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フー・ニーズ・ユー


「今、文化祭の途中でしょ? なんでこんなところにいるのよ」

「それはお前だってそうだろ。何してんだよ?」

「うん? あー、たまたま保健室の先生から忘れ物届けてって言われてさ。東桂木さんの家探してたんだ」


 そう言って紙袋を掲げる世奈。


 どうやら嘘ではなさそうだ。


 別に疑っていたわけじゃないけど。


「あ、えーと、ここだよ、東桂木さんの家」


 僕が僕の背後を指さすと、世奈は目を丸くした。


「へー、大きなお家。お城みたいじゃない?」

「そうだよね。僕もそう思う」

「で、どうしてあんたがその大きなお家から出てきたのよ」

「……付き添いだったんだよ。部活が一緒だから」

「ふーん、そうなのねぇ」


 訳知り顔で世奈が頷く。


 とりあえず無視しておこう。


「一葉さん具合悪そうだったから、ポストに入れておくといいよ」

「あんたがそう言うなら、そうするわ」


 世奈は僕の言った通りに、紙袋を一葉さんの家のポストに入れた。


 いつの間にこんなに従順になったんだ、この女?


「僕はこれから学校に戻るんだけど、世奈は?」

「あたしも戻るわよ。せっかくの文化祭でしょ? ……あ、一緒に文化祭回ってくれる相手が居なくて寂しいっていうならあたしが一緒にいてあげてもいいわよ?」

「悪いけど、僕も一応友達いるから」

「へー、良かったじゃない。独りぼっち卒業ね」

「おかげさまでね」

「……次のバス、来るわよ。行きましょう」

「あ、ああ」


 僕と世奈は並んで歩き始めた。


 あの、映画館デートの時以来だ。


「演劇部の劇、見たわよ」

「……へえ、てっきりそういうのには興味ないと思ってたけど」

「お客さんきてなかったら可哀そうだから行ってあげたけど、案外人気だったじゃない。心配して損したわ」

「僕も意外だった。あんなに見に来る人いるなんて思わなかったんだ」


 バス停について、僕らはベンチに座りながら他愛もない話をして、遅れ気味のバスを待った。


「なんか、シンがだんだんあたしの知らないシンになって行くのね」

「どういう意味だよ」

「あたしの知らないところで彼女作って、あたしの知らないところで部活やって、あたしの知らないところで文化祭やってさ」

「いいだろ別に。世奈には関係ないし」

「悲しくなるわねー、昔はあんなに小さかったのに」

「お前、僕の親か何かかよ」

「こっちは最初からそのつもりよ。だから、東桂木さんの病状が良くないのと、あんたがそのことで悩んでるのも分かるのよ」

「……マジですか」

「何年一緒にいると思ってるの? あんたの考えてることなんて大体分かるんだから」


 ほんとかよ。


 この間言ってたことと違う気がするんだけど。


 僕がそんなことを考えていると、


「今あんたが余計なことを思い出してるってこともね!」


 と、世奈はしかめ面をした。



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