床がキンキンに冷えてやがる・・・っ!
「ふーん、要らないんだぁ、これ。ま、あたしには必要ないし、適当に捨てちゃおっかな」
「よ、寄せ! やめろよ! っていうか何でお前がそれを持ってるんだよ!?」
「あんたには関係ないでしょ? で、いるの? いらないの?」
「い、いるいる! いりまくる!」
僕が『真っ黒なスイレン』に手を伸ばすと、世奈はそれを待っていたように手をひっこめた。
僕の手は空振りして、僕は再び地面を転がることになった。
「だーめ。おあずけ」
「ふざけるな! 僕のだろ!? それなのにお前のせいで失くしちゃったんだ!」
「それは分かってるわよ。誰も返さないなんて言ってないでしょ!? 条件付きで返してあげるって言ってるの!」
「条件付きだって?」
何を言い出すかと思えば。
そんな不条理で理不尽極まりない要求なんて受けられるか!
―――し、しかし、『真っ黒なスイレン』のためなら……。
「そうよ。あんたさ、あたしをブロックしてるでしょ?」
「ブロック? そんなデュエルマス〇ーズみたいな……」
「誰もシールドブレイクしようってわけじゃないのよ。アプリの話、アプリの!」
ああ、納得がいった。
そういえばブロックしたんだった。
「ブロックしたよ。それがどうかした?」
「解除してくれるなら、このカードを返してあげるわ」
なんてことだ。
ようやく世奈の呪縛から逃れられると思ったのに。
……いや、待てよ?
向こうが交渉をするつもりなら、僕が有利な条件を突きつけてやることもできるんじゃないか?
「そっちがそういうつもりなら、僕からも言いたいことがある」
「きゅ、急に何よ。あたしに言いたいこと?」
焦ったような様子の世奈。
僕から条件を出されるとは思わなかったのだろう。フッ、チョロいぜ。
「第一に、お前からメッセージを送ってこないこと。第二に、僕の頼みを断らないこと。これが条件だ」
「はぁ? シンのくせにあたしのやることに文句があるわけ?」
「ふーん、そういう態度か。別に僕は構わないんだぜ、お前をブロックしたままでも。むしろその方が良いくらいだ」
「……じゃあ、このカードを今ここで破ったって良いって言うの?」
「ああ、構わない」
「!」
世奈の顔に明らかな動揺が走る。
……普通なら、ここは引く場面だ。
目の前にある数万円をドブに捨てるような真似はできない。
出来ない―――が、僕が世奈の呪縛から逃れるためには引くわけにはいかない。
だからこそ、命にも代えがたい『真っ黒なスイレン』を捨てるようなことをする。
今僕が世奈と奪い合っているのは、実は数万円のカードとか連絡先とかじゃないんだ。プライドなんだよ!
不合理に身を委ねてこそ交渉……っ!
狂気の沙汰ほど面白い……っ!!
いや、面白くはないか。
だけど、この僕の態度が功を奏したらしく、世奈は諦めたようにため息を吐くと、
「……分かったわよ。あたしの負け。あんたの言うことを聞いてあげるわ」
「やけに素直だな」
「うっさいわね。別にどうだっていいでしょ。ほら、返してあげる。今度は失くさないようにね」
「あ、ああ」
僕は世奈から『真っ黒なスイレン』を受け取って、制服の内ポケットに大事にしまった。
「……ところでシン、ひとつだけ気になったんだけど」
「なんだよ」
「どうしてM〇Gにもブロックがあるのにデュ〇マの方を例えに出したのよ」
「……ひとえに日本国内における知名度を勘案した結果だよ」
意外と細かいところに拘る奴だな……。
ほっとけ。
蛇足な元ネタ解説!
※1 「今僕が世奈と奪い合っているのは――」
某、ざわざわする麻雀漫画の親作品から。熱い三流なら上等。葬式編は泣きましたね……。
※2 「不合理に身を委ねてこそ――」「狂気の沙汰ほど面白い」
某、ざわざわする麻雀漫画から。アニメ版の声優は俳優にして麻雀プロでもある萩原〇人。
※3 「どうしてM〇Gにもブロックがあるのに――」
初期の勝舞君がM〇Gやってたのを知ってるキッズって何人くらいいるんだろうか……。
ところで、ガルドのイエスマン=ヤエサル説ってどのくらい信憑性あるんですかね?
次回もサービスサービスぅ!




