エミル・マクギリス
ついに戦いが!?
クラスマッチが掲げられた2週間後、生徒達は大演習場に集められていた。
ここ大演習場は魔力操作により形を変えたり色々な効果を空間に付与する事のできる特殊な場所だ。
「今日はここで模擬戦をしてもらう。ルールはクラスマッチ同様相手を戦闘不能又は拘束した方の勝ちになる。そしてフィールドには戦闘で死なないようダメージ半減の魔法と殺傷能力の高い攻撃は強制拘束にかかる魔法が付与されている。そこをしっかり頭に入れておくように。」
今回のクラスマッチでは生徒が死なないための配慮として2つの魔法が付与されているが特に注目すべきは2つ目である。この2つ目の魔法により戦いはかなり制限されてしまう。しかし馬鹿みたいにこんな所で死んでしまわない配慮としてはいい魔法である。
「やっと私達の力を周りに知らしめる時が来たのね!見せつけていくわよアルト!」
相変わらずエミルはやる気に満ちている。
アルト的には目立たず何事もなく終わらせたいところである。
「今回のステージは森林。見通しの悪いステージとなっているので頭を使って戦うように説明は以上だ。」
「1戦目はアルト、エミルペア対ミーナ、メレムペア」
「よーしいい所見せたげるわ!」
2人は指定された円の中へと移動した。
「それでは1戦目を始める。レディーファイト!」
掛け声と共に大演習場は森林へと変貌した。
そこはまるでほんとに森林へと転送されたかのような広さである。
「思ってた以上に広そうだな。」
「まぁ相手を見つけたら仕留めるそれだけよ。」
エミルは軽快に森林を進んで行く。
「あまり先走るなよ。」
そう言いながらもエミルの後を着いていくアルトであった。
バトルが始まり数十分がたった頃
「こうも視界が悪いとなかなか見つけられないわね。」
「まぁそんな時ほど慎重に、」
アルトが言葉を言い終える前にエミルが突如強く地面を蹴り駆け出した。
「敵を見つけた!」
「ちょっエミル待て!」
「1人目!」
エミルは人影に高速の一閃をお見舞いする。
しかしそれは罠であった。
その人影はミーナの作った幻影であった。
「貰った!」
その一瞬の隙を逃さず陰に隠れていた金髪長身の少年メレムが鞭でエミルを縛り上げた。
そこに追い討ちと言わんばかりに木の上に隠れていた茶髪のおっとり系女子ミーナが麻痺矢を打ち込み、エミルは戦闘不能となった。
「あちゃー、だから言ったのに。」
苦笑いである。
メレムとミーナは1人仕留めたので一旦体制を立て直そうと引き返そうとした。
しかし1度姿を表した相手をアルトが逃すはずがない。
メレムとの距離を一瞬で詰め蹴り一発で気絶させた。
ー別に魔法使えばこんな戦い一瞬で終わるんだけどなー。強制拘束になったら洒落にならないし仕方ないか。ー
メレムが一瞬で倒された事により同様したのかミーナは足を滑らせ下に落ちてきた。
アルトはミーナに拘束魔法を掛け戦いは終焉を迎えた。
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大演習後
「なんか拍子抜けだったよねー。」
「エミルって頭もいいし伝説の武器も召喚してたからもっと凄いと思ってたのに何かこうぱっとしないって言うかなんと言うか。」
エミルは落ち込んでいた。
今日1度も活躍することは無く全試合で戦闘不能を起こしていた。
「それに比べてアルトくん強すぎ!結局今日1度も武器を使わずに終わらせちゃったよ。」
こっちの気も知らないで周りが騒いでいる。
「大丈夫気にするな。俺はお前を知っている。お前は容量が悪いだけだ。これから見返してやればいい。」
エミルは走って家に帰ってしまった。
その後2週間エミルは学園に姿を見せなかった。
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エミルは幼い頃虐められていた。
人と言う生き物は強い者を称え弱い者を虐げる。
何とも醜い世界である。
そんな世界を俺は幼い頃滅ぼしてやろうと考えていた。
しかし奴がその考えを変えたのだ。
エミルは弱いながらも立ち向かった。
そして努力した。
その結果エミルは虐めっ子を返り討ちにすることに成功したのだ。
俺はその後エミルが強者を演じ弱気を従えると思っていた。
しかしエミルは違った。
怠慢せず、努力を続け、弱気を助け、強気を制す。
そんな奴に俺は引かれた。
「何故そうも人に優しくできる?あれだけ虐められていたのに。」
「争うより優しくした方が楽しいし何より平和でしょ?そんな事より一緒に遊ぼ!」
人間は脆く脆弱で弱く、傲慢で醜い生き物だとばかり思っていた。
しかし俺を産んだ親の優しさに触れ、エミルを見て人の強さと優しさを感じた。
そしてこの平穏で平和な世界をもっと見たくなった。
俺は今でもあの言葉とあの笑顔を忘れない。
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クラスマッチ当日
エミルはアルトの前に現れた。
「ごめんね。2週間も姿見せなくて。」
「お前のことならわかってるかは気にするな。」
エミルは少し微笑んだ。
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講義室
「あっエミルだ!2週間も休んでどうしちゃったの?体調でも崩した?」
クラスメイトが話しかけてくる。
「大丈夫大丈夫!たいしたことないから。」
笑顔で答えその場を後にする。
「あまりの自分の弱さに逃げ出したと思ってた。」
「カーミナルブレードとアルトくんが可哀想。」
「お荷物にだけはならないで欲しいわね。」
クラスメイトの陰口にアルトは珍しく怒りを動こうとするがそれを静かにエルミが静止した。
「あんな奴言わせとけばいいのよ。」
アルトに笑顔をなげかけた。
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大演習場
「これからクラスマッチを始める。ルールはトーナメント制、拘束もしくは戦闘不能の時点でその者はその戦いから敗退。相手メンバー2人を拘束もしくは戦闘不能にした時点で勝利となります。フィールドはランダム設定とし、そしてフィールドには戦闘で死なないようダメージ半減の魔法と殺傷能力の高い攻撃は強制拘束にかかる魔法が付与されています。」
「アルト、頼みがあるの。」
いつもより真剣な面持ちでエミルは決意を語る。
「今回のクラスマッチほんとに私がかなわない時以外手を出さないで欲しいの。」
「アルトに頼りっぱなしも嫌だしね!」
いつも通りの笑顔を見せた。
「なら今回は任せたぞ。」
アルトも笑みを残した。
「それでは1回戦、アルト、エミルペア対セシル、レムルペアの試合を始めます。両ペアは円の中へ。」
そして2人は円の中へと入った。
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森林ステージ
エミルとアルトは森林の中を慎重に進んでいた。
「よし。この場所で良さそうね。」
カーミナルブレードを抜き魔力を集中する。
「索敵現象魔法霧の使い。」
自分を中心として森林中に霧が立ち込める。
「この魔法はこの霧の中にいる生物全ての居場所、動きを察知することが出来るの。私のこの2週間をとくと見せてあげるわ!」
アルトは知っていた。
何故なら家が隣りだからだ。
そしてこの2週間誰よりも戦いを研究し、自分の力を探っていた事を。
何故ならこいつは庭でそれをしていたからだ。
もうわかっていると思うがエミルは勉強は出来るが馬鹿なのだ。
だけど誰よりも真っ直ぐで馬鹿正直な女なのだ。
「見つけた!これで仕上げ!このルールのこのステージで私が負ける事はほぼありえないは!水拘束魔法エルビズグルゲイル!」
霧の使いで索敵した相手の周りの霧が水の球体へと姿を変え拘束する。
「逃げようとしても無駄よ。霧という水蒸気が立ち込めている以上逃げ場はない。」
この水の拘束は相手が窒息するまで続くと言う。
「もうあたしの事を足でまといだなんて思わせないは!」
エミルはドヤ顔でアルトを見る。
「別に最初から足でまといだなんて思ってないよ。」
アルトは軽く微笑んだのであった。
その後もエミルの強さは衰えず決勝戦へと駒を進めるのであった。
そして番狂わせの決勝戦が始まるのであった。
圧倒的力を誇るアルト、エミルペア
しかし決勝戦で何かが起きる!
番狂わせの決勝戦をお楽しみに!




