デスペラード編 第11章〈教練Ⅲ〉
寝巻小唄です!
第2の日曜日から火曜日
第4の日曜日から火曜日
のどれかで3〜4回を目指して投稿します
概要は後書きで
「それじゃ簡単なルールのおさらいをするね!実戦形式で戦い相手を戦闘不能もしくは負けを認めた瞬間に試合終了!二人は武器を使わないって事だったけど、武器を使いたいなら訓練用の刃をつぶした剣があるからそれを使ってもいいよ、それじゃあ準備ができたら自由に初めて」
彼は残った二人に対して聞こえるように大きな声で確認をとる、それが合図になったのか二人は武器なんか要らないと言わんばかりにすぐさま戦闘が始まった。
肉弾戦の戦いを始めた二人だが多くの者はスミスに分があると彼の攻撃を見て思った。
それもそうだ2メートル超えた体から放たれる拳はリーチもさることながら威力もある、そしてスミスの構えを見た者達の中にはスミスが武術の心得を持っていて、それもかなりの使い手だと感じた者もいた。
大会でテミスの実力を見た者達は彼女に武術の心得がないことを知っている、武術の心得がない者に武術を磨いている者の技は加護以上の成果をもたらす事もこの場のほとんどの候補生や教官も理解していた。
例えそれが加護を複数持っている希少な人物だろうと負けるはずはないとスミス自身も確信している。
しかしこの中でアキレシスも知らない事実をテミスは知っていた。
加護は確かに強力な力で自分を最強だと錯覚させる、この世界の人々は誰しもがそんな加護を当たり前の様に持っていて、その中でテミス自身も複数持ちとかなり希少な存在であった、その数も知る限りでは両手で数えられるほどしかいない、それでもそんな希少な自分よりももっと特別で今の目の前のスミスという長身の男より強い人物をテミスは知っていた。
「ピュートンさんこれ彼女の方きつくありませんか?」
ふと教官の一人がピュートンにそう語り掛ける、しかし彼は質問をした教官に「どうだろう?」と笑顔で返すだけで戦っている二人の方に顔を向き直して戦闘の様子を見守っている
「貴女の加護は確かに厄介…ですが武術の心得もない貴女には負ける気もありません」
スミスは長い手足を駆使して型にはまった鋭い攻撃をテミスに浴びせる、彼女は蹴りだされる足を避けようと一つ下がると瞬間彼はその足を地面に踏み込ませ拳が飛んでくる。
一つの動作に無数のフェイントや技をつなげるスミスに対して、なんとか寸前でよけながらテミスは反撃のチャンスを伺っていた。
「どうしました?攻撃の手数が少ないようですが?」
防戦一方のテミスの一つ一つの動きを警戒しながら、スミスは器用に挑発を仕掛けてくる。
彼は縦ロールの女性アルシェの執事をしていて、その裏では彼女を守る為に色々な情報を確保している、そしてその情報によれば今戦っている彼女やその友人の彼は副団長が言った通り加護や才能だけでここまで来た者、彼の師セバスチャンにお嬢様を守れるようにと戦闘技術を教え込まれ彼は目の前にいる武を知らぬ者を見下していた。
何せ彼の師セバスは昔、疑似勇者に在籍し、そこで現第一騎士団団長であり目の前の彼女と同じ加護を複数持っている将軍アルドレフを負かしたほどの実力を持った男だった。
そんな彼から教え込まれた技はどれをとっても素人である彼女が越えることができない技なのだと、彼はそう確信して攻撃を撃ち続ける、しかし彼女は寸前でそれらすべてを躱し受け止めている。
(報告にはこれほどの実力はなかったように思うがやはり先日のあの件で…)
ふと彼は先日目にした報告書の内容を頭に思い浮かべる、それは目の前の彼女が勇者だけではなく魔王らしき存在を撃退したとの報告だった。それは彼にとって恐るべき内容だったがそれより報告書には気になる点がいくつもある事を思い出した。
「貴女の才能は認めましょう!!しかし貴女は私には勝てない!守るものを亡くし彷徨っている今のあなたでは!!」
報告書に書かれていた気になる内容、『魔王を退けたはいいが、その時に一緒にいた婚約者を魔王に殺され彼女は憔悴した』との一文が本当であったと思わせるようにテミスの顔が曇る。
そうそれこそがスミスがテミスでは自分に勝てないと確証を得ている部分だった。彼女は守るべき大切な者を守れなかった、そんな相手に負けるわけがない彼はそう確信して言い放ったが帰ってきたのは予想とは違う言葉だった。
「さっきからうるさいのよ、私が今やっている事を理解できない貴方に説教されたくないし、何よりもう私はそれを克服した、だから貴方のお望み通り終わらせてあげるわ、色々な技を見せてくれてありがとう」
「っ!??」
テミスがそう言った瞬間、空気が震えスミスは自分の目を疑った。
(そ…そんな馬鹿な!!!!精霊が!魔力が爆発的に増大してる!?)
鑑定眼(神)を使用しスミスは、彼女の周りで渦を巻く強大な魔力を見て驚愕をした。
そして彼は戦闘技能を教えた師の言葉を思い出す。
〜〜 〜〜 〜〜 〜〜 〜〜 〜〜
「この世界でお嬢様を安全に守れる方法が一つあります、それは何だと思いますか?スミス」
ズタボロにされてボロ雑巾のように横たわるスミスに、彼とは違い執事服を身に纏い埃一つ付けずに腕を後ろに組んで、呆れた顔で倒れている彼を見下ろしている彼の師であるセバスに問われ彼は疲れた体を休ませつつ思考を巡らせる。
「武を鍛えぬき誰一人として反撃を許さず打ちのめすことができれば安全に守れます!」
目の前に立つ師を見てそれこそが自分の目指す答えであるように彼は答えた。
しかし師であるセバスは目を閉じ首を左右に振る、予想外の返答にスミスは驚きながらも重たい体に鞭を撃ち体を起こし胡坐をかいた状態で師の話を聞こうとしたがそんな彼をセバスは叱る。
「お嬢様に使える者がそのような格好で人の話を聞こうとしないように!貴方はこれから私の代わりにお嬢様を守っていく従者なのですから、お嬢様の顔に泥を塗るような行動は慎みなさい!!」
「すみません!!!!」
師の怒りの表情に自分の間違えを悟りスミスはすぐさま立ち上がる、そして横になっていた際に体についた多少の砂埃を払い姿勢を正し直立の姿勢をとった。
「よろしい、いついかなる時でも貴方はお嬢様の執事です、それを肝に銘じておくように」
「はい!!!」
奴隷だった頃からの癖がまだまだ抜けていないと思い気を引き締めなおす。そんな彼の様子を感じ取ったのかセバスは満足そうに頷き、自身が見て経験した出来事をスミスに語って聞かせる。
「貴方の言う武を鍛えぬく選択は間違っていません、しかし武を極めたとしても守り切れると確信できません、理由はわかりますか?」
「…申し訳ございません自分には見当もつきません」
少し思考を巡らせたスミスだが、武を極めている師であるセバスがなぜ確信に至らないのかついぞわからないかった。
セバスが見せる武術はどれも完成されていて、掴まれても距離を取られても不意を突かれても、対処できるだけの実力がセバスにはあるとスミスは思っていた。
「武を極めたとて精々さばけるのは二桁の人数がやっとでしょう、しかし私は見ました。武を極めた先、技を極めた先を」
「武を?技を極めた先ですか?」
そう聞き返すとセバスは力強く頷く、その師の姿を見てスミスは緊張し生唾を飲み込む。
未熟であるはずの自分が聞いていいのだろうか?と不安に駆られるがそれよりも師が言った武の先、技の先を彼は知りたいと思い不安を好奇心が飲み込んだ
「あれは10年も前でしたね、確か魔王の軍勢と我が国ロブロムそして隣国アラヴィス公国の連合軍が戦争をしている時でした、私は当時の将軍、疑似勇者第一騎士団団長アファル様にとある人物の任務への動向を命じられ参戦はできませんでした。しかしそれでよかったと今では思います。」
自分がまだ奴隷だったころ、魔王軍とこの国そして隣国は戦争をしていたことを知っていたが、彼の師セバスはそれに参戦していない事にも衝撃を受けた。
前回の魔王はよくあらわれる変異種からの魔王だったが、その魔王はかなり凶暴で知略もあり苦戦を強いられたと聞く、師の話を聞きスミスの中で納得がいく、師がいないのであれば確かに苦戦しただろうと思いつつ話の続きを聞いた。
「私は命じられた集合場所に赴くと目を見開き驚きを隠せませんでした。何せその場にいたのは今の貴方より、いいえどんな疑似勇者候補よりも若かった、当時の彼の年齢は11歳、私は御守りを任されたんだと最初は勘違いをしたものです。」
貴族の息子が何か大物を狩りたくて騎士団が御守りを任されるなどよくある話だ、しかし齢11歳で何かを狩りたいなどませた子供だとスミスも思うが師は初めに言ったのだ。師に武の先技の先を見せた人物にあったのだと。
「道中彼に何を狩るのかを尋ねたところ、魔王の混乱中に下級竜種が大量に発生しその討伐に向かうのだと、通常ワイバーンの群れは5~10匹の群れで冒険者に依頼を出していたそうなんですが、しかし魔王軍との戦時中だったこともあり、受注できるAランクの冒険者及びsランクの冒険者は皆戦争に出向いてしまっている為増殖し自分がこの件をまかされたと彼は私に言ったんです。驚きましたよ彼は私達ではなくあくまでもこの依頼は自分がまかされたんだと、私は初めこんなお坊ちゃんに何ができると見下してました。きっと後になって私に泣きついてくるだろうとしかしそれは間違いだった」
当時のことを思い出したのかセバスの顔は険しくなる、スミスはもし自分が同じ立場だったら同じことを思ったはずだと考えた、経験の浅い11歳のぬくぬく育てられたボンボンが「貴方の御守りはいらないんです」と遠回しに言ってきたのだ、自分だったら鼻で笑ってきっと泣きわめき助けを乞うまで許さないだろう、彼はそこまで思い師の話の続きを聞く
「スミス私が前騎士団長そして現騎士団長の前以外でこの話を初めてします、そしてよく心に刻み込むように、彼は到着した村を少し離れワイバーンの巣を発見しました。その数はおおよそ見た限りで80以上、私は即座に『この数は無理だ!』と彼を引き留めようとしましたが、彼は私の静止を軽く笑顔で返すと「少し待っていてください」と言い残し群れの方に歩いて行きました、そして一瞬だったんです。彼がワイバーンを目前にしてそして風が凪いだと思ったその瞬間、宙を舞うワイバーンや降りて威嚇していたワイバーンはその瞬間全滅したんです。分かりましたか?これが私が見た武の先、そして技の先」
それを聞き目を見開き驚くスミスにセバスは最後に一言自分が見た武の先、技の先の名前を
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「…一撃必殺」
テミスの拳に宿る魔力を見て誰にも聞こえない声でスミスはつぶやく、師が目指した武の先そして技の先その完成形、師であるセバスが今もなお極めようとしている技、一撃で敵対するものをすべて屠れるその輝きを彼は今目の前にして自分の愚かさを知る、あの報告書に書かれていたことはすべて本当だったのだと
《一撃必殺!!!》
目の前の彼女が詠唱を終わらせると魔力の輝きはより一層激しく美しくなって彼女を着飾るように農大に膨れ上がっていく、そんな彼女の姿に自分が進むべき道が分かったスミスは少し残念そうに笑う、それを知ったところで今の自分はこの攻撃の前で終わってしまうだろう、そう覚悟して自分が目指した技を目に焼き付けようとその最後を眺めていると視界の端から影が現れる
「そこまで!!!」
とテミスとスミスの間に声を発した人物が割って入る、放った拳を制止することができなくテミスは焦っていたがその人物は片手でその攻撃をいなし、彼が死を覚悟した一撃は地面にその衝撃を巡らせテミスの拳は地面を大きなクレーターを作る。
「スミス君の戦闘意思放棄によりテミスさんの勝利です、二人ともすごい戦いでした」
テミスの一撃をいなした彼は何事もなさげにそういうと腰を抜かし座り込んでいるスミスに手を伸ばす、そんな彼の笑顔を見て師が一撃必殺を志した理由を思い出す。
『私が一撃必殺を極めようとしたのは、彼の任務のともにしている時でした』
師であるセバスはその人物の付き添いで、セバスは彼の御守りだと思っていた。しかしその先であの技を見て驚愕をしたのだ、いや彼が放ったのは先ほどの一撃必殺の技よりもきっともっとすさまじかったのだろう。
なにせsランクの冒険者が苦戦する量の下級竜種の討伐依頼、依頼は放置されワイバーンは巨大な群れを成し、しかしその人物はその依頼を一人で若干11歳で達成した。その討伐数112
現第一騎士団団長アルドレフやスミスの師セバスチャンさえも不可能なそれを彼はセバスの前でやって見せセバスに一撃必殺の魅力を見出した、その人物が今スミスに笑顔を向け手を伸ばしている。
アルドレフの義理の息子、戦争孤児、そしてその強さを見た人々がつけた二つ名【伝説殺し】
「ありがとうございます、ピュートンさん…」
彼の手を取りそしてスミスは思考する、(ああこれが最強か…)彼の師が憧れた戦闘技能を持つこの国の最大戦力ピュートン・ロードラン今しがた彼は、スミスが絶望した膨大な魔力のこもった拳の攻撃をさも当然のようにいなして見せた。
「ピュートンさん腕....」
今しがた攻撃を放ったテミスはピュートンを心配するが、彼は「大丈夫!」と笑って見せる。
テミスが放った攻撃は彼女が出せる最大の威力、そしてテミスだけは理解していた、彼女の攻撃はすべてがいなされていない事に、ピュートンは衝撃を少し吸収し残りを地面に向かっていなした。
何故そうしたのか理由は分からないが、彼はきっと自分の先ほどの攻撃すべてを受け止められるのだろうとテミスは内心思う。
そうスミスだけでなくテミスもピュートンの元気そうなその姿を見て驚愕しているのだ。
そしてスミスは報告書と同封されていた師の手紙を思い出す。
『報告書
辺境の村の森にて魔王なるもの誕生確認
魔王は候補生テミスおよび恋人とみられる男性が撃退、しかし男性は死亡
魔王に手傷を負わせたのは候補生テミスにあらず
流れは以下の様に
テミス候補生は恋人の男性を師として剣の訓練をしていた模様、二人に魔王接近後、男性が脅威の剣技で魔王に負傷を負わせるが後に再起、その時に男性死亡、その後第二騎士団が現場に到着し魔王撤退。
この件に国王関与あり、そしてこの件を防いだ功労者ピュートンは厳罰に処された
理由はピュートンが独自の判断を下し国を危機にさらしたなどとして第一騎士団副団長の座を下ろされ教官に回されるることになった。報告以上』
驚愕の内容だったが続く師からの手紙に書かれていたことに目を疑った。
『報告書はすべてが事実、故にもしピュートンが国に反旗を翻し落とすと決めたなら貴方はお嬢様とそちら側につきなさい、お国の事情でお嬢様を危険には去らせません、私は旦那様の手前お国側につくでしょうが抵抗は無理でしょう今の彼は私の想像を絶する。故にピュートンには逆らわぬように』
今の戦闘を経験しそして最後、スミスは彼の実力の片鱗を目にした。
自分が死を予感した一撃必殺を彼は難なく受け止めて見せた、それは師が懸念する通りもし仮に彼がこの国を落としにかかった場合自分たちが国側に加わってもこの疑似勇者騎士団では勝てないのだろうと彼は悟った。
それほどまでにピュートンという人物の実力は未知数なのだ。
約一週間経ちました!!これからはなるべく一週間おきにかけるようにします!!
もし一週間おきにかけなかった場合遅れてるってなったら前書きに記した時期に投稿しますので、生暖かい目で見てください!
今回次回、次々回?は多分メインはこちら側の話で次々回?あたりに主人公サイドの話をします!!
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それではまた次回お会いしましょう!!!!




