グッドカンパニー
※※※
「ごめんなさい。朝、薬を飲んでくるのを忘れちゃって」
ベッドに寝たまま、一葉さんは申し訳なさそうに言った。
一葉さんの病状が回復するのにそう時間はかからなかった。
だけど、保健室の先生が言うには今日は早退して休んだ方がいいということで、僕は彼女に付き添って一葉さんの家に来ていた。
「……そんなに悪いの、心臓の病気」
「いえ、薬を飲んでいれば大丈夫なんです。今日はたまたまこうなっちゃっただけで」
「でも、顔色も悪いし」
「あはは、ちょっと張り切り過ぎましたかね」
そうやって笑う一葉さんの顔は、やっぱり青白かった。
「今日も一葉さんの家の人は帰ってこないんだろ? 僕、泊まって行こうか」
「そんな、申し訳ありませんよ。すぐに良くなりますから大丈夫です。まだ文化祭も途中ですし、演劇部の皆さんもきっと真くんのこと待ってますよ」
「……僕らは一心同体だろ。一葉さんが苦しんでるときに僕だけ楽しいことはできないし、楽しむこともできない」
「それでもです、真くん。文化祭がどんな様子なのか、私の代わりに見てきてください。そして、私のそれを教えてください」
一葉さんの瞳には頑なな意志みたいなものが宿っているように見えた。
「でも」
「こうして私と話し合いを続けても時間が無駄になるだけですし、私も疲れます。ですから、私のためと思って、今日は文化祭に行って下さい」
「……分かったよ」
僕はベッドの傍から離れ、一葉さんを部屋に残したまま彼女の家を後にした。
―――っ!
何が一心同体だ。
本当にそうだったのなら、一葉さんの具合が悪いことくらい把握できただろ。
保健室の先生が言っていたことを思い出す。
『東桂木さんの病気は、本当なら手術も必要なんです』
なら、どうして一葉さんは手術を受けないんだ?
金か? 金が足りないのか?
いや、あんな大きな家に住んでいてそれはないだろう。
だとしたら、やっぱり両親だろうか。
一葉さんが手術を受けない理由に、彼女の両親が関わっているのかもしれない。
もしくは僕の知らない何かが……。
どちらにせよ、僕には何ができるのだろうか。
何かをしなければならないような気がはしていても、具体的な行動は考えつかない。
どうすりゃいいんだ、僕は。
こういう時、誰かが答えを教えてくれればいいのに。
「あれ、こんなとこで何してんの、シン」
聞きなれた顔を上げると、そこには意外な人物が立っていた。
「……世奈?」




