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英雄に憧れた少年は!!!魔王になる???  作者: 寝巻小唄
デスペラード編
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デスペラード編 第21章〈時間〉

バドン…貴方は何故そんなに強いの?


貴方が魔力を増幅させたあの日から、貴方は眠る度にうなされている…


貴方が大事にしている絆が貴方自身を苦しめてしまっている、今の私にはうなされて苦しんでいる貴方に寄り添ってあげる事しかできない、そんな貴方はいつも何事もなかったかのように毎朝私に笑顔を見せてくれる、私が心配しないように…


バドン、そんな貴方に気づいてほしいの…


貴方が私に笑顔を向ける度に、私の失くした心が高鳴る音に…


貴方がうなされる度に、私の失った心が貴方を救えと言っている事に…


私は今の私の信念を曲げてでも貴方に幸せになってもらいたい、だから貴方を導く師であるロインズは今日で終わり、これからは姫様のお側に使えたかつての少女エイミー・ローズの姿で今度は貴方を隣で支えたい。


だから私は…


 〜〜 〜〜 〜〜 〜〜 〜〜 〜〜


「誰?…」


バドンはロインズと交わした勇者覚醒の為の魔物討伐の七体の魔物のうち、六体目の魔物の為に本日冒険者局(ギルド)に出向くことになっていて、朝()()()()()()体に鞭を撃ち部屋を出たところでバドンは硬直し、自然とそんな言葉が口からボソッと出てしまった。


それもそのはずだ、いつも彼が目覚めた後部屋を出るとそこには黒フードを被った160センチくらいの中身が骸骨の師匠が朝食を作って待ってくれているのだが、今日彼が部屋を出て一番初めに目にしたのがそんなホラーな師匠ではなく、黒フードを被っている点では同じだが、身長が若干小さくそして最大の違いが紫色の髪をした()()()と誰もが印象を受ける女の子がそこには居たからだ。


「何を言ってるの?私なのバドン、貴方にここ半年稽古をつけてたロインズなの」


「え…え~?」


その美少女はあろうことか自信をバドンの師であるロインズだと語った、そんな少女の言葉は彼の寝起きの頭では処理しきれず、首を大きく傾げて目をつぶった。


(そうだ!これはまだ夢だ!!そうに違いない…魔力が増大した日から悪夢しか見てなかったから、ロインズさんが美少女になった夢を見てしまったんだ!!きっとそうだ!ハハッ最低だな俺…よし!もう目覚めないと!)


首を大きく目をつぶった状態でバドンはフフッと自身にあきれた失笑をして気合を込めて目を開ける


「どこか具合悪いの?」


「ッ!?」


ドカッ!!!!


目を開けた彼の数センチにも満たない距離に、まつ毛が長く大きなかわいらしい目をした困り顔の美少女が覗き込んでいて、バドンは思わず目を見開き後ろに思いっきり飛んで後頭部を強打した。


「さっきも言ったけど私はロインズ、昨日話したでしょ?新しい魔法が完成したから今日はアラヴィスについていくって」


「…本当に?」


「ええ」


強打した頭をさすりバドンは体を起こしながら目の前の少女の言葉に返すと、その少女は柔らかな笑みを作り彼に投げかける。


「昨日話したと思うけど新しい魔法で私の肉体は昔の状態に戻ったの」


「どういう魔法なんですか?」


食事の準備を済ませてくれていた美少女もといロインズはバドンと食卓を挟む形で座り、食事をしながら今の現状の経緯と彼女が完成させた魔法について説明を始める。


「まずは完成した魔法についてだけど、これはアルプの手を借りて完成させたの、今彼女はこの体を作るために消費した魔力と、研究の疲労で眠ってしまっているからもし魔法の詳細が気になるなら後で彼女に聞いてほしいの、私も理解できない魔法を使用しているから」


「了解です」


そうしてロインズは話し始める。


事の発端はバドンの魔力が急激に上昇した一週間後くらいまで遡り、アルプの提案でロインズは肉体を取り戻すことに決めたという、アルプが何故ロインズの肉体を取り戻そうとしたのかその理由は、バドンに関わっていた。


彼が精霊と同じ肉体必要としていない存在になった事で、体中を伝い流れ出る魔力は体を介さず直接漏れ出てしまったことにより、周囲へ及ぼす被害は近くで活動している者に凄まじい影響を与えてしまうようになった。


彼がその場に居るだけで他の魔力、精霊への交信は出来にくくなり、魔法を無詠唱で使用することが困難になった、そしてそんな彼の魔力はそこかしこの草木に魔力を宿らせ、ただの雑草さえ魔法薬(マナポーション)治癒薬(ポーション)の材料になる魔草や木の精霊(ドライアド)が住むのに適した魔力を帯びた魔樹木な変わってしまう。


ロインズの傍にそんな彼が居るだけで彼女が施したネクロマンスの魔力もかき消されそうになってしまっていた、骸骨のロインズの姿ではネクロマンスの魔法がかき消されてしまった時に、死んでしまっている肉体に依存して彼女が死んでしまう可能性があり、その為アルプは彼女を保護する為の魔力壁を張りながら彼女の肉体を戻すすべを探していた。


そうしてたどり着いたのが時間を司る神クロノスの存在だった。


しかし神との交信は神官にしかできず、アルプは他の妖精たちに力を借り情報を集め、ロインズはその情報をもとに時間を戻す魔法を製作し、ようやく昨日完成し使用したのが事の顛末だった。


「それじゃロインズさんとアルプは時間に干渉できる魔法を実現させたって事ですか?!!」


その話を聞きバドンは食事中にもかかわらず席を立ち目をキラキラさせながらロインズに詰め寄る、そんな彼の姿が微笑ましかったのかロインズがフフッと小さく笑うと、バドンはそんな彼女の笑顔を見て固まってしまう。


「どうしたのバドン?私の顔に何かついてる?」


「い、いえ!ロインズさんの笑顔を初めて見たもので…」


「あ~今まで骸骨だったからしょうがないの」


今までとは違い彼女の表情が分かる事に未だにバドンは慣れない、今までであれば骸骨がカタカタと骨を鳴らして笑っているだけだったが、今目の前に居るのはバドンの彼女だったテミスにも引けを取らないほどの美少女なのだ、色々な経験をしているとはいえまだ十代である、彼女の笑顔を見てドキドキしてしまうのも無理はなかった。


 〜〜 〜〜 〜〜 〜〜 〜〜 〜〜


「バドン、アラヴィスに行く前に言っておくことがあるの」


「なんですか?」


二人が食事を終えアラヴィス公国へと向かう準備の途中で、ロインズはふと手を止めてバドンを呼び止める。


「私の呼び方についてなのだけど、ギルドや人前とかでは基本的にいつも通りでいいの、でも私と二人の時はこのギルドカードに登録してあるもう一つの名前で呼んでほしいの」


ロインズはそういうとギルドカードの名前の欄を人差し指の指先でそっとなぞると名前のロインズの文字が消え新たな名前が浮かび上がる。


「え?なんですかその機能…?」


ギルドカードの名前が書き変わる現象にバドンは驚きを隠せない、それもそのはずでギルドカードは基本的に一度登録した名前を変える事なんて不可能なのだ。


ギルドカードはその人を特定する身分の証明としても多く使用されていて、その冒険者が安全な人物なのかの証明につながるのだが、そんなカードの名前を好き勝手変えられてしまったら犯罪を犯す冒険者が出てきてもおかしくはないからだ。


「私のカードは少しだけ特殊なの、これは冒険者局(ギルド)の上の人しか知らないカードの機能で使えるのはごく一部、もちろん冒険者局の上の人に見せるときはいつも隠しているこっちの方を使うの、貴方も秘密にしておいてね?」


「了解です!!」


ロインズは右手の人差し指を唇に当ててにこりと笑う、その可愛らしいバドンはまた心臓がドクンと脈打つのが分かった。


「ど、どっちの方で呼んだらいいですかね?」


そんなバドンは照れながらロインズのカードに新たに出た名前を見てどちらの方で呼べばいいかを彼女に聞く


「エイミーの方でお願いなの、冒険者局に着いたら多分初めにそこを取り仕切ってるギルドマスターに会うことになるからそこではエイミーでお願いするの、それと貴方の登録名だけどまずは名前を変えておいた方がいいの、死んだ人間と丸っきり同じじゃ万が一ってこともあるから似たような響きの名前にしておくの」


「分かりました、エイミー」


彼の名前は既に死人として教会に登録されているだろうし、もし彼が生き返ったことを知った人間がいた場合に同じ名前で気づかれてしまう危険性もあったからだ。


「上出来なの」


そんなロインズ、もといエイミーの言葉に早速実践としてバドンは名前を呼んだ、名前を呼ばれた方の彼女はそっけない態度で彼に顔も見せずそそくさと準備に戻る、その顔は耳まで真っ赤に染め上げられている事にバドンは気づかず、ロインズは人間の体の不便さに後悔をした。


「それじゃ準備も終わった事だし人目のある街道までは浮遊魔法を使って移動して時間を短縮するの、そこからは馬車に相乗りさせてもらえればいいけど基本的に目立たないように歩くの」


準備を終わらせたロインズの姿は黒いローブに腰には小さなポーチの様なものがぶら下がっているだけのシンプルな格好になっていた。


「あれだけ準備したのにそれだけの装備でいいんですか?!」


その姿にバドンは自身との違いに驚きを隠せない、それは見ただけでわかるほどに…


シンプルな見た目のロインズとは違い、彼は背嚢(バック)に荷物をぎゅうぎゅうに詰めた状態で、商人のような格好になっていた。


「バドン?たまに思うけどあなたってどこか抜けてるのね…」


そんな彼の姿にはぁと小さい溜息をこぼしてロインズが彼の背嚢に手を掛けると、先ほどまでの大荷物が一瞬にして背嚢の中にすべて収まってしまった。


「え?これ…」


「貴方も魔法を使うならもう少しは頭を使うの…空属性の魔法で背嚢の中の領域を広げたらそんな見た目の大荷物にはふつうならないの」


「あ~」


バドンの間の抜けた反応にロインズはさらに一つため息をこぼす。


戦闘だけに魔法を行使してきたバドンは、日常生活に応用するという事をすっかりと頭の中から切り離して考えてしまっていた。


「アラヴィスに着くまで大体街道に出て3~4日はかかるの、そこで生活魔法を教えてあげる」


「お手数おかけします」


ロインズの一言にそれは心底申し訳なさそうな声でバドンは頭を下げた。




どうも二週間ぶりです寝巻です!


先週お休みすみません!一応第二と第四の日曜、もしくは月曜に投稿する予定ではあるんですが、できる限り毎週投稿できたらを今年目標にしてます!!!


仕事変わったし…


というわけで今回はロインズが骸骨から生身に戻る話がメインです、え?勇者サイドあれで終わり?…そうです、もう一度彼らが出てくるには後30話近くかかります…



まあいいでしょう!てなわけで今回どうでしたでしょうか?


これから盛り上がってくるはずなので寝巻も気合い入れて頑張って書きます!!!


それではまた次回


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