料理のできる彼女
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「お待たせしました、真くん」
そう言って部屋に戻って来た一葉さんはお盆を抱えてて、そしてエプロン姿だった。
制服の上からエプロン……素晴らしい!
え、裸エプロン? 何それ。
「あ、僕が運ぶよ。言ってくれたら台所まで取りに行ったのに」
「良いんです良いんです、真くんはお客様ですから。そちらへどうぞ」
一葉さんが僕に、部屋の真ん中に置かれたローテーブルの前へ座るよう促す。
僕はテレビを消して彼女の指示に従った。
僕がテーブルに着くと、一葉さんがお盆を僕の前においてくれた。
そこにはふわふわの卵が食欲をそそる親子丼とお吸い物、そして付け合わせの漬物の小皿が載せられていた。
「うわ凄い、美味しそう」
「そ、そうですか? 喜んでいただけたようで何よりです」
照れたように頬を少し赤くしながら一葉さんが言った。
「一葉さんの分は?」
「すぐ持ってきます。真くんは冷めないうちに召し上がってください」
「いや、待つよ。一緒に食べようよ」
「でしたらそうしましょう! ちょっと待っててくださいね!」
は、反応いいな。
もしかしたら一緒に食べようって言って欲しかったのかな?
だとしたら可愛いな。
部屋を飛び出していった一葉さんは、自分の分の親子丼の載ったお盆を抱え、すぐに戻って来た。
「そんなに慌てなくても」
「す、すみません。でも真くんが待ってると思うと、つい」
「………………あ、ああ、そ、そう」
なんか急に恥ずかしくなってきた。
大体、女子高生の部屋で女子高生の手作り料理を女子高生と一緒に食べようとしている今この状況で、よく平常心を保てているものだ、僕は。
何かきっかけがあればどうにかなってしまいそうだ。
「さあ、召し上がってください。温かいうちに」
「う、うん」
勧められるまま僕は箸を手に取り、親子丼を口に運んだ。
「どうですか、お味は……?」
不安げな表情で、僕の顔色を伺うようにしながら一葉さんが訊く。
「う、美味すぎる」
「うますぎる?」
「こんなに美味しいものを食べたのは生まれて初めてかもしれない。僕がミシュランの審査員でなかったのが悔やまれるよ。文句なしの星3つだったのに」
「あ、あはぁ、そぉですかぁ?」
表情を綻ばせる一葉さんは、ふにゃふにゃになりすぎて別の生物のようになっている。
「いや本当に。これなら毎日食べても飽きないね」
「本当に? そんなこと言うと、毎日作りに行っちゃいますよ?」
「そうしてくれると嬉しいな。僕一人暮らしだからさ」
「初めて聞きました。そうなんですか?」
「うん。両親が遠くに行っちゃってね」
「ふーん、そうなんですね……。訳アリですか?」
「そ、訳アリ。あんまり気にしないでよ」
「はい、そうします」
にしても本当に美味しいな。
そういえば世奈も料理できるんだったっけ……って、だからどうして世奈のこと考えてるんだ、僕は。
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