そして、初デートへ・・・
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「うぅ……フレディが死んじゃうなんて……うぅ……っ!」
映画館を出て一葉さんの顔を見ると、涙でぐちゃぐちゃになっていた。
上映中も隣からずっとすすり泣く声が聞こえるなあと思ってたけど……。
「ま、まあ、確かに感動的な映画だったね」
観たのは、昨日世奈と一緒に見たのとはまた別の映画だった。
さすがに初デートでアニメ映画を見に行く勇気はなかったからだ。
「ラストのライブシーンが良かったですねー! でも、あの後すぐ死んじゃうと思うと……ううぅ……」
再び泣き始める一葉さん。
そのせいで目の周りの化粧が落ちて、隈取をした化け物みたいになっている。
どれだけ厚いメイクをしてたんだろう。一見すると化粧しているかどうかわからない風だったのに。
ナチュラルメイクというのはナチュラルという呼び名の割にとてつもなく時間がかかると聞くし、そういうものなのかもしれない。
「落ち着いて、ちょっと顔洗って来なよ。僕もトイレ行きたいし」
「う、うう……ぞう゛じま゛ず……う゛う゛……っ!」
一葉さんは嗚咽を漏らしながらトイレの方へ歩いて行った。
美少女が鼻水を垂らしながら泣きわめく姿なんて、滅多に生で見られるものじゃない。
ラッキー。
……え?
性癖が歪んでる?
勘違いするな、僕はAVをちゃんとお金を出して買うタイプだ。
違法配信サイトでハードな拘束プレイをタダ見しているような連中とはわけが違う。
―――いや、言い訳になってないか。
この話はこのくらいにしておこう。
別に僕は尿意も便意も感じていなかったが、トイレに行きたいと言った手前もあり、一応本当にお手洗いへ行った。
そして何もすることなく、適当に手を洗って戻って来た。
少しすると、さっぱりした様子の一葉さんがトイレから出て来た。
ちなみに今日の一葉さんのファッションは、丈の短いデニムスカートに黒タイツ、オーバーサイズのパーカーという案外ラフなものだった。
ゴリゴリのゴシックロリータドレスとかで来られたらどうしようかと思っていたから、ちょっとだけ安心した。
「お待たせしました、真くん」
「いや、全然待ってないよ」
一葉さんの顔はさっきとあまり変わっていないように見えた。
ただ、唇や頬の色を見るにメイクを落としたのは間違いないようだった。
というかむしろ、化粧してない方が可愛いじゃん。
「……私の顔、何か変ですか? あ、やっぱりメイク落としちゃったから……」
慌てたように自分の顔をぺたぺた触る一葉さん。
「いや、可愛いなと思って……」
「え」
みるみる内に赤くなっていく一葉さんの頬を見て、僕は自分の失言に気が付いた。
いきなり何を恥ずかしいこと言ってんだ、僕は!?
「あ、えっと、今のナシ―――いやナシってわけじゃないけど、可愛いのは本当だけど、えーと……」
慌てて弁解する僕だったが、それは周囲の視線を集める効果しかなかった。
「きゅ、急に可愛いなんて言われると、私、照れちゃいます……っ!」
僕のシャツの裾を握りながら一葉さんが言う。
「ご、ごめん。とりあえず、お昼食べに行こうか?」
「は、はい」
お互いに気まずくなったまま、僕らは映画館を後にしたのだった。
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