LOVE IS・・・。
※※※
原付の荷台に人を載せてはいけませんって決まりがあったはずだけどな……。
いや、今はそんなことどうだっていい。
バレなければ犯罪ではないのだから。
人の命がかかっている―――とまでは言わないけれど、一生を左右するような緊急事態だから。
空港についた瞬間、僕は荷台から飛びおりた。
「ありがとう鬼瓦」
「何言ってんだ、借りを返しただけだろうが。ほら、さっさと行け。間に合うかは知らねェけどよ」
「分かった。必ず一葉さんに会うよ」
「ああ。少なくともあのお方が待っているのは俺じゃねェからな」
鬼瓦に背を向け、僕は空港の中へ駆け込んだ。
一葉さん、どこにいるんだ!?
施設中を駆け回ってもそれらしき人影は見当たらない。
もう出発してしまったのかもしれない。
間に合わなかったのか――――なんて、僕がそんなことを思った瞬間だった。
「真くん、どうしてここにいるんですか?」
今、一番聞きたかった声に僕は背後を振り返った。
一葉さんがそこに居た。
「……君に会いに来たんだ」
「どうして私がここにいるって分かったんですか?」
「保健室の先生に聞いて、それで鬼瓦に送ってもらって」
「……どうして来たんですか?」
「どうしてって、それは、僕が一葉さんに会いたかったから」
「私は会いたくなかったんです!」
「!」
思わず僕は固まってしまった。
だけど、こう言われることを予想していなかったわけじゃない。
なぜなら一葉さんは、僕に何も告げずに海外へ行くことを決めたんだから。
言い換えれば、それは僕に対する決別の意思表明みたいなものだ。
僕はそれを無視してここまで来てしまった。
一葉さんに頼まれたわけでもないのに。
「……ごめん。余計なお世話だったね。手術が無事に終わるよう、祈っておくから」
再び彼女に背を向けた僕は、元来た道を戻ろうとした。
「真くん!」
ふいに呼び止められ足を止める。
僕が振りかえる前に、背中に温かいものが触れた。
一葉さんの手―――だろう。
「……何?」
「手術の事、言わなくてごめんなさい。でも、真くんに会っちゃうと、決意が鈍ると思ったんです」
「決意?」
「真くんと離れたくない気持ちがいっぱいになって、手術を受けられなくなっちゃうと思ったんです。だから、会えなかったんです」
「一葉さん……」
「だから今日はこのままお別れしましょう。次に会うときは、すべてが終わって私の病気が治った後です。……またね、真くん」
一葉さんの手が僕の背中から離れていく。
同時に足音が僕から遠ざかっていくのが聞こえた。
「一葉さん!」
僕が思わず振り返ったとき、遠くに小さくなった一葉さんの背中が見えて、すぐに空港内を行きかう人々の中に紛れて消えてしまった。
不思議と彼女を追いかけようという気持ちはなかった。
一葉さんは絶対に帰って来る―――そんな確信があった。
「よう、佐藤。東桂木さんには会えたのか?」
いつの間にか鬼瓦が僕の隣に立っていた。
「うん。会えた。僕はあの人が戻って来るのを待つよ。何日でも何年でも、何十年でも何百年でも」
※※※
そう遠くない未来、一葉さんは帰って来るだろう。
あの小さな笑顔を浮かべながら。
僕にはそれが分かる。
その時が、僕が本当の意味で一葉さんを迎えに行く時だ。
きっと一葉さんは、今までよりずっと元気になって空港のエントランスから出てくるはずだ。
「遅くなってごめんなさい、待ちました?」
「いや、待ってないよ。僕も今来たところ」
「えー、待っててくれなかったんですか? ちょっとショックです……」
「嘘嘘、ずっと待ってたんだ。帰ろう、一葉さん」
一葉さんが笑う。
僕らは歩き始めたばかりだ。
これにて一葉編完結です!
次は世奈編――――といきたいところですが、作者が繁忙期に入るため次回の更新は未定です。
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ではまたいずれ!




