表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

キオクの行き先

作者: 騷音 翠

 そこは、此方からでは観測できない世界



 ソレはいつも記憶を見ていた。

 記憶の波に身を任せながら。


 ソレはいつでも誰かの記憶を見ている。

 「楽しい」「嬉しい」を喰らうために。


***

 ――ヒトは何故、記憶を失うのか


 「ヒトは忘れる生き物」と言った者がいたそうだが、それは正しくない。

 正しくは、「ある生物がヒトの記憶を喰らい、記憶を喰われたことで思い出せなくなる」だ。


 まあ、それも仕方がないだろう。だれも「その生物」がいる世界を観ることはできないのだから。



 では何故ソレは記憶を喰らうのだろう。それは「楽しい」や「嬉しい」を知りたいからだ。だからヒトは楽しかった記憶を忘れ、嫌な記憶ばかり思い出す。

 どうして嫌な記憶は食べないのか?それは簡単だ。誰だって「痛い」「苦しい」は嫌いだろう。ソレにだって意志があるから、食事は好きなものだけを食べるのだ。


 ここまでの説明で、その生物が意思を持って、餌を選択していることは理解できたと思う。

 では次に「記憶喪失(健忘)」について説明しよう。



 記憶喪失は外傷性だろうと心因性であろうと、基本的には強い衝撃を受けた場合に起こることがある。

 では何故、強い衝撃を受けると様々な記憶を失うのか。ヒトの記憶の仕方に理由がある。


 ヒトの記憶は「あやふや」なもので、放っておけば混ざりあい全く別の記憶になってしまう。それを防ぐために、ヒトの記憶は箱の中に仕舞ってある。けれど強い衝撃によって、その箱が壊れ中の記憶が混ざってしまう。

 こうして混ざってしまった記憶を、その生物はは「楽しい」や「苦しい」とは認識できず、ただの「記憶の形をしたもの」と認識し、まるごと平らげてしまう。

 これが逆行性健忘のプロセスである。


 では前向性健忘はどうなのか。前向性健忘の場合は、箱が壊れるのではなく、箱を巧く作れない、又は箱に上手く仕舞えない。そして時間が経つと記憶は箱の外に出る。

 これが前向性健忘のプロセスだ。



 ――中略――



 その生物はヒトが生きている限り、いや、記憶を続ける限り切り離せない存在なのだ。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 難解な要素を噛み砕いて理解しやすい言葉に置き換えている。 筆者の技術力の高さが読み取れる。 興味を惹かれるし、独特の世界観とサクサク読める文体がとても好み。 他作も少しずつ読ませて頂くね。…
2018/08/16 09:07 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ