雨宿り
国語の教科書にある感じの文章を作ったつもり。
雨が降ってきた。刺さるような雨だった。ねずみは、雨に濡れたくないので、ぽつんと建っていた古い蔵に入った。
古い蔵に入ると、そこには濡れた大きな鬼がいて、小さなねずみを鷲掴みにした。
「やめてくれ、俺は雨宿りしに来ただけだ。あんたを非難する気はないし、危害を加えるつもりもない。」
鬼はしばらくねずみを睨んだが、やがてその顔は悲哀に満ちたものとなり、ついにねずみを手から離してしまった。
「それでいいんだ。」ねずみは優しく鬼をなだめた。
二人、鬼とねずみ、静寂は雨が紛らわしてくれる。
しばらくするとねずみは口を開いた。
「なあ鬼さん、どうしてあんたはこの古い蔵まで来たんだ?」
「俺はたまたま通りがかっただけで、第一どんな場所でも雨に濡れさえしなければよかったんだ。」
「でもあんたは違うだろう。」
「こんな暗いところは、あんたのいるべき場所じゃないだろ。」
「こんなところまで用のある人間はだれ一人いないのに。それに、」
ねずみはさらに問い続けていた。
「なぜあんたの肌はそんなに赤いんだ?」
その言葉に鬼は激怒し、ねずみを握りつぶす勢いでまた鷲掴みにした。
「おいこのやろう、お前に俺の気持ちがわかるのか。」
「わからないね。あんたは俺じゃない。この小さなねずみがあんたのような鬼の気持ちなんてわかるわけがない。」
「でもよく聞け、あんたが同じことを繰り返せば、あんたはこの俺より小さくなるだろう。」
「あんたはもうここまで来てしまっているんだ。」
「暗いだろ。凍えるだろ。この蔵は。」
ねずみの勢いが増すのは、同時に鬼の力がなくなっていくからである。
あの時の鬼の怒りはとうに消え、残されていたのは濡れた顔だけだった
「たまには雨に打たれると良い。雨はきっとあんたのその赤を落としてくれる。」
鬼は静かにねずみを置いて、蔵の外へと抜けだした。
雨はそのうち晴れる。
ねずみもまた、鬼を追うようにして雨の外へと抜けていった。
国語の教科書ってついつい読み漁っちゃうよね。