表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/17

第2節 シモーネ

「何なんだよ!! あの男はよ!!」

 部屋に着くたび、ダンテが大声で怒りをぶちまける。

「『ノースアカデミー』の『闇の法』の教授、『ショーン・メルケル』氏だよ……僕が元々所属してた研究室の教授だよ」

「な--!? じゃあ、昔の師匠ってことかよ!?」

「まあ……そうだね」

 ドミニクがげんなりとした表情で呟く。

「すみません……皆様お疲れのところ、早くお部屋にご案内できればよかったのですが」

 シモーネが申し訳なさそうに頭を下げる。

「シモーネさんは何も悪くないだろう、顔を上げてくれ。それにしても--着いて早々、洗礼を受けるとは、この先が思いやられるな」

 ロックは深くため息をついた。

「この次は、絶対にあんな目に遭わせませんから!」

「へ? あ、あぁ」

 先ほどとは打って変わって、力強い様子のシモーネに、ロックは少し呆気にとられる。

「あの人! 開催日の2日前からやってきて、ここでやりたい放題なんです! 準備中だって言ってるのに、会場に何度も押し掛けるし! 担当の子だって、他に仕事があるのに、あの人の世話をしなくちゃいけなくなっちゃって、2日間も余計にですよ--!? しかも--」

「ふふっ」

 ユリアが小さく笑った。

「あっ--! すみません、つい……」

 シモーネはハッとして口元を抑える。

「フフフッ」

 ドミニクが笑ったのを皮切りに、ロックとダンテも笑い出す。

「あんた、結構言うじゃねぇか。俺の妹に似てるぜ」

 ダンテがケラケラ笑いながら言う。

「あぁ、最初のイメージと違うな。典型的な巫女って感じだったんだが、今時のお嬢さんだったか」

 ロックも楽しそうに笑い続けている。

「す、すみません」

 対するシモーネは気まずそうに顔を赤らめている。

「何も謝ることなんかない。あなたが我々の担当でよかった。これから3日間、よろしく頼む」

「は、はい!」

 自分が担当でよかったと褒められたシモーネは、ますます顔を赤くする。そうなると、肌の白さが余計に引き立つようだ。


「あの、では、遅くなりましたが、お部屋のご説明に入らせて頂きます。今いるお部屋が応接室をかねた居間になります。キッチン、トイレ、お風呂等の水回りへは、こちらのお部屋からご移動いただくことになります。後、各自のお部屋を1つずつご用意させていただいております。居間の奥にお部屋を設置しておりますので、各自お好きなお部屋をご利用ください。鍵も付いていますので、女性の方でも安心ですよ」

「だそうだ。よかったな、ユリアさん」

「え? は、はい?」

「部屋の外には大浴場もございますので、お好きなときにご利用ください。24時間利用できます」

「何か、高級ホテルみたいだな……」

 ダンテが今更ながら場違い感を実感する。

「ふふ、神殿という場所柄、地位の高い方が多くお見えになるので、上も見栄を張ってるんですよ」

「言うなぁ、シモーネさん」

 ロックが嬉しそうに笑う。

「ここの子たちはみんな言ってますけどね、ふふ。では、私はこれで。会議のお時間になったらまた呼びに来ますので、10時前にはお部屋に戻ってらしてくださいね。それまでは、神殿を散策されていても大丈夫です。それでは」

 先ほどとは打って変わって人懐っこい笑顔を見せるシモーネに、一行は砂漠のオアシスを得た気持ちだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ