ヒモとして彼女の家に転がり込んでる俺が彼女を驚かそうとベッドの下に隠れて帰りを待っていたら彼女が他の男を連れて帰ってきてベッドの上でイチャイチャし出した!?
俺が真紀の家にヒモとして転がり込んでから、早や一年が経った。
だが俺は、「ヒモって楽なんだろ?」と思われるのは心外だ。
ヒモはヒモなりに、色々と気苦労も多いんだぜ?
真紀が仕事から疲れて帰ってきたら、優しく声を掛けて甘やかせてやるし、逆に甘えてほしそうな顔をしてる時は、猫撫で声で甘えてやったりとかな。
日常にちょっとしたサプライズを仕掛けて、真紀を飽きさせないってのも仕事の一つだ。
てな訳で、今日も俺はベッドの下に隠れながら、真紀の帰りを待っている。
真紀が帰ってきたら、ここから飛び出して真紀を驚かせてやるのさ。
真紀のやつ、どんな顔するかなぁ。
俺は一人ほくそ笑んだ。
――その時だった。
ガチャガチャと玄関の鍵を開ける音が俺の耳に入ってきた。
真紀が帰ってきた!
俺は声を潜めた。
――が。
「へえ、ここが真紀の家か。結構綺麗にしてんじゃん」
「恥ずかしいから、あんま見ないでね」
っ!?!?
聞き覚えのない男の声がして、俺は思わず叫び出しそうになってしまった。
だ、誰だこの男は!?
まさか……、真紀が浮気!?
……いや、そんなバカな。
真紀は俺にベタ惚れなはずだ。
昨日だってこのベッドで二人で寝たんだ。
そんな真紀が……、まさか……、まさか……。
「よし、じゃあ早速」
「え、何? って、キャッ」
っ!?
ドサッという音がして、俺の真上に二人の人間が倒れてきた感覚がした。
オイオイオイオイオイ!!
やめてくれ、やめてくれよ!!
俺がここにいるんだぞ!?
正気なのかお前ら!?
「もう……、がっつき過ぎじゃない?」
「へへ、そう言う割には、全然抵抗しねーじゃねーか」
「まあ……ね」
「まあ……ね」じゃねーわ!?
何、「まあ」と「ね」の間に、ちょっとタメを入れてんだよ!?
俺がここにいるんだよ!?
男の方はまだしも、何で真紀は俺のことを全然気にかけないでおっぱじめようとしてんの!?
……あれ?
何かおかしいぞ。
ひょっとしてこれ、小説とかでよくある、実は俺は既に死んでて、幽霊になってて真紀には見えてねーとかいうオチなんじゃねーだろうな!?
……いや、そんなことはないな。
俺の身体は透けてない。ちゃんと実体だ。
「真紀……、真紀……」
「んん……、ダメぇ」
っ!!!
ああ!!
もう我慢できねえ!!
もうどうにでもなれ!!
ここから出て、文句言ってやる!!!
「ニャー!!」
「うおっ!? 何だこの猫!?」
「あら、タマ。いないと思ってたら、ベッドの下なんかに隠れてたの? この子、私のペットなのよ」
「何だ猫飼ってたのか。それならそうと早く言ってくれよ。よしよしタマ、これからよろしくな――って、痛ッ!! メッチャ引っ搔いてくるこいつ!?」
おわり