電車
それは田舎の電車だった。
2両編成の、ゴトンゴトンと大きな音をたてて走る田舎の電車だった。
時刻は昼過ぎ。
電車の中には少しの人が座っているだけだった。
私は手頃な席を見つけるとそこに腰掛けた。行かなければならない場所があった。
私の正面にはひとりの老婆が座っていた。窓の外の風景を眺めているのか、ただ目の前の窓を見つめていた。
本当に静かな車内だった。
しばらくして電車が駅に止まった。
数人が降り、誰も乗り込んで来なかった。
再び電車は走り始めた。
やがて電車は森の中を通過した。車内が急に暗くなった。
車内に灯りが点く様子はなく、暗い車内のまま電車は走り続けていた。
目の前の老婆はいつの間にか俯いた姿勢で下を向いていた。眠っているかのようだった。
次の駅を知らせる車内放送が流れ始めた。
ふと私は、自分がどこの駅で降りようとしていたのか考えた。答えはわからなかった。
しばらくすると、再び電車が駅に止まった。電車の中にいた人々がさらに降りていった。
電車の中には私と老婆だけが取り残された。
電車はまた走り始めた。
やがて車内に明るさが戻った。ようやく森を抜けたようだった。車内は静かなままだった。
目の前の老婆は俯き、下を向いたまま動かない。
私は自分の目的地について考えていた。
行かなければならない場所があった気がした。だがどこで降りれば良いかがわからない。
窓に映る景色はいつの間にか知らないものになっていた。
ここはどこだろうか? 私はどこに向かっているのだろうか?
行き場を失った私を乗せて、電車は進み続けていた。




