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後宮の亀仙女 -怪異解決簿-  完全記憶能力をもつ主人公が、宮廷内の謎や事件を解決します  作者: 秋名はる
第一章

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第十八話 模造本の罠


翌日、翠玄は眠そうな目をして、再び朝早くから書庫へとやってきた。


「胡相様、おられますか。昨日お伝えした、作戦の品をお持ちしましたよ」


翠玄はこの日、手にあるものを持っていた。


「翠玄、その手に持っている書籍は一体どうした」


「まあ、まずはご覧ください」


翠玄は手に持っていた書籍を胡相に手渡す。


「これは……盗まれた『故宮示意図』ではないか。一体どうやってこれを」


「いいえ、胡相様。よく見てください。これは盗まれた書籍そのものではありません」


「どういうことだ?」


「これは昨晩、私が寝ずに作業して完成させた、故宮示意図の精巧な模造本です」


「何? 模造本だと」

胡相は目を見開いた。


「はい。私は以前に故宮示意図を読んだことがあります。

当然、中に何と書かれていたか、内容を正確に覚えています。」


翠玄は得意げに微笑んだ。


「昨晩、私は礼部で執筆を担当している官吏を一人つかまえて、私の言った通りに書物の写しを書写してもらいました。

書籍の表紙はもちろん、使っている紙、中の地図の配置や細かい注釈まで、精巧に再現していますよ」


「ご覧ください」翠玄はそう言って書籍を広げて見せる。


「確かに……これは故宮示意図の内容そのものだ。見事だな」


胡相は感嘆の声を上げた。


「これで取り急ぎ、紛失した書籍は手元に戻りました。しかしこのままでは、本物が外部に流出したままです。そこで私はある作戦を考えたのです」


「ある作戦?」


「はい」

翠玄は声を潜めた。


「犯人は書庫の常連のはずです。入退記録に不審な点がなかったということは、以前から頻繁に出入りしていた者の犯行です」


「なるほど……」


「ならば犯人は、再び書庫を訪れる可能性が高い。

そこで私は、犯人を誘い出す罠を仕掛けようと思うのです」


翠玄の目が鋭く光った。

________________________________________


早速、翠玄は書庫へ入っていくと、大声でこう言った。


「胡相様、この度は運がよかったですね。まさか紛失してしまった故宮示意図は、ちょうど内容に誤記があって改訂予定だったなんて」


翠玄は大声で嘯いた。


「ああ、本当だな」

胡相が応じる。


「紛失してしまったことは残念だが、あの書籍は内容も古く、持っていても価値のないものだった。こうして新しいものが完成したので、ちょうどよかったよ」


胡相はそう言うと、翠玄が作成した模造本を、もともと故宮示意図が保管されていた書棚に戻した。


________________________________________

書庫の外に出て、胡相が小声で尋ねた。


「翠玄、これで本当に犯人が炙り出されるのだろうか」


「おそらくそのはずです」


これは翠玄が考案した作戦だった。

犯人が何か良からぬ企みのためにあの書物を盗んだのだとする。しかし盗んだ書物の内容が正確なものではなかったら──犯人は再びこの模造本を確認に来るはずだと思っていた。


「旧版に誤りがあると聞けば、犯人としても無視できないはずです。

もし間違った地図で強盗に入ったら、計画は失敗するかも知れない。だから犯人は必ず、新しい版を確認しに来るはずです」


「なるほど……」

胡相は感心したように頷いた。


「では、明日以降も私の言いつけどおりに対応をお願いしますね。」


そう言って、翠玄は眠い目をこすりながら書庫を後にしていった。



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