表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

電車

作者: 檜木ノマ
掲載日:2026/03/07

 それは田舎の電車だった。

 2両編成の、ゴトンゴトンと大きな音をたてて走る田舎の電車だった。


 時刻は昼過ぎ。

 電車の中には少しの人が座っているだけだった。

 私は手頃な席を見つけるとそこに腰掛けた。行かなければならない場所があった。


 私の正面にはひとりの老婆が座っていた。窓の外の風景を眺めているのか、ただ目の前の窓を見つめていた。


 本当に静かな車内だった。




 しばらくして電車が駅に止まった。

 数人が降り、誰も乗り込んで来なかった。

 再び電車は走り始めた。


 やがて電車は森の中を通過した。車内が急に暗くなった。

 車内に灯りが点く様子はなく、暗い車内のまま電車は走り続けていた。


 目の前の老婆はいつの間にか俯いた姿勢で下を向いていた。眠っているかのようだった。




 次の駅を知らせる車内放送が流れ始めた。

 ふと私は、自分がどこの駅で降りようとしていたのか考えた。答えはわからなかった。


 しばらくすると、再び電車が駅に止まった。電車の中にいた人々がさらに降りていった。

 電車の中には私と老婆だけが取り残された。


 電車はまた走り始めた。




 やがて車内に明るさが戻った。ようやく森を抜けたようだった。車内は静かなままだった。


 目の前の老婆は俯き、下を向いたまま動かない。


 私は自分の目的地について考えていた。

 行かなければならない場所があった気がした。だがどこで降りれば良いかがわからない。


 窓に映る景色はいつの間にか知らないものになっていた。


 ここはどこだろうか? 私はどこに向かっているのだろうか?



 行き場を失った私を乗せて、電車は進み続けていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ