたが1日遅れての投稿になり申し訳ないです。


えーそしてようやく戦闘です!


流石Aランクですね伊達じゃないです。


バドンは今だに本気を出してません!全力ではなく今回は本気だけですが全力のバドンも早く書きたいです!


次回は会場にいた茨の騎士さん視点から終了まで書けたらと思います!それでは次回

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