表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

第2話:通信簿と誕生日

 ぽかぽか良いお天気で春うらら。の今日は3学期最後の終業式。

小学3年生だった私は終業式を終え、ランドセルと2つの手さげカバンをこれでもかと膨らませて帰り支度をしていた。

「春休みに入る前に教材は持って帰るように言ったでしょ!!」

と担任の先生が異様に声を張り上げていたが、そんなの知ったことじゃあない!何せ明日から春休み第1日目を迎えるのだ。


肩に荷物を食い込ませ、うんせうんせと家路を歩いていると、後ろから兄がランドセル一つで私をヒョイと抜き去った。

「ちょっと待ったー!」

「無理」

え”−−−

兄への嘆願はあっけなく砕け散り、澄ました顔で私の前をサクサクと歩いていく。

 家に着くと、母がお出迎え。

「はい、通信簿は?」

その声にたじろぐ私をよそに、学校から持たされた通信簿を兄が母に渡した。

「おお〜、さすがだね〜」

横から覗くとキャー眩しいオール5の通信簿。

クラスでもなかなかお目にかかれないその眩しい通信簿は、毎年のように我が家に届けられている。

「あんたは?」

「無い」

「無いわけないだろー!」と私の荷物を家族3人がかりで探してくれて、掘り出された私の通信簿が公開された。

「お!図工が4になっているね!」

えへ。 何かと良い所を探しては母は私を褒めてくれる。

だけどね、母、図工の時間に提出したからくり箱、実はお兄ちゃんが作ったの。これ内緒♪


 さて、次の日。休み第一日目から早速友達とエンジョイして夕方に家に帰ると、おばあちゃんが、テレビを凝視中。

「お母さんは?」

「居るように見えるか?」

おお、いつもながら簡潔で分かり易いお答え。

「お前、今日誕生日だよな」

お兄ちゃんが声をかけてきた。

!?そうだ!!今日はマイバースデイだった!やばい、すっかり忘れていた。

時計を見るとすでに20時を回っている。そうだ、思い出した。去年の12月、兄の誕生日会の時「お前の誕生日ケーキも大きいの買ってくるからね」と母が私に言っていた。

ウキウキわくわく、ドキドキドキドキ・・・


・・・・再度時計を確認。針は22時を指して終わったところだ。

う〜ん・・来ないねぇ母。

家族3人がしびれを切らしていた頃、ようやく母が自慢の真っ赤に輝く軽自動車に乗って帰ってきた。

!!「お帰りーー!」

黄色いを通り越して超黄色い声援で母を迎えた。

しかし、母の手には荷物らしきものと言えば、近所の商店の買い物袋一つしかないようで。

「ただ今帰りましたよっこらせ」と入ってきた母は少し酒臭い。

か細い心臓が震える。まさか?一応聞いてみた。

「今日何の日か知ってる?」

「もっちろーん」

と買い物袋から取り出し見せてくれたのは、りんごパン。まさかのあのりんごパン。

確かにケーキと同じ丸い形をしているけど。

それから母は自分のポケットからライターと3本のローソクを取り出し、あのりんごパンにぶっ刺し歌い出した。

「ハッピィバースデイ To you〜♪」


え”−−− え”−−−−−!!


その後、私は祖母と兄に慰められるも、立ち直るのに長い時間を必要とされた。

「私って幸せよね?」

疑問に感じた年であった。めでたし、めでたし?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ