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‐後宮の亀仙女‐ 本好きの下働きが、若き攝政さまに見込まれて後宮で怪異事件解決する!  作者: 秋名はる
第一章

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第四十二話 新種の流行病 一

近頃、秦国の北側の州・蘇州で流行り病が流行しているという噂が、まことしやかに囁かれ始めた。それは一見するとただの風邪症状なのだが、病が広がる速度が異常に早い。聞いたところによれば、わずか一週間である村の全員が集団感染を起こすほどの感染力を持つという。


感染した者の多くは、通常の季節型の風邪症状を起こす。主には高熱、喉の痛み、咳、倦怠感などである。通常であれば数日から一ヶ月で快方に向かうことが多い。しかし、一部の村人は症状が重篤化して熱が下がらず、更に肺や呼吸機能に異常をきたして、そのまま亡くなってしまう人も多いとか。


朝廷は最初は楽観していた。しかし、最近になってその勢いが収まらないことを危惧し、対策に乗り出したという。


* * *


「翠玄様、本日は冷えますので。火鉢のそばにおいでください」


早朝、火鉢に炭を足していた雀玲が言った。


年明けを迎えてしばらく経った如月の頃。外はすっかり雪景色になっていた。翠玄は綿入りの分厚い襦裙をしっかりと纏い、襟元を縮こませた。春の訪れを感じさせるにはまだ早い。

「翠玄、いるか」


日が昇った頃、唐突に摂政が宮を尋ねてきた。彼はいつも突拍子もなく現れる。


「最近、地方で流行っている流行り病の噂を耳にしたことはあるか」


やはりその話題か。


「はい。小耳に挟んだ程度ですが。なんでも、感染力が強くて、地方ではかなり被害が出ているそうですね」


「そうなのだ。通常の季節型の病だと楽観視していたが、近頃は王都の周辺にまで感染者が出ているとの報告もある」


「それは大変ですね」


秦国では、毎年冬の時期になると、こうして季節性の病が流行することがある。しかし、通常は単なる流行性の風邪であり、春先頃には落ち着く場合が多い。


「多くは単なる風邪症状で収まるが、一部では重症化して死者も出ているとか」


「ああ、それに何より、いつもと異なるのはその感染者数だ。聞くところによれば、数日から数週間で村一帯が集団感染を起こし、機能不全を起こしているところもあるそうだ


そういった町には、王都から役人を派遣して対応に当たらせているが、近頃は感染することを恐れて、官吏たちも近寄りたがらない。 _何か良い方法はないだろうか」


摂政は近頃、問題ごとを何でもかんでもまずは翠玄に相談するという風がある。翠玄も知識は比較的ある方だが、何でも知っているというわけではない。こう毎回丸投げのように来られても困る、というものである。


「流石に、感染症を鎮圧したり、完全に防いだりということはできかねます。流行り病といえど、大半は通常の風邪症状で収まるということなので、まずは基本的な対策を行うしかないのでは」


「というと」


「基本的なことですが、まずは感染がこれ以上広がらないよう、感染を防ぐことが重要です。すでに罹患している患者は、それを外部に移さないこと。逆に健常者は、感染するのを防ぐことが重要です」


翠玄は言葉を切った。


「それは確かにそうだな。具体的には、どのようなことをすれば流行を防ぐことができる」


「まずは、感染者を隔離して、病原菌との接触を避けることですね。この風邪は非常に他の人に伝染るのが早いと聞きました。病原菌は、通常であれば症状が出ている患者の体内に多く潜伏しています。なので、感染者との接触が多いと、それだけ伝染りやすくなります。物理的に感染者を隔離するなどの対策が必要です」


「そうだな。それらはすでに一部の村で対応を進めているらしい。他にはないか。

罹患した者を隔離して放っておくわけにもいかないだろう」


「そうですね。これについては、絶対に感染しないという保証がないため、気休め程度になる部分もありますが。病原菌は通常、空気中または患者の付近に飛散した病原菌を含む飛沫を吸い込む、または病原菌に汚染された物に触れて、それが何らかの形で体内に入ることで起こるそうです。

なので、まず飛散した病原菌を吸引しないように、鼻や口などを布で覆うことで、一定の感染防止効果があるかも知れません。後は、感染者の付近に立ち入った後は、手指や衣服をよく洗うとか」


「なるほどな。病人の看護を担う者たちには多少効果があるかも知れない」


「そうですね。それから、これは本当に基本的なことですが。病原菌に侵され重症化するか、または完治するかは、各自の体内にある免疫と呼ばれる健康を維持する機能が強く作用することが重要です。

現状、この流行り病には特効薬はありません。まだどんな病かもわかりませんからね。なので、通常の風邪のように、症状が収まるのを待つしかないのです。そのためには、できるだけ暖かくして休養を取る。十分な栄養を取ることが重要です」


「確かにな。だが、地方の村人たちは季節柄食べ物もろくにないし、昨今の厳しい寒さで免疫が落ちている者も多いだろう。必要な村には、王都の備蓄庫などから、食料を配給することも検討してみよう」


「それは良い考えですね。今年は寒さが一段と厳しいため、多くの民が飢えに瀕していると聞きました。体力をつけることで、感染症に打ち勝つことができると思います」


「ありがとう。また進捗があったら報告に参るよ」



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