ハートに火をつけて
「……次から次に、よく分かるね?」
「当然でしょ。で、何をそんなに悩んでるわけ? あー、言わなくても良いわ。どーせあんたのことだから、東桂木さんのために出来ることなんて何もない……とか考えてるんでしょ!」
大当たり。
「だって、そうだろ。本当は手術もしないといけないらしいんだ。でも、一葉さんはそんなこと何も言ってくれないし、僕から何か言うわけにもいかない」
世奈は息を深く吸って。
大きく。
大きく。
ため息をついた。
「あんた、ばっっっかじゃない?」
「う、うるさいな。世奈には関係ない話だって言ってるだろ」
「関係あるわよ。ずっと一緒にやってきた幼馴染が悩んでるっていうなら相談にも乗ってあげるわよ」
「じゃあ、世奈が僕の立場ならどうするんだよ」
「簡単だわ。直接本人に聞く」
事もなげに世奈が言う。
「そ、それは世奈だから出来ることだろ」
「違うわ。あんたにだって出来るはずよ」
「何を根拠に」
「あら? あたしに向かって絶縁するだの彼女がいるだの言ってきたのはどこのどいつだったかなー?」
「それはまた別の話……」
「バカなこと言わないで!」
世奈が勢いよくベンチを叩く。
うわ、ベンチにヒビ入ってるよ……。
「な、何がだよ」
「あたしを散々傷つけておいて、今更そんなこと言うわけ? それは甘えよ、シン」
「甘え?」
「だって、あたしには素直にモノが言えるのに、東桂木さんにはそれが出来ないんでしょ? それってあんたがあたしに甘えてるってことじゃない」
「甘えてるわけじゃない。ただ―――」
あれ?
ただ、何だ?
言葉が続かない。
「ほらね。図星ってやつでしょ?」
「……だったら何だよ」
「あたしを振ったくせに、今更甘えたこと言ってんじゃないわよ」
表情を一変させ、世奈は僕を睨みつけるようにしながら、低い声で怒鳴った。
僕は思わず息を呑んだ。
「相談に乗ってくれるって言ったり、甘えるなって言ったり……どっちなんだよ」
「相談には乗ってあげる。だけど、あんまり甘えたこと言われるとムカつく」
「結局は自分の感情じゃないか」
「そうよ、自分の感情よ。あんたもそうするべきなのよ」
「……え?」
道路の向こうからバスが近づいて来るのが見えた。
世奈がベンチから立ち上がり、僕を見下ろす。
「本当に相手のことが好きなら、本当に相手のことを考えているなら―――素直になれるはずだわ」




