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後宮の亀仙女 -事件解決簿-  完全記憶能力をもつ主人公が、宮廷内の謎や事件を解決します  作者: 秋名はる
第一章

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第三十六話 胡蝶のお茶

殺人事件の解決に一役買った後、翠玄は久々に平和な日々を謳歌していた。


ある日翠玄は、久々に芙蓉妃の住まう陽春宮に招かれていた。


「翠玄、よく来てくれたわ。

実は今日は、あなたにも是非会わせたい客人があるのよ」



侍女に案内されて客間の方に入っていくと、中には芙蓉妃の言う客人が待ち構えていた。



「芙蓉様、翠玄様。お会いできて光栄ですわ。

私は隣国で商人をしております『狐蝶』と申します。どうぞお見知りおきを」



狐蝶と名乗るその女性は、この国では珍しい風変わりな見た目をしていた。

褐色じみた肌に、赤茶色の髪の色。瞳の色も、この国で目にする濃い茶色よりもずっと色が薄くて、赤茶けたような色をしている。目鼻立ちも彫りが深い。衣服もまた秦国の一般的なものではなく、どこか異国情緒あふれるものだった。



「巷での評判はよく耳にしております。今日は妾に見せたいものがあるそうな」


芙蓉妃が狐蝶に向かって言った。

どうやらこの女性は町で商いを営む商人のようだった。


「光栄にございます。

本日は、芙蓉様のため私が近隣各国を回って探し求めた、選りすぐりの品々をお持ちしました」



狐蝶は優美な雰囲気をまとった女性であった。しかし同時に商人らしく、闊達な調子で答える。早速持ち込んだ商売道具を広げ始めた。



「まずは、私が自ら遥々海を渡って集めました骨董品の数々です。

陶器や漆器など、どれもこの国では珍しい貴重な品々ばかりです」



テーブルの上には、陶器の茶碗や、ガラス製の水差しなどが並んだ。どれもカラフルで絵柄も洒落たものが多い。狐蝶は一つ一つを手にとって、自慢の品々を紹介していく。



「さらに、こちらは遠い西の国でしか取れない極上の絹糸で織った反物でございます。

どうです、色合いや刺繍が素晴らしいでしょう?」



「確かに、見事な出来ね」



芙蓉妃が感嘆のため息を漏らすと、そばに控えていた侍女たちも目を輝かせている。



「どうですか、翠玄様も是非、気に入ったものを手に取ってくださいませ」



狐蝶に促されて、翠玄も彼女の品々を眺めてみたが、何分こういう装飾品には一切興味がないのでなんとも言えない。おどおどとしながら目を泳がせていると、それだけでなんだか疲れてしまう。



「いらないわ。私、宝飾品には興味がないの」



翠玄はこの商人の調子に乗らないよう。警戒してそっけない態度を取った。



「ほう、そうですか。では、あなたはきっと宝飾品より、見識に興味がおありなのでしょう。」



狐蝶はまるで翠玄の心を見透かしているように微笑んだ。


「こちらなどはいかがですか。異国の書物たちです。どれも秦国ではまだ出回っていないものばかりのはず。」



狐蝶は今度は書籍を差し出してきた。確かに、これらは礼部の書庫にはまだ蔵書がないものだった。試しに手に取ってみれば、確かに全て翠玄の興味をそそるものばかりだった。


思わず手を伸ばしそうになる自分に気がついて、翠玄は慌てて手を引っ込めた。



(どうして私の好みを見抜いているの。)


翠玄は戸惑った。



「ふふ。お客様が何をお望みか、私には手に取るようにわかります」



狐蝶は自信満々に言った。



「こう見えて、私には人の心や正体が見える特別な力がありますの。ある種の慧眼(けいがん)とでも申しましょうか。

 あなたは高官からその能力を買われて宮中に取り立てられた。違いますか?」


「どうしてそれを……」


思わず声を上げる。図星だった。



「言ったでしょう。私には天から授かった力が備わっているのです。私のこの見た目もまたそれを示しています。_私は稀人なのです」



稀人と聞いて、周りにいた侍女たちは目を見開いた。



稀人とは、この秦国で言い伝えられる伝説の一つだ。天から高徳を授かって生まれてきた者は、皆常人とは異なる見た目をしているというもの。



普通、秦国において一般的な外見は黒髪で黒い瞳をしている。しかし、稀にこうした外見を備えずに生まれてくる者がいる。例えばそれは、髪の色が異なるだとか、瞳の色が普通とは異なるなどの特徴があった。これらの特徴を持つ者は、昔から神の使いとして重用される傾向にあった。外でもない摂政その人も、稀人と呼ばれていた。



「でも、あなたは稀人ではないでしょう」


翠玄は冷静に言った。


「あなたの外見は、秦国では珍しいかもしれないけれど、それはあなたが異国由来だから。異国では別に珍しくもないはずだわ。」



稀人はあくまでも秦国の両親のもとに生まれた者のうち、外見が異なる者を指す。異国では彼女のように髪の色や眼の色が異なることは珍しくない。



「いいえ、それは誤解です。これでも、私は秦国人の両親のもとに生まれたのですよ」



狐蝶は涼しい顔で答えた。



(本当にそうなのだろうか。なんだか胡散臭い)


翠玄は内心で首を傾げた。



「信じておりませんね。では、ここで皆様方に私の力を用いた妙技をご覧に入れます。普段はめったにお披露目することはないのですが、今回は特別です」



そう言うと、狐蝶は付き添いの侍女に命じてあるものを用意させた。



今流行りのバタフライピーのお茶のお話でした‼︎


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