7、罠士のチート
文章構成とか文法とか拓人に話す内容を纏めて推敲して部屋に戻ると、拓人が椅子に座って待っていた。
「大陸、どこで食べてたんだ?」
「あ? 聞いてないのか……別室だよ」
「え、僕もちゃんと食べさせてくれたのに……」
「罠士はレア天職なんだってよ。だから勇者とほぼ同列に扱うらしい」
「そうだったのか……なんかごめんね」
「別にいいさ。拓が謝る要素がない。楽しかったか? 光輝とか、みんなも含めて」
拓人がここまで話して来ると思っていなかったので、俺は考えていた話を後にする。
「まあ、楽しそうにしてたのは風見くんの一行と軽澤くんの衆くらいだったかな……。その他はみんな俯いての食卓だよ。奥井さんと僕しか大陸を探してなかったし。あと光輝がなんか調子乗ってた気がするのと、紫さんがいなかった気がするな……」
「へえ、まあ本当なら皆そうしたいのはやまやまだろうしな」
「光輝は多分、そのうち俺達を無能って呼ぶ輩に加わるかもね。そんな感じした。僕はどれだけ大陸が冷遇されようと大丈夫だよ? 大陸には返しきれない恩があるしね」
拓人は真剣な顔でそう語る。
時々拓人は光輝が馬鹿だと言うような発言をする。こいつらの仲はいまいち分からん。
「拓、明日から訓練が始まるみたいだし、こんな態度が結構続くことになるだろう。だけど、折れんなよ?」
「分かってる。今まで僕が置かれてきた状況をなんだと思ってるのさ」
「それで、拓にはできるだけ無能な怠け者を演じて欲しい」
「え?」
よし、ここからが本題だ。
「俺達はそのうち城を出る。そのためのちょっとした準備だ。そんで、明日ちょっとエアーズキャッスル行くぞ」
「い、いや、謎が増えるだけなんだけど」
「罠士っつーのが結構いい天職なんだよ。多分駿とかその辺より全然強くなる」
「ごめん。未だ理解不能」
俺は説明をする。
罠士の場合、自身が設置した罠で倒した魔物の経験値がそのまま入ってくる。つまり、継続的な罠なら放置プレイでレベル上げが出来るわけだ。
俺は、エアーズキャッスルの大型モンスターが住むとされる湖に毒を投げ入れる予定でいる。毒は準備済み。圭一先生に貰った毒草だ。あれを図鑑で調べてみたところ、およそ1京倍に薄めても尚即死効果を発揮するかなり強力に恐ろしい凶悪な代物の様なのだ。まあそのおかげで楽にレベル上げができそうな訳だが。
さすれば無事拓人はチート化! あとは城を出てのんびり無双すればよし。そして俺は理想のヒモ生活を手に入れる! まあこんなことは口に出せないが…………
「ってなわけだ」
「うーん、それはつまり、僕が皆より強くなれるってこと?」
「ってなわけだ」
「まあ大陸に付いて行けばいいってことか」
「……ってなわけだ」
「僕が行く必要性は?」
「ってな…………拓が毒投げないと拓の罠にならない」
「なるほど了解」
こうしてチートへの道筋を立てた俺達は、片方はウハウハ気分で、もう片方はこれからの不安を手に寝床へ入った。
「寝れない」