デスペラード編 第8章〈気勢Ⅲ〉
寝巻小唄です!
第2の日曜日から火曜日
第4の日曜日から火曜日
のどれかで3〜4回を目指して投稿します
概要は後書きで
ロブロムの辺境の村が騒がしくなり国中に不安が立ち込める中、ある場所では空間が歪みそこから一人の真っ黒なフードに目の部分だけ空いた真っ白の仮面の男が現れる。
そんな彼の前には巨大な玉座のような場所がありそこには髭が首を隠すほどに伸びた男がいた、仮面の彼は自分の付けている仮面を外し目の前の巨大な玉座に座る髭面の男に一礼すると声をかける
「またあの国がやらかしたみたいですよ、これで何度目でしょう?今回は予言を言い渡したのに修正しませんでしたし、このままじゃまずいのでは?」
呆れたように吐き捨てながら男は髪をわしゃわしゃと搔きむしる。その態度は、はたから見たら上司と部下の様な感じだっただろう。
「そうか…皆を集めてくれ月詠の出した未来が確定した。」
「え?!あいつら全員を?無茶ですよいつもと同じで参加しない人だっているでしょうし、月詠の未来が確定したからってそれを素直に聞く奴なんかいないんじゃないですか?」
帰ってきてから早々次の仕事を言い渡され少し疲れた表情をした青年は、その仕事が普段から集まりの悪い者たち全員を集めるし仕事だと言われよりいっそ顔をしかめる、彼は内心勘弁してくれとそう半ば諦めかけていたが、髭面の男から重要な情報が与えられる
「我れらの同志が一人消えたと伝えろそうしたら皆来るはずだ」
「は?」
男からしたらあまりの非現実な事で素っ頓狂な声を上がってしまう。
「僕らの同志が消えた?って地上に行ったとかじゃなく?」
「そうだ永劫の時を生きる我々の同志の反応が消えた…俺の弟でありお前を保護した男だ」
「…そうですか、分かりました。」
それを聞き男はようやく重かった腰を上げた。目の前の男が嘘を言うタイプでもないのは彼自身もよくわかっている、それに反応が消えたという同志は死んだも同然で、彼にとってはこの世界で保護してくれた人物であり恩師だった人物、彼が居なくなること自体がこの世界のイレギュラーなのだ。
そして再び空間が歪み仮面の男が玉座の間から姿を消した。
「なぁこれもお前の筋書きか?アラン…」
玉座に座りながら髭面の男は消えた同志のそして弟のかつての名前をつぶやいた。
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周りが喧騒としている、それもそのはず、長いこと自分ら全員が集められなかったのにどうして今頃になって全員に招集を掛けたのか、そのことを口々にしているからであった。
「それにしても今回は多いわよね?」
目の前に広がる人々を見て黒髪でロングの女性はそうつぶやいた。彼女は周りの人々を少し見てから手元に置いてある映像装置を作動させ自分の観察対象に目を向ける。
「ダメですよ!!こんなところでログムービー開いちゃ」
「いいのいいの!どうせ月詠の件でしょ?あのおっさんも報告だけならメッセージ飛ばせばいいのに…こんな数百人いる同志を集めて何すんだか」
「局長も何か思ってのことだと思うのでしっかり聞いてください!!アレリナさん!!」
「はいはい、ったく局長っていったいいつまで呼んでんだかお堅いね~サリーは」
未だに始まらない会議の中で女性二人はそんな会話をする、黒髪ロングの女性のアレリナに金髪の女性のサリーはほほを膨らませながら注意を促すが手をひらひらとさせアレリナはサリーの注意を聞こうとしない、そんな中髭の伸びた男と真っ黒なフードの男が皆の注目する中央に現れる。
「皆よく集まってくれた、私の呼びかけに答えてくれてありがとう、この中に詳細を知らない者もいるだろう、友の者に理由を聞かされず連れ出された者もいたはず故に俺から説明させてもらう」
空間を歪ませでできた男は早々にそう言い、集めた理由を話し出す。
「俺の弟を知っているだろう?奴が作った月詠の導き出した未来が確定した、俺もそして同志全員、作った本人以外の全員が未来を予測できる物をこの世界では作れないと思っていた、しかし昨日をもって俺は考えを改めた、奴の作り出した月詠は最初の予言を当ててしまった。」
髭の濃い男がそう告げると周りからは「不可能だ!」「証拠を見せろ!」「本人を出せ!」等の雑言が飛び交う、それを髭の男は「静まれ!!!」と一言喝を入れ話を再開させる
「月詠が出した最初の未来は月詠の製作者の死だ!」
それを聞き周りは静まり返る、それもそうだ彼ら同士は…
「嘘よ!!!そんなことあるはずがない!!だって彼は…」
静まり返った静寂の中でアレリナが声を上げる、彼女にとっては信じられないことを耳にしたのだ、彼女は月詠を作った人物を知っているそして彼は同志達の中でもイレギュラーな存在で、彼女からしたら殺しても死なない人物だったからだ。
しかし静寂だった周りからは「月詠って誰が作ったっけ?」など「顔が思い出せない」など色々と声が上がり始める
「月詠は我が弟、奈落の主の名を与えた彼が作った、彼の名を知らぬ者はいないだろう?彼は我らが悲願をかなえた男なのだから」
男が言い終わると会場がざわめきだす、彼の弟を知らぬ者はいても名前を知らないものなどいない、たとえ本当の名を忘れようと彼らが賜った名を忘れるはずがなかった。
「我らを殺せるものが現れた!もう一度だけ言う、我が弟が作った月詠は未来を確定させた、そして我らを殺せる者が現れた!!!これがどういうことかわかるな!神である我らを屠れるものが地上世界で生まれた!!!心せよ!!月詠の予言では我らは子等より先に滅ぼされる!その後は力を失った我が子らが標的にされる!!!!俺も弟の無念を晴らす!貴様らも自分の育てた子らのために立ち上がれ!!!この時からラグナロクは始まった!!!!!警鐘を鳴らせ!敵の侵入を許すな!我が子らを守れ!!全知全能の神オーディンの名を賜ったこの俺からの警告だ!頼む世界を守ってくれ…」
静まり返る会場、こんな突拍子もない話を聞かされた神々は堪ったものじゃないだろう、数百、数千、数万と生きた自分達が狙われるのという話も、はたまたそんな存在があの星で生まれた事も、誰一人声を上げることはできないのだ、幾星霜ぶりの恐怖をその身に宿した者たちは無力な存在だった。ただ一人だけを除き…
「やるわ!!彼が月詠を作った理由がこれなら、彼を消したやつがこれで終わらせるはずがない、それにそいつが彼を最初に消した理由は彼が脅威になる存在だったからよ、私たちも彼と同列の存在だというなら戦って消えていった彼に私たちの実力を見せてあげましょう!彼が守りたかったものの為に」
アレリナの主張を聴き周りの者たちは震えていた体を押さえつけ、自分達もと立ち上がり始める、遠い昔遥か昔に絶望を切り抜けた者たちがそこには居た、そうして短くない時間で全員が立ち上がり歓声が上がる
「それでは我らの戦いを始めよう」
こうして奇しくも地上の世界と同じ時に神々の戦いも始まろうとしていた。
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神々の世界もあわただしくなる中、ロブロム国の騎士団本部ではある会議が行われていた。
「では魔王は現れたのか?」
低い声の男が腕を組みながら目の前の三人につぶやくように効く、低い声の男は小さいがよく通り耳にまで届いた、そしてこの男はこの国の騎士団長アルドレフ、彼の横には第二騎士団長を除いた第七騎士団長までが左右に振り分けられた席に座っていた。
「いえ、正式には魔王ではないですが、それに準ずるものの存在は確認できました。」
そのつぶやきに似た問いに答えたのは第二騎士団長の赤髪の女騎士エレナである。
彼女の左隣には青髪の青年のアレスと右側に第一騎士団副団長のピュートンの姿がある、今三人は審問会にかけられており先の命令違反の件と報告をかけてこうして騎士団長たちの前で報告をさせられていた。
「では脅威ではないな、いつもと同じレベルの魔王であれば俺一人で片付けられる、そして貴様ら三人に対しての処罰だが、エレナ、アレス、貴様らへの処罰はない、しかしピュートン、貴様は別だ、理由はわかるな?貴様には第一騎士団副隊長の席を外れてもらう、そして貴様には明日王都に来る見習いどもの教官の席を用意するこれで今回の話は以上だ、意義のあるものは?」
アルドレフがそういうとエレナが手を上げる、第三騎士団長が声を上げようとした時にアルドレフが低い声で「いってみろ」と言葉を掛ける、それだけで第三騎士団長は押し黙った。
「なぜ私たちがお咎めなしなのにピュートンさんはこのような罰なのでしょうか?納得いきません」
「貴様らへの独断命令…これだけで説明は不要だと思うが?」
それは!と声を上げようとしたエレナにピュートンはそれを手で制して「その罰お受けしました」と頭を一つ下げた。
「ではこれで解散だ」
団長が短く言うと各々が散り散りに去っていく
「ピュートンさん!なんで!!!」
最後に審問にかけられた三人だけが残り、そしてエレナがピュートンに詰め寄る、詰め寄られた彼は苦笑いするとその理由を淡々と話し始めた。
「僕がいなくなっても君たちがまだいてくれるし、この騎士団を任せられる、それに僕だって完全に切られたわけじゃないしまだいくらでもやりようはあるよ」
でも…とエレナが力なく言うとその肩をポンと叩きお茶らけた様なアレスが口を開く
「そうっすよ親父もピュートンさんをガチでやめさせはしないっすよ!!なんてったってこの国の最強の騎士団長より強い人なんですから手放した後が怖いっす!!」
お茶らけた風にそういうアレスに確かにとつぶやくエレナそれのやり取りを見てまた苦笑いを浮かべるピュートンは続いて思ったことを口に出す
「強いかどうかの話は置いといてアレス?君はいったいいつになったら僕のことを義兄と呼んでくれるんだい?どうしても義弟にさん付で呼ばれるとむず痒いんだよね」
血のつながりはないが同じ家で何年も育った本当の弟のようだと思ってる存在に、さん付けで呼ばれるのがどうしてもなれない彼はアレスに訳を聞く、嫌われてるなら仕方ないがそんな雰囲気ではないのだ。
「いや無理っす!ピュートンさんをは確かに自分の兄貴っすけど俺にとってはあこがれの存在なんで!」
きっぱりそういうアレスにそっか…と少し寂しそうに返すピュートンを見て、悩んでいる自分がおかしいのかと思えてきたエレナは、はぁとため息をして「もう行きますよ」と二人に声をかけて部屋を後にした。
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テミスと夢の中で会話をした翌日、バドンはロインズに連れられ森の深くに来ていた。
「それじゃあ新しくあなたが手に入れたスキル神の加護の鑑定眼を使用ができるかやってみてほしいの」
「了解です」
そういわれバドンは神の加護のスキル、鑑定眼を使用する。
「使用してみてどう思う?狩人の鑑定眼と違うところがどこかわかる?」
「はい、えっと....」
そしてバドンは二つの鑑定眼の違いを述べ始める
この二つには大きな違いがあり、初めに神の加護の鑑定眼は精霊の色を見分けることができた、狩人の鑑定眼は漠然とそこに精霊がいることしかわからない、しかし鑑定眼(神)を使うと世界が色鮮やかになったのだ、極めつけは
「見ただけでロインズさんが膨大な魔力量を持ってるってことが分かりました。」
鑑定眼(神)は相手の保有する魔力量をオーラで見ることが可能だった、ゆえに相手がどのくらいの魔力を保有しているのかが一目でわかるのだ。それに比べて鑑定眼(狩人)の方はどうなのかというと
「鑑定眼の狩人の方は数値が見えて相手の魔力量を数値化できてました、それとこの数字は生命力ですかね?相手に攻撃を与えると減っていく数字も見えます」
「そうなの、狩人の鑑定眼が弱いといわれている理由はそこね、数字をまともに読める人が狩人をやってる人の中には少ないからなの、それに数字が減っていくとしても弓自体が与える数字がずっと同じ数字とは限らない、熟練の狩人にだってそれこそ弓が得意なエルフにだって難しいの、だからオーラでわかる鑑定眼(神)の方が強いと言われている、実際に魔法を使用するとわかるけど精霊に色がついてるから何系統の魔法を出すのかが分かるのは強いの」
ロインズはそういうなり初級の火の魔法を掌に作り出すと、魔法が始まる寸前バドンの目には赤色の精霊がロインズの掌に集まるのが見えた。
そう鑑定眼(神)を持っていれば相手の使う魔法を予測することはできる、だがこれはすでに対策が立てられてしまっていて、実際上級魔術師同士が戦闘を行う場合では、使用する精霊と別の精霊をあらかじめ纏うことでカモフラージュさせる戦いが今の一般的な戦い方になっていた。その弱点に気づいたバドンはロインズに質問する。
「それもカモフラージュでどうにかできますよね?ほかに利点は?」
「そうね、でもカモフラージュされたからと言って使う魔法の魔力を偽ることはできないの、それこそ魔力が一切流れない詠唱破棄や膨大な魔力を一瞬で生み出す無詠唱でないと意味がなくなってくる、だから今主流になっている戦い方は、集めた魔力の量を見極めて、その量に応じて初級か中級か上級の魔法に分類して、こちらの防御魔法を展開させるっていうのが肝心なの」
「なるほど」
言葉の端々で魔法を使いロインズは実践をしてくれる詠唱破棄を使ったり、無詠唱を使ったり、果ては初級、中級、上級の魔法を使用し「このぐらいの量なの」と披露してくれた。
そうしてみると強い魔法にはかなりの魔力が消費されることが分かった、魔力でどれくらいの威力だ出るのかわかるのは強いとロインズの実演を見てバドンは心底思う、それに無詠唱か詠唱破棄かが一目でわかるのはでかい、鑑定眼(狩人)では無詠唱は爆発的な数値を叩き出していたことしかわからないし脅威度が分からず、精霊の色も分からずただ膨れ上がる魔力だとしか思わなかった、しかし彼女の無詠唱の実演を見て思い至ったことがある、それは魔力の膨れ上がりだけで見てしまえば大技の魔法を使っている時と何ら変わりない魔力量なのだ、無詠唱を使用できない方からしたら誤解してしまうことは痛手だと彼は思う。
バドンはロインズの実演や話を聞きながらなるほど!と色々と頭の中で戦略を立てていく、実際初めて戦った時、彼女は魔法事態に虚偽の魔法をかけて戦っていた、あれが魔法を巧みに操るネクロマンサーの膨大な戦術の一旦だったことも頭の隅に入れなければいけない。
そうして色々教わり終えると、バドンは次に気になっていたスキルたちの使用についてロインズに聞く、主に彼は鑑定眼の方よりこちらの方がメインだと思っていたのだ、勇者覚醒や魔王覚醒は彼自信を次のステップに上げてくれると思っていたが、しかしロインズから帰ってきた返答は意外なものだった。
「スキルを使ってみても?」
「ダメ!!絶対に魔王覚醒や英雄覚醒、勇者覚醒は使っちゃダメなの!それは使用者を殺すスキル」
ロインズは焦ったようにバドンにスキルの使用禁止を言い渡す、彼女の焦った雰囲気はバドンにも伝わる、しかし彼はこのスキルの試し打ちがメインなのだと考えていた。
だがそれはロインズの反応によって誤りなのだと気づく、このいかにもなスキルを使いたくならないわけではない、使用者を殺すスキルなど彼にとって聞くのは初めて耳にする、少しだけならとそう思いスキルを使用しようとしたその時、彼は頭をスパンッと何かを丸めた少し柔らかいもので叩かれる
「スキルに魅入られちゃダメなの!ちゃんと理由を話すから今日はこの辺で一旦家に戻るの」
「…了解でーす」
初めての体験でバドンは少し自分のスキルに恐怖した。
ロインズに言われるまで気づかなかったが、自分はスキルに魅入られ今しがた魔王覚醒を使用してしまおうかと考えていたのだ。
スキルに魅入られるなんて初めての事でましてやロインズの反応が少しでも遅れていたら自分は忠告道理死んでいたのでは?と冷汗をかきながら彼は先を歩く彼女の少し後方を歩き家に帰っていく。
たびたび遅くなり申し訳ありません
この時期忙しくて…と言い訳してみます。
次回は早めに出しますのでご容赦を!
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ではまた次回




