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英雄に憧れた少年は!!!魔王になる???  作者: 寝巻小唄
デスペラード編
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デスペラード編 第15章〈教練Ⅶ〉覚醒

「これで一通り聞き終わったわぁ~長々とごめんなさいねぇ~」


「フフックッフフフ」


「…良かった、もう恥をかかなくてすむ」


ガクッと項垂れたバドンの顔は耳まで真っ赤に染まっていた。その原因は言うまでもなくアルプの質問である、あの後容姿や性格を細々としゃべったバドンはこれで終わりかと思った矢先、今度は性的にみれる年齢の幅や夜のあれこれを根掘り葉掘りと聞かれそれを師であるロインズの前で吐かされたのである。


ロインズは骸骨ではあれど女性であることは間違いない、そして質問をしてくる目の前の妖精もまた女性なのだ、これは質問と称した辱しめの一種ではないかとさえバドンは感じていた。


「ごめんなさいねぇ~容姿や性格の情報だけでも来てくれる子はいるんだけどぉ~男の子との契約の場合わぁ~センシティブな話題を取り扱わないとぉ~来てくれる子は物好きしか居なくなっちゃうからぁ~」


「いえ、大丈夫ですよ…それにしてもそんな情報まで言わないと契約してもらえないなんて、昔の人間は何をやらかしたんだか…」


アルプが本当に申し訳なさそうに謝罪をすると、平常心を取り戻したバドンが顔をあげて笑顔で答える。


「本当に人間は馬鹿ばかりなの、欲望に忠実で見境がない、妖精もその欲望にさらされた被害者なの、特に力を持った男とそんな男に媚を売る女がいたせいで」


バドンの呟きに吐き捨てるようにロインズは言った。

その言葉に強い怨念を感じるほどに、きっと彼女もそんなどうしようもない人間の欲望や悪意に晒されたのだろう。


「私たちの話わぁ~暗くなっちゃうからやめましょうかぁ~、この情報でぇ~貴方を気に入った子をぉ~探してくるわねぇ~2、3日かかるからぁ~少しだけ待っててくれるぅ~?」


「以外と早く見つかるんですね」


「ここまで情報をくれたらぁ~貴方が悪い人だってぇ~だぁ~れも思わないわぁ~」


「もしも俺が嘘をついていた場合は危なくないですか?」


「それなら大丈夫よぉ~昔は嘘をつかれて色々あったけどぉ~今はぁ嘘を見抜く魔法を身に付けたからぁ~心配ないのぉ~」


「なるほど、流石ですね」


「ありがとぉ~」


死なないと言うのはそれだけで確かに色々なメリットが存在するがそれ以上のデメリットも絡んでいる、彼女達が疑り深くなったのはこの世界の暗い部分を忘れられないからなのだろう、死ねないからこそ、その時の恐怖が忘れられず彼女達は未だに人間から隠れて過ごしているのだ。


「それにしても嘘が見抜けるってスゴいですね」


「ええ、私も欲しいと思ったことはあるの、でもその魔法の内容を聞くと、馬鹿げていて出来そうにないの」


「そこまで馬鹿げた内容なんですか?」


「ええ、だって…」


そうしてアルプから昔聞いた情報をロインズはバドンに聞かせる。


アルプがロインズに語った嘘を見抜く魔法とは、自身の魔力を対象の魔力に馴染ませ精霊の動きで嘘を見抜く魔法なのだとか、しかし思い出してほしい、この世界の卓越した魔術師には外部の精霊を操る事が難しいのだ。それを他者の魔力、もとい精霊の動きで嘘を見抜くなどそれこそ精霊に愛されていなければいけない神業だった。


「確かに便利ではありそうですが、そんな芸当は普通の人間にはできませんね」


「そうなの、嘘を見抜ければそれだけで交渉事をうまく進められたりできるのだけど、そんな些細なことで彼女たちを危険にさらせないの、いくら私や彼女たちが強くても付け入る隙なんていくらでもあるから」


自身の実力に慢心しないロインズの言葉にバドンは頷いて納得する、彼自身その隙を突かれてアンデットになっているの、この世界は油断や慢心をした瞬間に天秤が急に別の方向に傾いてしまう世界なのだと彼は心に深く刻んだ。


「それじゃ~また来るわねぇ~ロインズちゃんもお弟子君もぉ~またねぇ~」


ロインズとバドンの間で行ったり来たりしながら手を振るアルプの周りの空間が歪むとその姿を飲み込みどこかに消えてしまう。


「普通に使ってますけどあれって空属性魔法の最上級魔法じゃないですか?本当に妖精って規格外なんですね」


「精霊に愛されたものなら勇者や魔王だって同じことはできると思うけど、それでも無詠唱かつあんな短時間での空間移動ができるのは彼女たちの特権だと思うの、純粋な彼女たちだからあそこまで精霊に愛されるのね」


人類の上級魔術師が4人がかりでやる最上級魔法の転移を目の当たりにバドンは妖精のすごさを改めて痛感すると同時に、その強さを同じく目撃した人間はそれを欲したのだとも思った。


彼女たちは死なない、成長はすれどある程度で止まる不老不死、そんな存在を見た欲深い人間はその強さを自分のものにしたかったのだろう、死なぬ彼女たちは不老になるための研究の道具に、武力の道具にされてきたのだ、純粋な彼女たちが嘘を見抜かなければならなくなった理由や契約の為の細かな情報も彼女たちが自信を守るための最低限に必要なことだったのだ。


「それじゃ私達も修行の続きを始めるの、今回は魔法の修行を主体にやっていくから覚悟するの」


「了解です!」


ロインズの言葉にいつも以上に気合を込めてバドンは返事を返す。


永遠を生きる彼女たちが、一度は人間から離れた彼女たちが、自分を助けようとしている事を考えバドンの体にさらに力が沸き上がってくる、彼女たちの期待を裏切らないように今目の前の最強の指導にどこまでも食らいつこうと彼の心は燃え上がっていた。


〜〜 〜〜 〜〜 〜〜 〜〜 〜〜


「はぁっはぁっ」


息も絶え絶えにバドンはその場に倒れる、アルプが妖精探しを始めて3日目の深夜になっていた。

今現在バドンは寝ずに魔力を枯渇させた状態で座禅を組み瞑想をする修行をしていた、そんな彼はアルプが去った後ロインズに連れられ魔法の基礎を一から叩きこまれた。


ロインズが教える魔法の初めの授業は雑学を行った。その内容は魔力とその絶対量、そして魔力の源である精霊と器の授業だった。


魔力と絶対量についてはバドンも理解していた、人間の魔力は生まれた時に魔力の器をその身に宿し生まれてくる、その器は決して大きくも小さくもならず絶対量が決められていた、これは神の鑑定眼を使うと器が見えてくることで証明され、狩人の鑑定眼でも力の数値として器が確認できたからだ。


小さい器だった者はそのハンデを背負い生きていかなければいけないが、この世界には神の加護が存在する、神の加護を受けた者はその身に新たな器を宿し魔力の絶対量が引きあがるのだ。神の加護があるおかげで魔力が少ない者は救われる、しかしそれは加護をもらえた時の話だ。


加護をもらえない人間もこの世界には少なからず存在するその一人がバドンだった。


彼自身もその身に宿した器は大きくなく少量の魔力しか生前は出せなかったが今は違う、今は死して神からの加護を受けたことでその絶対量が増えているのだ。


その証拠に彼は全系統の魔法を数日でマスターした、彼の家系は天才的な才能を持った子が生まれてきやすいらしい、彼の妹も数回見た程度でテミスの剣術を盗んで見せた。


兄である彼もその例外ではなかったらしい、天才的な才能に努力を重ねられる彼はどこまでも強くなれるのだが、しかしそんな彼でも壁にはぶつかる、それは全属性の魔法が使えるようになってもできない事だった。


何故なら魔力を枯渇させて行う修行だからだ。


魔法をマスターしても魔力を枯渇させてしまえば自分はまだこんなにも弱いのだとバドンは弱気になっていた。


そんな中でロインズの授業で受けた魔力の源である精霊の事を思い出していた。


この世界には魔力があふれている、その発生の原因もしくはそれ自体である精霊は一体いつ肉体に宿るのだろうと、人間は生まれるときに魔力の器を手にする、しかしそれは母体の中に居る時ではない、その理由は簡単だ、人間は魔力の器を最大で二つしか保有できない、自身の器と神の器、これは複数の加護を受けようと変わらない事実なのだとロインズは語る、これにはバドンも同意した、この内容も生前の授業で学者の論文を拝見していたからだ。


では一体いつ器は生成され精霊は宿るのだろうか?


そうしたときに出てくる疑問がもう一つある、それは生まれてくるときの精霊や器も確かにそうなのだが、死んだときの精霊や器についてだ。


今の自身の現状であるユニーク個体であろうアンデットの肉体やロインズみたいな肉のない骸骨なんかの死人にも魔力が宿っていることだ、通常死んだ生き物の魔力は霧散し器は崩壊するが、アンデットやスケルトンはまた器を宿し魔力を取り戻し復活する。


もしも生まれた肉体に器が生成され精霊が宿るのであれば、アンデットは肉体を保っているしまだ宿っていても不思議ではない、一応スケルトンも骨が肉体という判定なのであれば分からなくもないのだが、しかしここで不思議な魔物が現れる、それはレイスだ、肉体も骨もない魂だけの存在、そんな存在に魔力が宿っているという不思議。


仰向けでそんな考えをしているうちにバドンの中にある仮説が生まれた。


(魂に器が生成されているのか?)


そしたらなんとなくつじつまが合う、赤子は母体の中では魂の形成が不完全で、母体の外に出た時にその魂は産声とともに形成を終了させるのだろう、そうして魂に器が生成され精霊(まりょく)が宿るのではないか?そうした場合レイスは魂が刻んだ念によってその肉体の無い姿でも魔力が宿せるのではないのか?そう仮定したときバドンは精霊の正体をなんとなく察した。


「魂…この世界の魔力、精霊とは誰かの願いや思いが形を作った魂なんじゃないか?」


その瞬間からバドンは考えを改めた。


精霊が魂の残滓なのだとしたら、属性なんか本当は何もないのではないかと、そして魔法を放つ時の自然精霊や精神精霊などの枠組みは本当はどこにもないのではないかと、その考えが至った時バドンは始まりの精霊の存在を思い出す。


「始まりの精霊って、純真無垢、誰の思いも願いも形どっていない魂の事なんじゃないか?」


『半分正解!!!』


そんな声が聞こえた気がした、その瞬間から魔力が枯渇した状態であるはずの体に何かが振れ流れる感覚がする。


感じないはずだ…


理解できないはずだ…


認識できないはずだ…


冷汗がバドンの頬を伝った。


うねるように絡みつくように纏わりつくようにバドンはそれが何かを理解した。


(これ…全部精霊か!!!!)


自然精霊や精神精霊と枠をくくられた(かれら)が何故〖喜怒哀楽〗の感情を媒介にするのかを理解したとき、バドンはその場にいた精霊の願いを、思いを、無念を、その空っぽになったその器に受け入れてしまった。

どうも寝巻です小唄です


先ず初めに今年もありがとうございました来年もよろしくお願いします。


そして読みに来てくださった皆様来年からはバシバシ投稿増やします。


今回の内容どうだったでしょうか?この世界不思議ですよね、魔力が無くなった時どうして体重増えるんですかね。


精霊はこれからどんどん重要になっていきます!物語の根幹であり精霊の謎が解けるとき世界の謎が全て解けます!


拙い文章ですがどうぞ温かい目で見てください

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