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どういうつもり?


「あーあ、余計な運動しちゃった。あんたの責任なんだからね、シン」


 伸びをしながら世奈が言う。


「うるせえな。お前が勝手に首突っ込んできただけだろ」

「はあ? あたしが居なきゃあんた今頃大変なことになってたわよ? 恩人に対してその態度は何なのよ!」

「お前が今まで僕にしてきたことを考えればぶっちぎりでマイナス評価だよ!」

「~~~~っ! 大体ねっ! その『お前』って言うのやめなさいよ! どうして世奈って呼んでくれないの!?」

「これは……僕がお前と縁を切った証みたいなものなんだ! どうしてもって言うなら柊さんって呼んでやる!」

「なんでそんなに他人行儀なの!?」

「他人だからだ! 分かったか、柊さん!?」

「ッ……分かったわよ! あたしもあんたを幼馴染とは思わないんだからね!」

「是非そうしてもらいたいね! ああ、せいせいするよ!」

「私もよ! もう帰るっ!」


 世奈は、地面が割れるんじゃないかと思うほど強く回れ右をして僕に背を向けた。


「……あれ、そういえばお前部活は? ソフトボール部だったよな?」


 こいつが空手をやっていたのは中学までで、高校からはソフトボールを始めたのだ。


 抜群の運動神経で、入部すぐにレギュラーの座を勝ち取ったらしい……ムカつくことに。


「昨日の夕方からついさっきまで忙しかったのよ、野暮用でね」


 僕に背を向けたまま世奈が答える。


「野暮用? 柊さんも大変だなー、同情するよ(棒)」

「全く感情籠ってないわね……。そのカード探すの、大変だったのよ。道路わきの植木に引っかかってたんだから」


 軽くこちらを振り返った世奈の視線が僕とかち合う。


「……え、今なんて?」

「何でもないわ。じゃあね、シン」


 片手を振りながら、世奈は夕日の方へ歩き始めた。


「ま、待てよ! まさか野暮用って……!」


 そういえば今日は朝から世奈の姿を見なかった。


 まさか、あいつが今日学校に来てなかったのはこのカードを探してたからじゃ―――。


「う、うぅ……」


 僕の思考は、地面に転がっていた男のうめき声で中断された。


 この人たちの存在をすっかり忘れていた。このまま放っておいていいんだろうか。


 ……保健室、まだ開いてるかな?



※※※



 親衛隊の身柄を保健室の先生に引き渡した僕は、ようやく帰路につくことができた。


 まったく、余計な事件に巻き込まれてしまった。


 こんな風に目立つつもりじゃなかったんだけどな。……いやマジで。最悪の目立ち方だろ、これ。


 だけど『真っ黒なスイレン』も帰って来たわけだし、結果オーライというやつだ。


 と、その時、足音が聞こえた。


 振り返ると、鞄を持った一葉さんがこちらへ駆け寄って来るところだった。


「真くん、今お帰りですか?」

「そうだよ。一葉さんも?」

「ええ、そうなんです」


 苦しそうに息を上げながら、一葉さんが笑う。


「……そんなに走って、大丈夫なの?」

「あはは、真くんを見かけたらいてもたってもいられなくなっちゃって」


 うわ。


 嬉しい。


 そしてやっぱり可愛い。



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