表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
後宮の亀仙女 -怪異解決簿-  完全記憶能力をもつ主人公が、宮廷内の謎や事件を解決します  作者: 秋名はる
第一章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/36

第八話 芙蓉妃との再会


二人が宮での暮らしを始めてしばらく経った頃、陽春宮に住まう芙蓉妃の侍女から使いがあった。翠玄は再び芙蓉妃のもとに招かれることとなった。


陽春宮は、その名の通り春の日の麗らかな賑わいを感じさせる、可憐で華やかな宮だった。

広い庭には多種多様な花々や樹木を飾り、屋敷全体の彩りを飾っている。ほのかに香る秋の花の香が心地よかった。



侍女たちに案内されて屋敷の応接間に通されると、しばらくして奥から芙蓉妃が現れた。


「翠玄。ようやくあなたに会うことが叶ったわ。ずっとこの日を心待ちにしていたのよ」


格上の貴妃である芙蓉妃を前に、翠玄が拱手して挨拶をすると、芙蓉妃は長椅子から立ち上がって翠玄の下へ駆け寄った。


「あなたのことは摂政殿下や皇帝陛下からよく聞いているの。宮入の宴会の場で、私の命を救ってくれたそうですね。なんとお礼を言ったらよいか……」



芙蓉妃は、雪のように白い肌と紅梅のように鮮やかな唇、潤んだ大きな瞳が美しい、嫋やかな美人だった。


おそらく翠玄の少し年上かと思われるが、漂う優雅さと気品がある。南部要人が手塩にかけて育て上げた、まさに箱入りの妃にふさわしい。翠玄は感心してしまった。



「私も芙蓉様のお役に立てて何よりです。あれからお変わりありませんでしたでしょうか」


「ええ」


芙蓉妃は少し表情を曇らせた。


「あの後、私も犯人だという男に会いました。でも、正直に言って本人の顔を見ても、未だに心当たりがありませんのよ」


「……そうでしたか」


彼は芙蓉妃の生家の屋敷に出入りしていた使用人だった。


「彼は幼い頃から屋敷に仕えていたことを覚えています。でも、時折顔を合わせるくらいで、私はあまり話したことなど無かったはずよ。」


芙蓉妃は窓の外を見つめた。



男の名は楊薛(ようせつ)といった。父親に倣って芙蓉妃の実家の屋敷に出入りするようになり、幼い芙蓉妃の身辺警護などに付き添っていたこともあったという。


なぜ、あの男が芙蓉妃に対してそこまでの執着を抱いてしまったのか_。



「自分の知らないところで、ああして誰かに恨まれていたなんて_。恐ろしいことだわ。」


そう言って、芙蓉妃は肩を落とす。


芙蓉妃の記憶にないほど、彼女にとっては気に留めるほどのことでもなかったのかもしれない。だが男にとっては、今生の思いを募らせる元凶となってしまった。



「今回の件で、私自身も自分の言動や行動には一層気をつけなければいけないと痛感しました。

 あなたにも迷惑をかけてしまい、ごめんなさい。」


「芙蓉様は何も悪くありません。

 彼が勝手に思い込んでいただけです」


「_そう言ってもらえると、少しだけ心が軽くなるわ。ありがとう」


芙蓉妃は穏やかに微笑んだ。


芙蓉妃の不貞疑いが晴れたこと、そして事件を未然に解決できた。翠玄はほっと胸を撫で下ろした。



「何かあったら、今後は気軽に私の事を頼ってね。

 助けてくださった恩もあるし、あなたの力になりたいの」


芙蓉妃は翠玄の手を握りながら言った。


「ありがとうございます。」


後宮は、欲望と陰謀の渦巻く場所だ。一人何の後ろ盾もなく、後宮に上がった翠玄にとって、こうして芙蓉妃から気にかけていただけことはとても心強いと思えた。



「そうそう。近々、皇后様が後宮内の妃嬪たちを集めて茶会を開くとおっしゃっていたわ。新参者のあなたも、お呼びがあるはずよ」


芙蓉妃は微笑む。


「その時に、またお会いしましょうね」



_ほっと息をついたのも束の間。

後宮内の妃嬪たちが集う、と聞いて、翠玄は再び少しだけ身を固くした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ