デスペラード編 第24章〈正体〉
ロード達を倒し大氾濫を防いだバドン、改めバルド達はあれから3日かけて現在はアラヴィス公国から残り1日の距離まで来ており、今は日が昇るまで野宿をしていた。
「バドン、そろそろ見張りを変わる時間なの」
「もうですか?生身の肉体になって日が浅いんですからまだ休んでいていいですよロインズさん」
野宿の為の見張りをしていたバドンの元に眠気眼のロインズが声をかける。
彼女はつい最近までスケルトンとして生活をしていて睡眠などあまり必要にしていなかったが、今は生身の体に戻り睡眠や食事などの休息をしないといけない、しかし彼女はそれを忘れていて、ロード達の討伐後食事をするのをすっかり忘れ、倒れてしまいみんなに心配をかけていたのだ。
そんなバドンの気遣いをスルーしてロインズはふくれっ面になり彼に注意をする
「二人の時はエイミーと呼んでほしいと言ったの」
「そこ大事ですか?!」
「大事なの!」
ふくれっ面で迫る彼女は服の間から小さな膨らみかけの胸が見えかけている事に気づかづ、バドンは咄嗟に顔を下に背けながら「分かりました!分かりましたから!」と手を顔の前に上げて彼女の方を見ないようにしていた。
「よろしい!」
「は~」
未だに彼女は生身の体に慣れていないんだなとバドンは改めて思いため息を吐く。
「それにしてもなんで二人の時はロインズさんじゃダメなんですか?」
唐突な彼の質問にロインズは「それは…」と言いづらそうな表情になるが、その瞬間ロインズの左肩の付近の空間が歪みだしその空間から小さな妖精が飛び出てきた。
「お久しぶりねぇ~バドンちゃんのぉ~その疑問わぁ~私が答えるわぁ~」
「アルプさん!久しぶりですね!」
ロインズの肉体を修復する時間魔法を行使した影響で休んでいたアルプがその場に現れてゆったりとした口調で彼女の代わりに説明を始める
「彼女のぉ~ランクは知ってるわよねぇ~?」
「sランクですよね?」
「そうなのぉ~問題はそこなのぉ~」
そうしてゆったりとした口調でその問題をアルプが語った。
ロインズはsランクの冒険者として数百年前に活動をしていたそうだ、そしてその時の功績の対価としてロインズは冒険者局にある申請をした。
それは偽名の登録、冒険者局側も彼女の功績の対価としてそれを許可したのだが、彼女はその後姿をくらまし数百年が経過している、そして現在仮に彼女が冒険者局に戻ったら彼女のギルドカードに冒険者局は混乱するだろう、急に消えた英雄がひょっこり戻ってきたのだ。
そうなったら必ずロインズはギルドマスターの元に通され、彼女はその場でダンジョンに潜る為の説明をするのにバドンを同行させるだろう、そして彼ら側はロインズのカードを拝見し必ず彼女の本名を知る、その時に弟子であるはずのバドンが名前を自然に言えなかったらバドンだけではなくロインズまで怪しまれてしまう。
冒険者局は独自の通信ルートを確保しており、直ぐに各国に伝令されるだろう、ロインズはともかくバドンはロブロムの疑似勇者騎士団にこのことを知られるわけにはいかないのだ。
「そういう事だからぁ~ちゃぁ~んとよんであげてねぇ~」
「分かりました!」
アルプの説明にバドンは疑うこともなく返事を返し、アルプはロインズにウィンクして見せる、その仕草にロインズはアルプに自身の心の内を見透かされている事に気づき顔を赤らめてしまう
「やっぱりまだ寝てた方がいいですよ、エイミー」
ロインズの顔が少し赤い事に気づいたバドンが心配してそんなことを言うが、ロインズは彼の一言でさらに顔を赤らめて「そうする…」と小さくつぶやき馬車に戻った。
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「やっと着いた~腰いてー」
「二人のおかげで楽できたわありがとう」
ソルトは背伸びをした後に長らく馬車に揺られ痛めた腰を叩いていて、ホルンは対照的に慣れているのか腰を痛めている様子はなく気さくにバドンとロインズに握手を求めてきた。
「こちらこそ初めての長旅で皆さんに会えて助かりました!」
「色々教えてくれて助かったの、これから冒険者局に行くのだけどあなた達はどうするの?」
ホルンの握手にバドンとロインズは交互に答えてロインズはこの後の予定を他の三人に聞いく、森を抜けてすぐに出会った人たちだったが、二人の実力を目にしてもその親切心を変えずによくしてくれた三人にロインズは少なからず好印象を持っていた。
「俺たちはパーティーメンバーの奴らと合流してから行くからまた後でだな!」
「その時はメンバーを紹介させてね」
ソルトとホルンがそういって別れようとした時に馬車の方からアルバが声をかける。
「ちょっと待ちな!ほれこれ、報酬!!それとこっちがサービスだ!あんなことがあったのに荷物を無事に届けられるんだ!!感謝してるぜ!4人とも!あんたらのパーティーが何か入用な時うちの店で買い物しな!!割引させてもらうぜ!!」
そんなことを言いながらアルバが茶色い袋をソルトとバドンに、そしてオレンジ色の瓶をホルンとロインズにそれぞれ渡す、茶色い袋の中には金貨2枚と銀貨8枚が入っていた。
「俺たちはこのポーションだけで…」
「何言ってんだ!あんたら二人が居なかったら俺らは生きてなかったんだぞ受け取っておけよ!」
「そうだぞ兄ちゃん!!それは俺からの誠意だ!」
ソルトとアルバは遠慮するバドンの言葉を遮る、そんな二人の言葉に「お言葉に甘えて」とバドンは返して袋をカバンの中にしまった。
「それじゃ店に寄った際に俺の名前を出してくれ!達者でな!」
そう言いアルバが馬車に乗ったまま街中に消えていく。
「それじゃ俺たちもこれで!」
「ギルドで会いましょう」
アルバに続きソルトとホルンも人ごみの中に消えていった。
「それじゃ冒険者ギルドに行くの」
「了解です!」
そうしてロインズとバドンもその場を後にして冒険者局に向かった。
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「いらっしゃいませ~」
冒険者局の扉を開くと目の前に酒場が広がり昼間なのに既に酒を浴びるように飲んでいる人も見て取れた。
「間違ったの…」
「合ってますよ最近じゃ大体冒険者局はこんな感じですから」
「え~」
昔とよほど違うのかロインズはその場に居るだけでどっと疲れたような空気を感じた。
「おいおい!ガキがカップルでこんなとこに何の用でちゅか~」
酔っぱらた坊主頭の冒険者が二人に絡んでくる、それを見た女性の店員が「お客さんちょっと…」と声を掛けるがその男は「うるせーと」腕を振ってその女性を突き飛ばす。
「貴方しにたいの?」
「ちょっロインズさん!?ここは俺が何とかしますから!抑えて!!!」
ロインズの殺気にバドンは咄嗟に気づき止めに入る、一方で男の方は酔っぱらっているのか気づいてはいないようだったが、彼と一緒に呑んでいた男は酒が一気に抜けたのか顔を真っ青にしていた。
(あれが普通の反応だよな…ロインズさんの殺気ってすげー肌に刺さる感じだもん)
バドンは目の前の男にすげーなと感心しつつそんなことを心の中で思う
「お姉さん大丈夫なの?」
「わ、私は大丈夫です!でも彼が…」
「大丈夫なの」
倒れた女性をロインズが助け起こす、助け起こされた女性はバドンの心配をしていたが次の瞬間彼女は見たこともない光景を目の当たりにする。
「まぁまぁ!落ち着きましょうよ、俺もこの人も立派に成人してますし別に問題ないでしょ?」
「そういう事じゃねーよ!!!」
バドンが両手を前に出し坊主の冒険者に笑顔を向けるがお構いなしにその男はバドンに殴りかかる、しかしその拳は届かない、彼が酔っているからではない死線をくぐった数ならこの坊主の冒険者の方が上だっただろうしかしそれは才能の前には意味をなさないのだ。
拳を綺麗に受け流し酒場に迷惑を掛けないように周りに配慮しながらバドンは男を取り押さえる。
「いっててて」
「これぐらいにしましょ?じゃないとこれ一本持っていきますよ」
地面に倒して相手の拳を背中の方に回しバドンはその男に再度注意を促す。
「放せこのガ…」
坊主頭の男が叫ぶ前にバドンは睡眠の魔法を彼にかけて咄嗟に眠らせる。
「お騒がせしました」
彼のその一言で静まり返っていた酒場は次の瞬間には歓声の声が広がっていた。
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冒険者局の二階の廊下でバドン達の様子を顔が傷だらけの強面の白髪混じりの黒髪男が見下ろしている。
「ギルマスあれ止めなくていいんですか?また新人がつぶされますよ、アイツあれでもBランクなんで」
「必要ない、今回は被害が出なくて済みそうだからな」
そんな強面の男に、緑色の髪をした男が声を掛けるが彼が予想した反応と違う反応を強面の男がしたことで緑髪の男もバドン達に目をやると次の瞬間、彼が言っていた坊主頭のBランクの冒険者が地面に抑えつけられ叫ぼうとした男はすぐに眠りについた。
「言ったろ?今日来たあの二人は只物じゃない、多分お前や次回sランクに昇格する茨の騎士よりも強い」
「へぇ~疑似勇者の稲妻の騎士とどっちが強いんですかね」
「そちらは見たことがないから何とも言えんが、ここの誰よりもあの二人は強いな」
「あんたよりも?」
「ああ」
その言葉を聞き緑髪の男は押し黙る、ギルドマスターに成れる者はsランク冒険者の中から選ばれる、そして強面の目の前の男は彼が憧れた英雄の一人でもあった。
『竜殺し』の異名を欲しいままにした目の前の男は、下の階に居る成人したばかりの風貌の二人を認めたのだ。
「今期は化け物ぞろいかよ…」
緑髪の男が小さくつぶやく、今年に入ってから怪物並みの人間がぞろぞろ増えてきた、ロブロムの疑似勇者候補生の二人と噂では『妖精付き』も入団しているらしい、そして聖王国ダーハールムで誕生した聖女様、この大陸の北東に位置する魔王オルドリッジが支配していた大陸、魔族大陸アルガノスで唯一存在する人類都市ホープで召喚された勇者の存在も今年になり表に出てきた。
「あやつらの正体が何にせよ俺らがやることは変わらん、世界の隅々を冒険しつくす事、それが冒険者だろ?ディルフォード」
「ですね…早く俺もSランカーに指名されるように頑張りますよ、ギルマス」
この冒険者局で最もSランクに近い男はそう胸に誓う、しかしこの二人と男の出会いが彼の運命を大きく別の方向に捻じ曲げることをこの場の誰も、彼を見守る神でさえも知らない。
二週間ぶりです…。
ええ、某死にげーをやっていたら投稿できませんでしたすみません…。
というわけで今回の話はいかがでしょうか?神様が身近にいるってどんな感じなんでしょうね。
寝巻には分かりませんが色々監視されていると思うとちょっとだけ嫌ですね…色々
てなわけで今回はここまでです!!!
来週も頑張って書きますが…実はまだ終わってないんですよね某死にげー( ^ω^)・・・
でも両方、いや仕事も入れて全部頑張りますので温かい目で見守っていてください!それでわ~




