男子高校生・オーバー! (モンキーダンスを添えて)
「やめてと言ってもやめてもらえなかった女性が今まで何人いると思っているんですか? あなたの行動はそうした過去の歴史を無視するもので、到底許すことができません! 大体ですね、そのように男性が力で女性を抑え込んで来たという事実が現在の男尊女卑社会を創り出したのです! あなたはその象徴です!」
女の人は訳の分からないことを怒鳴りながら、僕の方へ近づいてくる。
マズい、このままだと僕が標的にされる。
「え、えーと、あの」
言い返すような言葉も思いつかない。
どうしよう。どうすればいい、世奈……って、また僕は世奈に頼ろうとしてるのか!?
何考えてるんだ、僕は! 世奈みたいな嫌な女とは縁を切ったんだから、これからは自分で自分のことを決めるんだろ!?
ちょうどその時バスが停留所にとまりドアが開いた。
咄嗟に僕は女の人を躱し、東桂木さんに駆け寄った。
「……え、佐藤、君……!?」
「エクソダス、するかい!?」
「えっ!?」
僕は東桂木さんの手を取って、そのままバスを飛び出した。
タイミングよく扉が閉まり、バスは発車していった。
……結局逃げるしかできなかったなんて、僕も情けないよなあ。
だけど、あの女の人も追っては来なかったし、結果オーライというやつか。
と、僕が一息ついていると、
「あの、佐藤君」
「な、何?」
「……私の手、なんですけど……」
ふと視線を下にやると、僕の手はしっかりと東桂木さんの右手を握っていた。
握ったままだった。
「あ、わ、その、ごめん!」
慌てて手を離し引き下がる僕。
その拍子に停留所のベンチに躓き、頭から転んでしまった。
い、痛い。
踏んだり蹴ったりだ。
泣きっ面に蜂とも言う。
しかも、学校のアイドルである東桂木さんの前で、こんな無様な姿を……!
昨日からひとつも良いことがないじゃないか。呪われてるのか、僕? そんなに前世での行いが悪かったのか!?
「大丈夫ですか?」
精神的ダメージの大きさに立ち上がる事さえできなかった僕の前に、心配そうな表情の東桂木さんが屈みこむ。
見え……いや、なんでもない。
「だ、大丈夫だよ、このくらい(『真っ黒なスイレン』を失ったことに比べれば)。それより、東桂木さんも災難だったね」
「ううん、佐藤君のおかげで助かりました」
「いや、結局何も出来なかったし、僕」
「そんなことありません。私だったらあんなこと出来ないし……尊敬しちゃいます」
起き上がると、東桂木さんは転んで汚れた僕の顔をハンカチで拭いてくれた。
や、優しい。柊世奈とは天地の差だ。
今日の元ネタ解説!
「エクソダス、するかい!?」
富野御大の名作「キ〇グゲイナー」に出て来る名台詞。
ほとんど文字通りの意味。みんなも見よう!