トーナメント編 第2章<ツキ>
第2週の日曜から火曜の間
第4週の日曜から火曜の間
のどこかのタイミング1回か2回ほど投稿させて頂きます。次の投稿日は後書きに出来るだけ記載致します!それでは本編
バドンはテミス達にお見上げを渡し食事を済ませた後、少し談笑をしていたところで始まりのアナウンスが鳴り響いた。兄妹は幼馴染二人にガンバレ!!と檄を飛ばし会場の待合室を後にする。
この擬似勇者選抜には各村々から2名の猛者達が王都へと送られて来たりする、村の2名以外に王都で行われる擬似勇者選抜の為の試験をクリアしすればこの疑似勇者の大会へと出場することも可能だ、そして今回集まった選抜者は170人前後でコロシアムの中に設置された8つのステージでトーナメント方式を採用しA〜Hに振り分けられた選別者達が一対一の真剣勝負をする事になる。
「グアああああああああ」
『うぉおおおぉおぉおおおおおおおお』
けたたましい男の叫び声と共に歓声が上がる、会場内には8つのステージを見渡せるように椅子に座ったり立ち見をしていたりで観戦している観戦者達が時に怒号を!時に黄色い声援を!時に愛の告白?をしながら選抜者達を応援している。
「Eのステージ勝者は!!!ロゴス村から来たドルヴァス・ヲーレン!!!」
先程の大きな歓声は早くもこのトーナメントから出たEの優勝者に送られた者だった。
この選抜には“運”も入っているため強い強敵と闘うのか、はたまた全てが自分以下の敵と戦うのかでトーナメントの速度は変わってくる。
「おにぃEの予選終わっちゃったね?」
「だな....早かったな」
バドンとナオは未だに登場しない幼馴染二人を長らく1時間近く待っている、二人はAとDに分かれていて運良く二人とも通過出来る様にはなっていたのだが...なんとAもDも強者揃いだった。
AとDは振り分けられた数が16人と数は少ないのだが何故か一人一人の実力が高い、ほかのステージの試合は大体10分から15分の戦闘を行い勝者が決まるのだが、AとDは20分から40分と接戦が繰り広げられていてとても長い....しかも先程勝者が決まったEの優勝者よりAやDで闘っていた選抜者の方が絶対に強いとバドンは心の中で思っていた。
「でもこれでステージ空いたから詰まってるAかDの予選で使うんじゃ無いか?」
「Dだったらアキレシスさんだよね!」
兄の言葉に暇そうにしていたナオは貼り出されている表を見て次に出るであろう知り合いに胸が踊るのがわかった。
ナオはアキレシスが実際に闘うところを見たことがない、テミスの闘いは兄との訓練で嫌というほど見てきたが、兄の親友である彼の闘いぶりをナオは知らないのだ。
「アキレシスは魔法を身体の部位にかけて闘う魔法騎士タイプなんだよ、使うのは風系統が多くて装備も軽くしてあるから戦う相手によっては直ぐに決着がつくと思うな」
そう言いながら親友の登場を心待ちにしている彼は自分と村で闘った親友の事を思い出していた。
素早い動きで翻弄して来る様は、無数の剣撃が襲い来る様な錯覚にさえなる、何処からでも来るその剣を裁くしかできなかった自分自身の弱さを噛み締めながら空いたステージに上がる人影を見つめる。
「E予選が予想より早く終わってしまったので!!E予選で使われたステージをDの予選に回しまーす!!D予選はかなりの猛者が集結していて見応えがありますねぇ〜!」
司会がそう言うとステージ上で二人の人物が向かい合わせる。
「アキレシスさんの相手はなんかゴツいね...鈍そうだし勝てそうじゃ無い?」
やっちゃえー!!と横で腕を突き上げる妹をよそにバドンは違和感を覚えていた。
「ナオ?多分だけどアキレシス負けるかもしれない」
「なんで?」
小さく首を傾げるその姿を微笑ましいと思いながらバドンは説明する。
「あの対戦相手確かにゴツいんだけどさ...精霊がアキレシスよりかなり多く彼にまとわりついてる...もしかしたら見た目通りとは行かないよ?」
そう言われてナオはアキレシスの対戦相手を見直す、確かにアキレシスより対戦相手の方が精霊の“付き”がいい、しかし凝視しなければ見えない程なので差は歴然では無いが
「言われてみれば....ひょっとしてまずい?」
「まずいな....アキレシスは気づいて居るだろうけど、まさか相手が同じ速さを武器にしているタイプで精霊も彼を好んでるし、しかも対格差もある、少ないにしろもしかしたらアキレシスが負ける可能性も出てきてるね...しかしアキレシスの方はいつになく精霊の“付き”が悪いな...やっぱり相手に持っていかれてるかもな。」
「それってアキレシスさんより格上の魔法使いって事だよね?...大丈夫かな...」
そんな兄妹の不安を他所に始まりの合図が鳴り響く
〜〜 〜〜 〜〜 〜〜 〜〜 〜〜
(ああ...今日は“ツイ”てないな....)
アキレシスは頭の中で思う、そして今の現状を再度確認する、目の前には大柄の男が立っているいつもであれば難なく倒せる相手だろう、しかし今彼は精霊の“付き”が悪く更には相手は自分と同じ属性を得意とする自分より上の相手...
(ああ〜クッソ!せっかくテミスと一緒に擬似勇者になれるチャンスなのによ〜?マジでツイてない...)
彼は親友であるバドンの婚約者のテミスに同じく好意を抱いていた...子供の頃は何とも思わなかったが今や周りを魅了する美貌に彼も虜になっている。
(孤児で忌み子と言われてた“あの時”からしたら変わったな〜美人になった...元から良かったがあの時は近づくの怖かったもんな〜バドンの親友だから一緒にいる機会多くなったけど....ホント俺が口説いときゃ良かったよ....)
今の現状からの現実逃避をする彼をガタイのいい大柄の男は良く思わなかったらしくアキレシスを挑発する。
「おいテメェ見たとこ俺と同じ風系統の魔法が得意なんだろ?だが残念だなぁ〜?技術面では俺が上らしいテメーはツイてねーみてだぜ?」
「あ゛?」
挑発を受けて彼はキレる...いつもはバドンを“真似”て口調を柔らかくしているが彼の沸点は物凄く低い...村ではかなり強い口調で、そして美少年であることから周りからは近寄りがたい存在になっていた。しかし最近はバドンの真似をして温厚になったと思われているのだが事実そうではない...
「テメェ...誰に向かって口聞いてんだよ..オレァな...ただでさえ今ムカついてんだ....」
沸々と湧いてくる怒りに思考がクリアになっていく感覚を彼は感じた。
「俺の出番はDの最後になるし....テミスとは3つも離れたステージで....しかも待合室で見たあの光景.....ああ゛腹がたつ!!!」
俯いた状態からアキレシスは顔を上げ大柄の男を睨みつける。大柄の男はそれを鼻で笑う
「何があったか知らねーが!テメェーはツイてなかったんだよ!!!!!!」
そう叫びながら大柄の男は目の前“敵”に飛び込む、男はこの試合が始まるまで見た試合を思い出していた。
自分より大したことのない風使い達がイキリ、やられる姿を見て自分より上はいないと思い込んでいた.....それは当然の思い込み、実際この場で“風魔法”に置いて男はかなりの才能を持っていた、しかしそれは一般の枠組みの中で、男は知らない、彼の目の前に立つ美少年は“魔法”においての天才、彼に敵う相手などこの会場の中でも数人ぐらいしかいない
【飛べ】
たった一言...それで大柄の男はきた道を思いっきり吹っ飛んでいく。
ドゴーーーーーーーーーン!!!!!
遥か後方の壁に叩きつけられ大柄の男は気絶した。
「ツキツキ言ってんじゃねーぞダボが!!!この大会で俺以上にツイてねーのは俺の前に立つテメェみたいなゴミだ!!!シネ!!!!」
怒りを発散させるべく中指を立てて気絶した大柄の男に叫ぶアキレシスの姿は観客に少しだけ恐怖を与えたがそれは一瞬、その後には大きな声援が送られる事になった。
〜〜 〜〜 〜〜 〜〜 〜〜 〜〜
「......」
妹の何とも言えない顔が目に移る....
いや?そりゃ精霊が“付いて”ない訳だ....
精霊とは魔法を行使するにあたって重要な存在だ。精霊を見てその時の自分の魔法成功率を考慮した戦いをする、そして精霊を見るには鑑定のスキルが必要なのだが大体の人は加護で補える。
魔法や魔導は魔力量や魔力操作技術が根本的な主軸だが精霊はそれに“確実性”を与える。精霊が多く付いている者はかなり高度な魔法や魔導の成功率を上げている。故にこの世界の人物は精霊で優劣をつけがちなのだが....実際の実力差が離れていれば問題はない。
そして精霊が付くにはどうしたらいいか?それは精霊の好む感情を与えればいい。
世界には{5つの自然精霊}と{2つの精神精霊}後{1つの始まりの精霊}が存在している。
自然精霊は{風・火・水・空・土}
精神精霊は{光・闇}
始まりの精霊は{無色}
が存在していて自然精霊には楽しい思い出や悲しい思い出の哀楽の思い出の中の感情を、精神精霊には喜びや愛おしさ怒りや憎しみの喜怒のプラスやマイナスの精神的な感情を与えれば魔法が行使される。
感情の与え方は感情を乗せた“詠唱”を与えればいい、呪術士からは“言霊”などと言われているが、詠唱を与えたら与えるだけ成功率は増していき難しい魔法や複雑な魔導が行使出来るのだ、故に難しい魔法は詠唱が長い。
今しがたアキレシスがやったのはどんな感情の下でも成功する所謂イカサマだ。このイカサマは精霊をほとんど必要としない、しかしかなり難易度の高い技で魔力と魔力操作を完璧にこなさねばならず、精霊が補う筈の魔力供給すらも自分で計算して打ち出すそれが詠唱破棄だ。
これが出来るのはこの会場でも数は少なく彼が見せた速度で詠唱破棄を行えるものはこの会場には居ない、アキレシスがあれをいきなり使用したという事は何かむしゃくしゃして感情を抑えられなかったからだろう...どんなことかは予想はつくが無茶苦茶だ....
「凄いね....アキレシスさん...詠唱破棄使えたんだ。」
「ああ...そうなんだけどね...あれ使う時ってなんかイラついてる時とか悩み事とかあって感情をコントロールが出来ない時だから....それに怒ってるあいつは頭の回転がものすごいくて無茶苦茶にキレるからなぁ...」
「でも何で闇魔法を使わなかったの?怒ってるならそっちのがいいでしょう?」
妹に質問され少し考えるがまあ簡単な事だった。
「アキレシスの加護は精神精霊向きじゃないそして自然精霊の中でも“風”に特化した韋駄天の神の加護だ...確かにアキレシスは魔法に長けているけど、加護ありきなら別の精霊を頼る他の魔法より強い攻撃の選択が出来る“風”を使ってあえて勝負したんだと思う....理由は憂さ晴らしとか?」
妹の視線が突き刺さるが、単純に考えてもいつもアキレシスが怒っている時は、すぐ憂さ晴らしをするからそれが一番いい理由だろう...
「まあそだよね....アキレシスさんの事は村でも噂になってたけどおにぃといる時だけはすっごく優しいから忘れてたわ」
(アキレシスの狡猾さをようやく理解した妹に兄として胸を撫で下ろしたよ、万が一妹とアキレシスが結婚ってなったら憂さ晴らしの相手は全部俺の方に矛先がやって来そうだし....
Aのステージの方も次はテミスが出る番だから応援しないと)
寝巻小唄です
最近ツイッターを始めました@nemakigusaとお調べになりましたら出ます!多分...
それと皆さんに速いですがお詫びです.....トーナメント編終わりません(T . T)
以外に長くなるので投稿頻度も上げます月一ではなく月二で調子のいい月は三回に上げますのでどうぞよろしくお願いします。